新型コロナウィルスの拡大が世界経済に及ぼす影響が心配されています。
櫻井解説委員です。
Q1 世界経済を支える大きな歯車の一つ、中国の動きが気になりますね。
A1 はい。その中でも、新型肺炎の発生地とみられる武漢は、ここ数年で急成長を遂げた国内有数の工業都市で、そのGDP・国内総生産の規模はいまや、ベトナム一か国分に、ほぼ匹敵するぐらいの大きさです。また、湖北省全体も、これまで8パーセント近い高い成長を誇り、国の経済をけん引してきました。それだけに、この地域の経済活動停止のダメージは大きく、関連企業の資金繰りや、消費の冷え込みが心配されています。専門家は新型肺炎の拡大が長引けば、中国の経済成長が現在の6パーセントから、4パーセント台にまで一時的に落ちこむ可能性もあると分析しています。
Q2 中国経済の歯車がまわらなくなると、日本やそのほかの国にも軋みが出てきそうですね。
A2 そうなんです。まず、日本への影響ですが、去年秋の消費増税や台風の影響から、ようやく持ち直しの機運も出てきた矢先の、予想外の痛手となりそうです。観光客の減少に加え、自動車メーカーが現地から部品が調達できず、日本国内の工場の一部停止に追い込まれるなど、企業活動にも、支障が出ています。
武漢には日本のみならず、欧米各国から自動車関連企業だけでも500社以上が集まっていて、今後の影響の広がりが懸念されます。
また、アジアでも、タイとフィリピンの中央銀行が相次いで利下げに踏み切るなど、景気を支えるための対応に追われています。
Q3 世界経済の先行きが心配ですね。
A3 はい。米中貿易摩擦の一時休戦で、一息ついたのも束の間、ヒト・モノ・カネの流れが停滞すれば、景気の落ち込みは避けられそうにありません。
IMF・国際通貨基金はことし前半から世界経済が緩やかに持ち直すと予測していましたが、影響が長引けばそのシナリオに、狂いも生じそうです。
来週末には、先進国と新興国の20か国によるG20財務相中央銀行総裁会議が開かれ、新型肺炎の影響が議論されます。
世界経済の歯車の動きが滞ることがないよう、中国をはじめ、各国の対応が問われています。
(櫻井 玲子 解説委員)
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