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「どうなる 高齢者の医療費2割負担」(ここに注目!)

堀家 春野  解説委員

医療制度改革をめぐる議論が本格化しました。政府は75歳以上の人が窓口で支払う医療費について一定以上の所得がある人は現在の原則1割から2割に引き上げる方針です。焦点はその対象者の範囲です。

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Q)。2割負担をめぐって綱引きをしていますね。

A)。はい。対象者を広くとらえるのか、絞り込むのかという攻防です。社会保障費が増え続ける中、政府はたとえ高齢者であっても一定以上の所得がある人については負担してもらう「応能負担」を進めたい考えです。現役世代の負担を和らげ医療保険財政の改善を進めるため対象者を広くとるべきだという、健康保険組合など。対して、医療関係者は対象を広げすぎると負担が重くなり受診をがまんすることにつながると懸念を示しています。

Q)。一定以上の範囲はどうやって決めるんでしょうか。

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A)。議論が始まった厚生労働省の部会では、75歳以上の人が受けている医療や、家計のデータ、それに生活状況を分析し、どの範囲の人だったら2割の負担が可能なのか検討する見通しです。また、介護保険制度ではすでにこうしたしくみが取り入れられています。サービスを利用した際の自己負担は医療と同様に原則1割ですが、収入に応じて2割、3割の負担となっている人もいます。部会では介護の自己負担が重くなったことによる影響も参考にする見通しです。

Q)。医療の負担も増えるというのは年金で暮らしている高齢者にとって影響は少なくありませんよね。

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A)。高齢者と一言でいっても、経済状況や健康状態は様々です。負担が重くなることの影響を慎重に見極める必要がありますし、必要な医療をがまんする状況はあってはなりません。一方で複数の医療機関にかかり、似たような薬を多く処方される問題もあります。医療費がかかる要因にもなりますのでかかりつけ医やかかりつけの薬局を持ってもらう取り組みも進めていかなければなりません。財源の問題も重要ですが、医療の質も兼ね備えた制度改革を進めることができるのか、注目したいと思います。

(堀家 春野 解説委員)


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