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「一律VS脱一律 賃上げの行方」(ここに注目!)

神子田 章博  解説委員

Q 春闘の注目点はどこでしょうか? 

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A 賃金がどれだけあがるかとともに、どのようにあがるかです。
今回の春闘で連合は、基本給を引き上げる「ベースアップ」に相当する分として2%程度の賃上げを要求し、労使交渉を通じて賃金の底上げをはかりたい考えです。ない袖は振れないというならともかく、企業側には過去の利益をためこんだ現金や預金が200兆円をこえるといわれます。働く人への配分するためのお金は十分にあるはずだと切り込んでいます。

Q これに対して経営側はどう対応するんでしょうか?

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A 経団連側も 収益拡大の果実を待遇改善につなげたいとして、賃上げには前向きな姿勢を示しています。ただ全社員一律ではなく業務の内容や仕事の成果に応じて重点的に配分する方法を検討すべきだとしています。中西会長としては、個々の社員の働きに応じた報酬を支払うことを通じて優秀な人材を確保し、モチベーションを高めることこそ経営の王道だということでしょう。

Q なぜいまそういう主張をしているのか?

A デジタル化やグローバル化が進むなど経営の環境が変化し、業界の枠や、国境を越えた人材獲得競争が進んでいることが背景にあります。さらに新卒一括採用や終身雇用、年功序列的な賃金体系といった日本型の雇用システムも優秀な若手社員や高度な専門性をもった人材の採用に不利に働くなど時代に合わなくなってきている部分もあるとしています。

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これに対し連合の神津会長は、「一律に従業員の賃金を引き上げなくなったことが、格差を生んできた」と主張。今回の春闘では、各企業内で全ての労働者を対象に最低賃金協定を締結、時給1100円以上に設定するよう求めて賃金の底支えをはかり格差是正につなげたいとしています。
 賃上げをめぐっては、去年まで6年連続で2%程度の上昇率が続いていて、日本経済のデフレ脱却の流れを生んできたと指摘されています。消費税が引き上げられ、家計に負担が増す中での今回の春闘を通じて働く人々の賃金がどれだけ、どのように増えることになるのか。今後の景気の行方にも関わってくるだけに注目されます。 

(神子田 章博 解説委員)

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