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「トランプ弾劾裁判 早期幕引きは?」(ここに注目!)

髙橋 祐介  解説委員

トランプ大統領の弾劾裁判はどのように進められるでしょうか?アメリカ議会上院で21日、実質的な審理が始まります。髙橋解説委員です。

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Q1)
けさのイラストはジェットコースター?
A1)
弾劾裁判では、まず進め方のルールを定める決議案を話し合い、検察官役の民主党下院議員とトランプ大統領の弁護団それぞれの冒頭陳述に続いて、陪審員となる上院議員による質疑のあと、大きな岐路にさしかかる見込みです。

Q2)
大きな岐路とは何ですか?
A2)
トランプ大統領と共和党指導部が目指しているのは、“早期幕引き”のコースです。新たな証人は呼ばず訴えを棄却、または速やかに無罪評決を勝ち取り、2週間後の来月4日に予定される大統領の一般教書演説を再選に向けたアピールの場にしようと言うのです。
一方の民主党指導部が目指しているのは、疑惑の徹底追及で“長期戦”も厭わないコースです。去年解任されたボルトン前大統領補佐官らを証人として召喚し、大統領に不利な証言を引き出そうと言うのです。その場合、一部の共和党議員らは、疑惑の発端となった民主党のバイデン氏親子らにも証言を求める構えです。このため審理は数週間に及び、さらに紆余曲折もありそうです。

Q3)
どちらのコースをたどるでしょうか?
A3)
予断を許しません。民主党は、来月3日から大統領候補選びの投票が始まりますから、審理が長引けば、上院に釘付けとなる現職議員の選挙活動にも影響は避けられないでしょう。一方の共和党も、上院で過半数を占めていますが、「新たな証言は聞く必要がある」とする穏健派、俗に“名ばかり共和党員”と呼ばれる議員もいますから、数の力で新たな証言を封じられるかは微妙です。
ただ、どちらのコースをたどっても、大統領の罷免に必要な上院の3分の2には届かず、大統領の無罪はほぼ確実視されています。トランプ大統領が弾劾裁判の早期幕引きに成功すれば、再選に向けて弾みをつけることになるかも知れません。

(髙橋 祐介 解説委員)


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