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「米・イラン軍事的緊張の行方」(ここに注目!)

出川 展恒  解説委員

イランの革命防衛隊の司令官が、今月初め、イラク国内で、アメリカ軍の攻撃で殺害されたことを受けて、イランは、8日、アメリカ軍の基地2か所をミサイルで攻撃し、軍事的緊張は極度に高まっています。出川解説委員に聞きます。

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Q1:
イランの報復攻撃、起きてしまいましたね。

A1:
殺害されたソレイマニ司令官は、イラン国内では英雄視され、追悼行事には、合わせて数百万人が集まりました。最高指導者ハメネイ師をはじめ、イランの要人らが「必ず報復する」と宣言していた以上、何らかの報復攻撃が起きるのは避けられませんでした。問題は、これで終わるのかどうかです。

Q2:それを、どう見ますか。

A2:
ハメネイ師は、「今回の軍事行動は十分でない。この地域からアメリカの存在を消し去ることが重要だ」と述べており、イランがさらなる報復攻撃を行う可能性は消えていません。燃え上がった国民の怒りを鎮める必要もあるからです。周辺国で、イランの影響下にある武装組織が行動を起こす可能性もあります。その一方で、世界最強のアメリカ軍と全面衝突すれば、勝ち目はありません。政府や革命防衛隊の幹部が、「全面衝突は望んでいない」と発言していることからも、イラン側に事態をエスカレートさせる意図はないと見られます。

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Q3:
一方のトランプ大統領も、今回の件で、声明を出しましたね。

A3:
はい。トランプ大統領、イラン側の攻撃で犠牲者は出なかったとして、警告していた反撃には言及しませんでした。アメリカ側も、事態のエスカレート、つまり、全面衝突は避けたい考えを示したと言えます。

Q4:
軍事衝突のおそれは、ひとまず遠のいたと言えるでしょうか。

A4:
緊張は依然高く、危機が去ったとまでは言えません。双方が望まなくとも、思わぬ形で戦争に発展した例は、枚挙にいとまがありません。何より心配なのは、イランの指導部とトランプ政権との間で、対話のチャンネルがないことです。国連のグテーレス事務総長や各国の首脳などが、双方に自制を呼びかけています。

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アメリカともイランとも良好な関係にある日本。ペルシャ湾岸地域にエネルギーの大部分を依存しているだけに、あらゆる手を尽くして、双方に自制を求め続ける必要があると思います。

(出川 展恒 解説委員)

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