インドには、今月中旬、安倍総理大臣が訪問する予定でしたが、激しい抗議デモで治安が悪化したため、延期されました。
外交にまで影響を与えたデモは、その後全土に拡大し、年を越しそうな勢いです。
Q1)インドのモディ首相が移民に国籍を与えようということですか。
A1)はい、今月11日に決まったこの措置、「移民に関する法律の改正」がデモの発端となりました。
近隣のイスラム教の3つの国、パキスタン、バングラデシュ、アフガニスタンでの迫害から逃れてきた人たちにインド国籍を与えるというものです。
ところがそれはヒンドゥー教など6つの宗教の信者が対象で、イスラム教徒は3つの国では迫害されていないとして除外されました。
これに対しインド国内のイスラム教徒からは、宗教による差別だとして反発が強まり、さらに自分たちの国籍も将来的にはく奪されるおそれもあるとして懸念を呼んでいるのです。
これまでに治安部隊との衝突などで20人以上が死亡、数千人が身柄を拘束されたという状況です。
Q2)モディ政権がこの政策を進める背景には何があるのでしょうか。
A2)モディ首相の支持母体が掲げてきた「ヒンドゥー至上主義」があります。
これは、インドの人口およそ13億の80%を占めるヒンドゥー教徒寄りの政策を重視していこうというものです。
モディ政権はことし5月の総選挙で圧勝したあと、こうした姿勢を鮮明にしています。
イスラム教徒はおよそ14%で少数派ですが、それでも日本の人口より多い1億7000万以上にのぼり、深刻な対立や分断につながりかねません。
Q3)デモの収束に向けて打開の見通しはないのでしょうか。
A3)なかなか難しいのが実情です。
モディ首相は、ヒンドゥー教徒などを救済する措置だとして、「1000%正しい」と主張しています。
国際的に存在感を増すインドは、日本にとっても、中国を念頭に置いた場合、重要さを増しています。
インドの混乱は、外交でも近隣の国々と緊張を高めることにつながりかねず、注意深く見ていく必要がありそうです。
(安間 英夫 解説委員)
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