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「世界海保機関トップが日本に その狙いは」(ここに注目!)

津屋 尚  解説委員

世界の海上保安機関のトップらが一堂に会する会合が、日本の海上保安庁の呼びかけで、きのう(20日)から東京で始まりました。その狙いについて津屋解説委員です。

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Q:たくさん船が並んでいますね?
実際、船は来てないんですが、雰囲気を出すため並べてみました。
世界7つの海から、75の国の海上警察や沿岸警備隊などのトップたちが
東京に集結し、議論しています。ちなみに中国も参加しています。
ご覧の通り、船のデザインはどれも、平和的なイメージの「白」が基調です。
これは、海難救助をはじめ、軍とは一線を画す役割を担うことが多いからです。

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Q:何が話し合われているんですか?
世界共通の課題についてです。海洋汚染や自然災害など地球規模の問題、それに国際犯罪などへの対応は喫緊の課題ですから、きのうも議長国の日本や他の参加国から「海の国際連携」の必要性が繰り返し強調されていました。そして、直接の議題にはなっていないものの、もう一つの重要な課題があると私は思います。

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Q:それは何ですか?
“力”によらず“法やルール”によって国際秩序を保たれるべきという理念を世界に浸透させることです。海はみんなのものである反面、時には対立の現場にもなります。そこで注目したいのは、今回、中国と、アジアや南太平洋などの小さな島国が多く参加していることです。

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Q:中国と島国ですか?
中国は、小さな島国の資源や港湾施設などを狙って、その資金力に物を言わせ、
「借金漬け外交」とも揶揄される手法で影響力を拡大しています。
一方、島国の多くは、広大な海域を抱えているものの、国力が小さく、小規模な海上保安機関しかありません。会合では、海上保安能力強化のヒントが提供されていますが、それは同時に「法の支配」の理念を広げることにもつながります。
中国に対しても、この理念の世界的な広がりを認識させ、大国としての責任ある振る舞いを促していけるかどうかにも、注目したいと思います。

(津屋 尚 解説委員)


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