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「英EU離脱 総選挙で混迷打開?」(ここに注目!)

二村 伸  解説委員

EU・ヨーロッパ連合は、28日、今月末に迫ったイギリスの離脱延期について、最長で来年1月末までの3か月間の延期を認めることで合意しました。これを受けてイギリスのジョンソン首相は、12月に総選挙を行うための動議を議会に提出しましたが3分の2の賛成が得られず否決されました。

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Q.なかなかジョンソン首相の思うようにはことが運びませんね。

ワールドカップの決勝に進んだラグビーのイングランド代表とは対照的に、ジョンソン首相は苦戦を強いられています。起死回生を狙ったキックもまたゴールを外れてしまいました。何が何でも今月末までに離脱するという公約は果たせず、総選挙の提案は3度目も失敗に終わりました。最大野党・労働党はいぜん合意なき離脱の可能性が残されているとして12月の解散・総選挙に反対しています。

Q.これで選挙の可能性はなくなったのでしょうか?

まだ可能性は残されています。ジョンソン首相は引き続き選挙の実施を求めていく考えで、早ければ29日にも選挙の実施を求める法案を提出する構えです。また、野党でもEUへの残留を求める自由民主党などは、12月12日の選挙には反対ながらも12月9日の選挙を提案する動きを見せています。EUと合意した離脱協定案が議会で承認される前に選挙を行い、残留か離脱かを問う新たな国民投票に持ち込みたいという狙いです。

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Q.ジョンソン首相はなぜ選挙にこだわるのですか?

最新の世論調査で、与党・保守党は労働党に16ポイントの差をつけて優位に立っています。今は過半数を割っている保守党が議席を増やして離脱を一気に進めたい考えです。そのために選挙の早期実施を求める野党の提案に応じる可能性もあります。一方で、選挙を行わなくても議会で離脱協定案が承認されれば早期離脱も可能です。

Q.EUは1月末より前の離脱も認めましたね。

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EUは離脱期限の延期を、最長で3か月とし、それ以前にイギリス議会で協定案が承認されれば早期に離脱する、いわば柔軟な離脱延期を認めました。たとえば、来月中にイギリス議会で協定案が承認されれば12月1日に、12月中に承認されれば元日に離脱協定が発効することになります。早期離脱を目指してきたジョンソン首相の意に沿ったものです。とはいえ野党の抵抗もあり予断は許しません。まさに最後の延長戦に入ったジョンソン政権とイギリス議会の攻防、依然先が見えない状況が続きます。

(二村 伸 解説委員)

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