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「最高指導者の死でISは?」(ここに注目!)

出川 展恒  解説委員

シリアで、過激派組織ISの最高指導者バグダディ容疑者が、アメリカ軍の作戦で死亡したニュースについて、出川解説委員です。

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Q1:
このニュース、世界を駆け巡りましたね。

A1:
はい。バグダディ容疑者が、イラクとシリアにまたがるイスラム国家の樹立を宣言して5年4か月。この間、世界を震撼させたテロや、大量虐殺、誘拐事件などを繰り返してきただけに、最高指導者の死は、大きな区切りと言えます。

Q2:
今回の作戦から、何が見えますか。

A2:
ISは、アメリカ主導の「有志連合」による軍事作戦で追い詰められ、2年前、支配地域のほとんどを失っていましたので、バグダディ容疑者が潜伏できる場所は、非常に限られていました。ごく少数の側近らと、頻繁に移動を繰り返していたと見られ、最近、シリア北西部のイドリブ県にいることが、情報当局によって突き止められました。イドリブ県一帯は、アサド政権の支配も、クルド人組織の支配も及ばず、残り少ない避難先のひとつとなっていたわけです。

Q3:
バグダディ容疑者の死で、ISの脅威はなくなったと言えるでしょうか。

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A3:
残念ながら、そうは言えません。バグダディ容疑者に代わる指導者が現れる可能性もありますし、ISの過激思想は、インターネットを通じて、世界中に拡散しています。影響を受けた者らが、別の場所で、報復のテロを起こす恐れや、新たな活動拠点を築く恐れもあります。
さらに、今月、隣国のトルコが、敵対するクルド人組織を排除するため、シリア北部で行った軍事作戦の混乱に乗じて、ISの戦闘員らが脱走したと伝えられるなど、ISが再び勢力を盛り返す可能性は消えません。

Q4:
ISのような過激派の脅威を、どう取り除いてゆけば良いでしょうか。

A4:
トランプ大統領が、「ISとの戦いは終わった」として、今後、シリアからの撤退を加速させることも考えられます。しかし、ISやアルカイダが台頭したイラクやシリア、あるいは、アフガニスタンの例からわかるように、「誰も統治できない地域」が放置されれば、必ず過激派組織の拠点となります。
それだけに、シリアの内戦をできるだけ早く終わらせることが必要です。秩序の回復と国の再建を国際社会が一致して進めない限り、過激派の脅威はなくならないでしょう。

(出川 展恒 解説委員)

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