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「英EU離脱 ノーサイド直前の攻防」(ここに注目!)

二村 伸  解説委員

今月末にイギリスのEU離脱期限を控え、EUは17日首脳会議を開いて離脱に関するイギリスとEUの新たな合意案を承認しました。

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Q.期限ぎりぎりの合意とEUの承認ですね。

イギリス発祥のラグビーにたとえますと、まさにノーサイド直前にジョンソン首相がEUの厚い壁を突破したかたちです。離脱期限まで2週間に迫った中での首脳会議はEUの最終的な決断の場ですが、ジョンソン首相にとっても最初で最後の会議になると見られ、「合意なき離脱」をちらつかせながらEUに真っ向勝負を挑み、開会直前で合意にこぎつけ、EUの承認を得ることに成功しました。長い交渉に疲れたEUが根負けしたといったところではないでしょうか。

Q.これで合意なき離脱は避けられるのでしょうか?

ゴールまで前進したもののまだ壁があります。今度は19日までにイギリス議会でEUとの合意案の承認を取りつけなくてはなりません。そこで承認が得られれば、いわば円満離婚が成立、今月31日、日本時間の11月1日午前8時をもってイギリスがEUから離脱するという首相の公約が実現することになります。ただ、法的な手続きが間に合わず実際の延期は若干延びる可能性もあります。

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Q.すんなりいきそうですか?

予断を許しません。というのは与党・保守党だけでは過半数に達しないからです。ラグビーでも1つのチームであるイギリスの北アイルランドと、陸続きのEU加盟国アイルランドとの間で物理的な壁を築かずに、どうやってモノの移動を管理するかが交渉の最大の障害だったのですが、新たな合意では農産物と工業製品に関して北アイルランドにEUのルールが適用され、税関検査はイギリス本土と来たアイルランドの間で行われることになるため、政権に閣外協力してきた北アイルランドの地域政党は、イギリス本土と切り離されてしまうとして反対の立場です。北アイルランドの支持を得られるか、つまりパスがうまく通れば議会での承認に弾みがつきますが、いぜん不透明です。

Q.もし承認されなければどうなるのですか?

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ボールを落としてノックオン、またやり直しです。離脱を延期して総選挙か、最悪の場合は合意なき離脱となってしまう可能性もゼロではありません。議会の承認が得られなければジョンソン首相は離脱の延期をEUに要請することが法律で義務づけられていますが、首相は「死んでも延期しない」と述べていました。さすがにこの期に及んでそれはないと見られますが、さらなる延期を要請してもEU側が拒否する可能性もあります。ノーサイドまで激しい攻防が続きます。

(二村 伸 解説委員)

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