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「トランプ大統領『弾劾調査』の影響は?」(ここに注目!)

髙橋 祐介  解説委員

アメリカ議会下院が調査を始めることで、はたしてトランプ大統領は弾劾に追い込まれるでしょうか?髙橋解説委員です。

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Q1)
けさのイラストは、トランプ大統領とバイデン前副大統領が釣り糸を垂れている?
A1)
舞台は、いわば疑惑の“ウクライナ沼”。共和・民主両党が、来年の大統領選挙に向けて、何か相手に不利な情報はないか?そう水中にじっと眼を凝らしていたさなかのことでした。民主党側の釣り針に、情報当局者からの“内部告発”で大統領の新たな“疑惑”がかかりました。トランプ大統領が、ことし7月ウクライナとの電話首脳会談で、支援継続をいわば“エサ”に、バイデン氏の周辺に対する調査に協力するよう「不当な圧力をかけた」というのです。これまで民主党のペロシ下院議長は、大統領の弾劾は「世論の分断を深める」として慎重でしたが、この疑惑が明るみに出たことで、調査の開始に踏み切ったのです。
これに対してトランプ大統領は、先ほど記者会見でも疑惑を全面否定。みずからの顧問弁護士を務めるジュリアーニ元ニューヨーク市長が調べていたバイデン氏の“疑惑”を釣り上げて、「バイデン前副大統領が在職中、息子がウクライナとの不透明な取引で何百万ドルも儲けたことこそ問題だ」と反論しています。

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Q2)
トランプ大統領が議会で弾劾される可能性はどれぐらいある?
A2)
結論から言って、トランプ大統領が弾劾されて罷免に追い込まれる可能性は、限りなくゼロに近いでしょう。民主党が多数を占める下院で仮に弾劾が決議されても、上院は共和党が多数を占めているからです。ただ、民主党の大統領候補選びには、思わぬ影響が生じるかも知れません。

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Q3)
どのような影響ですか?
A3)
指名争いでトップのバイデン氏を追い上げる2位のエリザベス・ウォーレン上院議員の急浮上です。大統領の弾劾をいち早く求めてきたウォーレン氏は、党内左派から支持を集め、一部の州では既にトップに躍り出ています。中道派のバイデン氏の疑惑が深まれば、ウォーレン氏は、いわば“漁夫の利”を得ることになりそうです。肝心の真相究明は、“疑惑の沼”だけに双方の“水掛け論”に終始するかも知れません。

(髙橋 祐介 解説委員)


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