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「変わる『動物愛護』」(ここに注目!)

土屋 敏之  解説委員

◆9月20日~26日は動物愛護週間

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 国内のペットは犬と猫だけでもおよそ2千万匹いるとされ、今や15歳未満の子供の数より多くなっています。一方で、「多頭飼育崩壊」とも言われる、ペットが増えすぎて世話をしきれない状態になってしまったり、野良猫へのエサやりなどが近隣住民とトラブルになるようなケースも後を絶ちません。

◆こうした中で今年2つ、動物愛護に関係する法律が変わった

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 まず、「動物愛護管理法」が改正されて、動物虐待への罰則が強化されたり、犬と猫にはマイクロチップをつけることが販売業者に3年後には義務化されます。マイクロチップというのは太めの注射のような器具で皮膚の下に埋め込むもので、義務化には反対の声もありましたが、飼い主がわかるようになることで、例えば災害時などペットが迷子になっても戻ってきやすいほか、ペットを捨てることへの抑止効果も期待されています。
 そしてもうひとつ、「愛玩動物看護師法」ができました。これまで獣医師を補助する看護スタッフには公的な資格がありませんでしたが、これが国家試験を受ける資格になります。今やペットも高齢化が進んだり、動物と人間に共通の感染症が広がるなど、動物医療に関わる人に高度な知識・技能が求められていることもありますが、この新たな愛玩動物看護師はマイクロチップ埋め込みなど専門的な業務が行える他、飼い主にペットの飼い方を助言する役割も求められます。

◆法整備の背景

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 こうした法律が整備された背景は色々ありますが、ひとつは「適正飼養」、つまりペットを飼う以上はきちんと世話をする責任がある、という考え方です。例えば野良猫を巡るトラブルは、そもそも飼い主が猫を放し飼いにせず屋内で飼育し、最後まで捨てたりせずに面倒を見ていれば起きなかったはずです。
 つまり、動物の問題はそれを飼う人間が引き起こした問題にほかならないわけで、そのことを動物愛護週間を機にあらためて考えてみませんか?

(土屋 敏之 解説委員)


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土屋 敏之  解説委員

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