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「ウラジオストク日ロ首脳会談 プーチン大統領の思惑は?」(ここに注目!)

石川 一洋  解説委員

ロシアのウラジオストクで今日から安倍総理も参加して東方経済フォーラムが始まり、
明日、日ロ首脳会談が行われます。プーチン大統領の思惑は?
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Q北方領土交渉難航していますね
Aプーチン大統領と安倍総理がコンパスや羅針盤を持って平和条約交渉の航海の進め方を議論しています。今回の航海、そもそも去年の東方フォーラムで、まず「前提条件なしで平和条約を調印しよう」「それを基礎に問題を解決しよう」というプーチン大統領の発言から始まりました。しかし平和条約締結後に歯舞色丹の二島の引き渡しを定めた56年日ソ共同宣言という海図は定めたものの、双方の船頭が海図の読み方や解釈で、論議を続け、平和条約交渉という船は前に進みません。
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Qプーチン大統領の考えは?
A波は高いし、岩礁もある、嵐も来そうだ、船路は長いと強調しています。
56年宣言を海図にというのはプーチン大統領の持論ですが、安倍総理が海図に沿って一気に帆に風を吹かせて進めようとしたのに対して、そこは魔術師プーチン、次々と障害物を造り出しています。2島のの引き渡しにも反対論の強いロシア国内の状況を見ながら、第二次大戦の結果、4島がロシア領となったことを認めろ」とか「日米安保が障害となっている」など交渉の困難さを強調しているのです。
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Qプーチン船長は船を進める気は無いのでは?
Aプーチン大統領は北東アジアにおけるロシアの地位を固めるためにも日本との平和条約が必要だとは思っています。ただまずは経済関係など両国の関係を拡大することが先だとしています。今回のフォーラムにはインドのモディ首相も初めて招いています。中国一辺倒ではなく日本とインドを北極圏と極東の発展に引き込みたいとの思惑があるでしょう。
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Q明日の首脳会談の焦点は
A交渉の船路を見いだせるかどうかが焦点となるでしょう。安倍総理も、北極海からインド太平洋に至る物流の道を築き、北方4島を物流の拠点とするためにも領土問題を解決しようと呼びかけています。プーチン大統領とは領土問題の位置づけにずれがあります。そのずれを埋め、交渉を活性化するためにも、両首脳が日ロ関係と北方4島の将来像を率直に話し合い、大局観を一致させる必要があるでしょう。
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(石川 一洋 解説委員)


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