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「危機に立つ イラン核合意」(ここに注目!)

出川 展恒  解説委員

イランのロウハニ大統領は、アメリカの不当な経済制裁によって、「核合意」の約束が守られていないとして、7日から、「ウランの濃縮レベルを必要なだけ引き上げる」と表明し、核合意の存続が危ぶまれています。出川解説委員です。

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Q1:
イランのロウハニ大統領の発言の意図は何でしょうか。

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A1:
はい。今回の発言は、アメリカではなく、ヨーロッパ諸国に向けられたものです。ロウハニ大統領は、合わせて、「ほかの当事国が核合意を完全に守るのであれば、われわれも完全に守る」と述べています。本音としては、「核合意を維持したいが、その見返りが得られなければ、合意を守る意味がない。納得できるだけの経済的利益を、今すぐ約束してほしい」。こういうことだと思います。ヨーロッパ諸国から、貿易などで最大限の約束を引き出そうと、いわば、脅しをかけたと言えるでしょう。

Q2:
その狙い通りになるでしょうか。

A2:
難しいと思います。ヨーロッパ諸国も、核合意を維持したいと考えていまして、各国の企業が、アメリカの制裁の対象とならないよう、米ドルを使わず、ユーロ建てで、イランと取引できる貿易決済の仕組みを立ち上げました。しかし、当面の取引は、薬や食品など小規模なものにとどまる見通しです。原油輸出など、イランが納得できる貿易取引を確保するのは、この仕組みでは困難という見方が支配的です。

Q3:
イランはどう対応するでしょうか。

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A3:
イランは予告通り、7日以降、ウランの濃縮度を、核合意で認められた3.67%以上に引き上げる可能性が高いと思います。ただし、ロウハニ大統領は、「濃縮レベルは1時間で元の状態に戻せる」とも述べていて、引き続き、ヨーロッパ諸国とギリギリの交渉を行う戦略と見られます。

Q4:
「核合意」を守ることはできるでしょうか。

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A4:
そこがポイントです。ウランの濃縮度は、イランによる核兵器の開発を防ぐという核合意の根幹に関わるだけに、ヨーロッパ諸国も、態度を硬化させ、制裁を検討する可能性もあります。核合意が崩壊に向かってゆくのか、それとも、何とか維持できるのか、大きな分岐点です。
一方、アメリカのトランプ大統領は、イランが濃縮レベルを上げた場合には、何らかの対抗措置をとることを示唆しています。ペルシャ湾を舞台に、両国の間でいっそう緊張が高まることが懸念されます。

(出川 展恒 解説委員)

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