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「米中『朋あり遠方より来る』!?」(ここに注目!)

髙橋 祐介  解説委員

G20大阪サミットと並行して、アメリカのトランプ大統領と中国の習近平国家主席は、あす(29日)米中首脳会談を行う見通しです。髙橋解説委員です。

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Q1)
けさのイラストは授業前の教室ですね。
A1)
『朋あり遠方より来る』いよいよ大阪に集った世界の首脳たち。中でも注目を浴びるのは互いを「友人」と呼び合いながら、どこかぎこちないこのふたり、トランプ大統領と習近平国家主席です。あすの米中首脳会談は、今回のG20はもちろん、今後の世界経済の行方にも影響するでしょう。トランプ大統領はみずからを「Tariff Man(=関税男)」と名乗り、会談が仮に不調に終われば、中国からの輸入製品ほぼすべてに追加関税を課すことも辞さない構えだからです。

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Q2)
一方の中国側はどんな姿勢で会談に臨むでしょうか?
A2)
10日前の電話会談で、習主席は今の米中関係を“合則両利 闘則倶傷”という漢文で評したと中国の国営メディアは伝えています。意訳すると「米中が力を合わせれば両方に利益があり、闘えばともに傷ついてしまう」。この言葉は平和の“和”という漢字を使うことも多いのですが、いまのアメリカには敢えて協力を意味する「合作」の“合”の字を使ってみせました。中国側は“和”を結ぶ、つまり最終合意は無理だとしても「互いを尊重して協力しよう」と言いますが、「中国だけが一方的に譲歩するのは公平ではない」と釘も刺すのです。

Q3)
ではトランプ大統領も一定の譲歩はするでしょうか?
A3)
漢文が苦手なトランプ大統領に代わって、その胸中を推し量れば“初志貫徹”。中国との巨額の貿易赤字の削減は、最重要公約のひとつですから、もちろん安易な妥協は出来ません。その一方で、いま大統領は自らの再選キャンペーンで頭が一杯ですから、会談の決裂で、好調なアメリカ経済に悪い影響が出るのを進んで望みはしないでしょう。このため、米中双方は「中断している貿易交渉を再開し、交渉が続いている間はアメリカ側もひとまず追加関税の発動を見送る」そうしたいわば“一時休戦”が現時点で期待できるギリギリの合意になりそうです。『朋あり遠方より来る』およそ半年ぶりに顔を合わせる両首脳ですが、その先は必ずしも『楽しからずや』とはいかないかも知れません。

(髙橋 祐介 解説委員)


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