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「ゲノム編集食品 表示は?」(ここに注目!)

合瀬 宏毅  解説委員

年内にも流通が始まるとされるゲノム編集技術を使った食品。その「表示のあり方」についての議論が今日、消費者委員会で行われます。合瀬(おおせ)解説委員です。

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Q.委員会のみなさん悩んでいるようですね。

はい。このゲノム編集でできた食品の表示、かなり難しい議論になりそうです。
そもそもゲノム編集は、遺伝子を切ったり、加えたりすることで、栄養素の多いトマトや身をたくさん付けるタイなど、思い通りに形質の変化を引き起こすことのできる、画期的な技術だとされています。
今回、表示の議論の対象となっているのは、多くの研究者や事業者が開発を進める、遺伝子を、ピンポイントで切ることで変化を促した品種、この表示をどうするかです。

Q.どのような議論になっているのでしょうか

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 専門家は遺伝子を切っただけのゲノム編集は、自然界の突然変異を促しただけで、安全性は自然交配と同じ。表示は必要ないという立場です。表示をすることで、普及にブレーキがかかるのではないかという懸念もあります。
一方で、消費者からすると、いくら自然界での突然変異と同じだと言われても不安です。これまで国に寄せられた意見でも「ゲノム編集はまだわからないことだらけ」とか、「商品化には表示は不可欠」など、表示を求める声が多く寄せられている。表示を義務づけて欲しいという声が強い。

Q.義務づけはできないのですか?

難しいのは、その検証方法です。遺伝子を切るだけのゲノム編集は、品種そのものに別の遺伝子が残っているわけではありませんので、その品種がゲノム編集でつくられたものか、そうでないのか、遺伝子レベルでも検証できません。
検証できないなら、偽装表示かどうかも判断ができません。これでは罰則も設けられず、義務化は難しいというのが行政の立場なのです。

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Q.でも消費者としては知りたい情報ですよね。

 とはいっても、情報が無ければ消費者は、商品を買うときに判断できません。いつの間にか、ゲノム編集で作られた食品が流通していたとなれば、混乱は避けられません。
 義務化が無理なら、事業者の自主的な表示など、混乱のない表示のあり方がないのか、今日の消費者委員会でも議論を尽くして欲しいと思います。

(合瀬 宏毅 解説委員)


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