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「『組織罰』求める声は届くか」(ここに注目!)

松本 浩司  解説委員

JR福知山線事故などの遺族らで作る団体が、大事故を起こした企業に対する「組織罰」を創設することを求めて、きょう1万人分の署名を法務大臣に手渡します。松本解説委員に聞きます。

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Q)「組織罰」とはどういうものなのでしょうか。

A)
求めているのはJR福知山線事故や中央自動車道笹子トンネル事故、それに軽井沢スキーバス事故などの遺族たちで作る「組織罰を実現する会」です。
日本の刑法は処罰する対象は個人だけで、企業など組織を罰することはできません。
JR福知山線事故や笹子トンネル事故では会社の経営トップなどが刑事責任を問われましたが、いずれも無罪や不起訴になって、会社に責任があることは明らかなのに誰も処罰されないという結果になりました。そこで遺族の人たちは会社を処罰する「組織罰」、具体的には高額な罰金を課すものですが、これを作るべきだとしているのです。

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Q)遺族は処罰を求めているのですか。

A)
処罰感情が原点にあるのは確かだと思います。ただ、そこからスタートして遺族の人たちは法律や安全システムなど専門家から話を聞いて議論を重ねてきました。そして組織罰があれば、企業が事故を起こさないように安全対策に力を入れるようになり、事故が起きたときに企業全体が被告になるので原因究明と再発防止につながると確信を持ちました。導入によって社会の安全性を高めたいという強い思いがあるんです。

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Q)遺族たちの思いは届くのでしょうか。

A)
組織罰は刑法の考え方を転換するものでハードルは高いと考えられてきましたが、「実現する会」は刑法そのものを大きく変えずに導入できる新しい手法を提案していて、実現性が出てきたと見る専門家もいます。免震・制震ダンパーの問題をはじめ安全に関わる企業の不正やモラルの低下が次々に明るみに出ています。企業の安全の取組みを一層促し、社会全体の安全を高めるために何が必要なのか、遺族たちの訴えに耳を傾け、議論を深める必要があると思います。

(松本 浩司 解説委員)


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