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厳しい目が向けられる自民党の派閥政治 派閥の解消か存続か焦点

山下 毅  解説委員

自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で国民の政治に対する信頼は揺らぎ、派閥政治に厳しい目が向けられています。
自民党の政治刷新本部で派閥のあり方が焦点となるなか、岸田総理大臣は18日夜、岸田派の解散を検討していることを明らかにしました。
また二階派はおととしまでの3年間に記載していないパーティー収入が1億3600万円あまりあったなどとして政治資金収支報告書を訂正しました。
派閥はどのような役割を果たし、弊害を生んできたのか、そして今後の改革をめぐる議論の行方を考えます。

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【政治刷新本部と岸田派の解散検討】

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自民党の政治刷新本部は政治資金の透明性の拡大に加え、派閥のあり方を議論し、今月中に中間的なとりまとめを行う方針です。
ただ本部に参加する安倍派の複数の議員側が派閥からパーティー券収入のキックバックを受け政治資金収支報告書に記載していなかった疑いがあることがわかっています。
さらに岸田総理が会長を務めていた岸田派でもパーティー収入を収支報告書に記載していなかったとして、東京地検特捜部が当時の会計責任者を立件する方針であることがわかりました。
こうしたことを踏まえ、岸田総理は18日夜、岸田派の解散を検討していることを明らかにしました。
岸田総理
「(岸田派の)解散についても検討している。政治の信頼回復に資するものであるならば、そうしたことも考えなければならない」
NHKの世論調査では、政治刷新本部での再発防止策などの検討について、「国民の信頼回復につながらないと思う」が78%で不信の根深さがうかがえます。

【平成元年の「政治改革大綱」】
いま党の内外では、自民党が35年前にまとめた「政治改革大綱」が改めて注目されています。

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平成元年、自民党はリクルート事件の反省から官房長官などを務めた後藤田正晴氏らが中心となって「政治改革大綱」をとりまとめ、当時の竹下総理に提出し、党議決定されました。
リクルート事件では派閥のリーダーたちが未公開株の売却益を得ていたことから、今回と同じように派閥とカネの問題が浮き彫りになりました。
このため大綱は「派閥の弊害除去と解消への決意」を打ち出しました。
派閥などによるパーティーの自粛、党執行部や閣僚の在任中の派閥離脱が盛り込まれています。
しかし、パーティーは依然として続き“裏金づくりの温床”と指摘されています。
また岸田総理は12月まで岸田派の会長を務めていましたし、今の執行部の3人は派閥の会長を続けています。
執行部経験者は、35年前の大綱の通りに対応していれば今回のような問題は起こらなかったはずだと指摘しており、大綱が形骸化していることは明らかです。

【派閥が果たしてきた役割】
それでは派閥はどのような役割を果たしてきたのか。

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自民党の派閥は政策を磨き、リーダーを総裁に押し上げることを目指す議員集団と言われます。
ひとつの選挙区で3人から5人が当選する衆議院の中選挙区制の時代、自民党は同じ選挙区に複数の候補を擁立し派閥同士が勢力を拡大しようと競い合いました。
そして、派閥はその規模や結束を基盤に総裁の座をめぐって激しくせめぎ合い、昭和50年代前後に田中派の田中角栄氏と福田派の福田赳夫氏が繰り広げた政争は“角福戦争”と呼ばれました。
所属議員に対してはどうか。

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その役割は選挙と政治資金と人事・ポスト配分だと言われます。
選挙とは、幹部や先輩議員が選挙の応援を行うなど派閥をあげて支援します。
政治資金とは、選挙の時に派閥から資金支援があり、定期的に活動資金が配られることもあります。
ポスト配分とは、所属議員は内閣や党、国会のポストへの派閥からの推薦を期待します。
派閥はこうした活動や新人議員らの育成を通じて仲間を増やし、リーダーを総裁に押し上げることを目指してきました。

【派閥の弊害 政治資金パーティー】
一方、どのような弊害を生み出してきたのか。

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政治資金パーティーでは支援者らに1口2万円程度のパーティー券を販売します。
政治資金規正法では、リクルート事件などを受けて、企業・団体献金は政党や政党支部などに限って認め、派閥や政治家個人への献金は禁止されました。
しかし、パーティー券であれば企業や団体でも購入することができ、“抜け道”と指摘されてきました。
派閥はなぜパーティー収入に頼るのか。
購入者などの公開基準が寄付は5万円なのに対し、パーティー券は20万円で匿名性が高く集めやすい。
また派閥パーティーであればリーダーの知名度をいかし購入を依頼しやすいという事情もあります。
今回の事件では販売ノルマを超えて集めた分の収入を派閥が議員側にキックバックしたり、ノルマを超えた分をそもそも派閥側に納入しなかったりして、政治資金収支報告書に記載していなかった疑いがあります。
これでは国民は資金の流れを監視できません。

【派閥の弊害 人事・ポスト配分】
また人事も派閥に依存して行われてきました。

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去年9月、改造内閣が発足したとき、19人の閣僚のうち最大派閥の安倍派が要の官房長官も含め4人で、第2派閥の麻生派と並んで最も多くを占めました。
そして自民党執行部の多くが派閥のリーダーで派閥に依存した政権運営が行われていることは明らかです。
また去年の臨時国会中に副大臣や政務官が相次いで辞任に追い込まれた時、野党は「派閥からの推薦による順送り人事の弊害だ」と批判しました。
30年前、ひとつの選挙区で1人が当選する小選挙区制が衆議院に導入されてから、公認候補を決める党執行部の力が増し、派閥の締め付けや影響力は弱まったとも言われます。
しかし、依然として資金やポスト配分を左右し得る力を持ち続けています。
岸田総理も派閥について、「カネとかポストを求める場になっていたのではないかといった国民の疑念があることは深刻に受けとめなければならない」と述べています。

【今後の議論の行方】
政治刷新本部では今後どのように議論が進むのか。

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無派閥の菅前総理らは信頼回復には明確な対応を打ち出す必要があるとして派閥の解消を主張しています。
一方で、全体のおよそ8割を占める派閥に所属する議員を中心に解消に否定的な意見も根強くあります。
こうしたなか、与党の公明党は派閥の存続を前提とせず議論を深めるよう求めています。
野党からは、「裏金づくりの温床になっている派閥は解体すべきだ」という主張や、「政治刷新本部は茶番だ」という批判も出ています。
刷新本部は中間的なとりまとめに向けて、政治資金パーティーや所属議員への資金の配分をとりやめ、閣僚の推薦など人事の調整を行わないことを徹底することを検討しています。
また収支報告書に虚偽記載があった場合、政治家も責任を負う連座制の導入など罰則の強化も焦点となる見通しです。
ただ派閥の存続を前提にした改革案には派閥の解消を主張する議員らから反発も出かねず、岸田総理が岸田派の解散を検討していることも今後の議論に影響を与えます。

【国民の政治不信は払しょくできるか】
派閥をめぐる不透明な資金の流れに国民の疑念は深まっており、「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われる」という政治資金規正法の目的がないがしろにされています。
自民党や関係する派閥の幹部らは捜査中を理由に説明を避けてきましたが、まず問題の経緯や責任を明らかにする説明責任を果たす必要があります。
そのうえで派閥の弊害にメスを入れ、説得力のある改革案を示し、確実に実行に移さない限り、政治不信の払しょくはおぼつかないことを指摘したいと思います。


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