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能登半島地震 救助と支援に全力を

松本 浩司  解説委員

能登半島地震から3日がたちましたが、状況が明らかになるにつれて事態の深刻も明瞭になってきました。多くの人が倒壊した建物の下に取り残され懸命の救出活動が続いています。また3万人を超える人が厳しい寒さの中、避難生活を強いられていて、水や食料、燃料、トイレなどが不足しています。こうした状況を整理したうえで、どのような支援が求められているのかを考えます。

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【インデックス】
解説のポイントは
▼なぜ大きな被害になったのか
▼わかってきた被害の詳細
▼求められる支援は、の3点です。

【なぜ大きな被害になったのか】
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今回の地震の規模はマグニチュード7.6。阪神・淡路大震災の3倍近くに相当するエネルギーで、直下で発生した地震として非常に大きな地震でした。
建物の倒壊と大規模な火災、津波、それに土砂災害や液状化など地震にともなうあらゆる被害が起きているため、多様な災害対応が求められ救援を難しくしています。

なぜこのような被害が起きたのでしょうか。

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震度の分布を示した図です。一部に紫色の震度7があるほか濃いオレンジ色の震度6強や6弱が広がっています。能登半島のほぼ全域で耐震性の低い木造住宅が倒壊するとされる強い揺れがあったことがわかります。

また国土地理院の人工衛星による観測で能登半島の西部では地震後、地盤が最大4メートルも隆起し、水平方向に1メートル以上移動するという大きな地殻変動が起きていたこともわかりました。

地震はどのように起きたのでしょうか。
能登半島の北岸沿いには4つの活断層帯があることがわかっていて、それぞれがマグニチュード7クラスの地震を引き起こすと考えられていました。

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国土地理院は地形変動のデータから地震を引き起こした断層の範囲を計算した結果、断層は長さ150キロに達していたことがわかりました。活断層帯との関係はまだ検証されていませんが、複数の活断層帯が一気にずれ動き、津波を伴う大地震を引き起こした可能性があるのです。

大きな地震が起きた後、破壊された断層の両端付近など周辺部で地震が起きやすくなることが知られています。気象庁は1週間程度は震度7程度の揺れに注意をするよう呼びかけています。

【わかってきた被害の詳細】
発生から3日がたち深刻な被害が明らかになってきました。

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犠牲者の数は増え続けていて石川県によりますと輪島市で48人、珠洲市で23人など、84人の死亡が確認されています。

時間との戦いになっているのが不明者の救助です。生存率が下がるとされる72時間が経過したからです。警察庁によりますと倒壊した家屋の下敷きになるなど救助が必要だとして警察に寄せられている通報は▼輪島市でおよそ70件、▼珠洲市でおよそ60件のあわせておよそ130件に上り、懸命な救出活動が行われています。(3日時点)

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石川県内では4日午後3時現在、370カ所の避難所にあわあせて3万3500人あまりが避難をしています。多くの避難所で断水や停電が続いているうえ、水や食料、毛布、燃料、トイレなどが不足しています。

厚生労働省によりますと多くの医療機関や高齢者施設などでも停電や断水が続いています。また人工透析を行っている医療機関のうち石川県内の6つの医療機関で透析ができない状態になっていて、県外を含めほかの医療機関で透析が受けられるよう調整が進められています。

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集落の孤立も深刻です。
国道や県道だけで100カ所以上で通行止めになるなど道路が寸断されているためです。石川県によりますと4日午後3時の時点で、県内5つの市と町の30地区で少なくとも780人が孤立状態になっているということです。市や町が把握できていないところもあり、孤立状態の人はさらに多いと見られます。

【求められる支援は】
このように被災地はとても厳しい状況にあることがわかってきました。いま、どのような支援が求められるのでしょうか。

被災地には自衛隊や消防や警察の応援部隊5000人近くが入っていて、災害派遣医療チームD-MATの活動も始まっています。

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▼派遣された部隊が効率よく活動するためには「どこで、どのような支援の必要があるのか」という情報が欠かせません。被災した市町村も状況を把握しきれていないことから自治体への人的支援をしたり、国の現地対策本部の態勢を強化して、県や市町と連携して救援や支援活動を進める必要があります。

▼また国は要請をまたずに物資を送るプッシュ型支援を始めていて食料や毛布、携帯トイレなど生活関連物資が、石川県が設けた広域物資拠点に届き始めています。問題は道路が寸断されるなかどうやって届けるのか、また孤立した地区をどうやって把握するのかです。道路の通行再開を急ぐと同時にヘリコプターやドローン、船舶などあらゆる手段を使って届けなければなりません。

▼一般のボランティアはまだ受け入れが行われていませんが、避難所運営や、高齢者や障害者のケアなど災害支援の高い専門性を持ったボランティア団体が、30団体すでに被災地に入っています。自治体や国はボランティア団体と情報共有をはかり、連携して被災者支援にあたることが求められます。

▼また避難所に行くことができずに停電や断水した自宅で避難している在宅避難者も数多いと考えられます。こうした避難者を把握して支援物資を届けることも急がなければなりません。

▼寒さや物資不足など厳しい環境の避難所から被災地外への2次避難も進めるべきでしょう。ホテルや旅館を避難所として借り上げ、高齢者や障害者、乳幼児など要配慮者から移ってもらう必要があります。

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また私たちになにができるでしょうか。石川県は一般のボランティアや、一般からの支援物資は受け入れ態勢が整っていないため、まだ受けていません。
一般ボランティアの窓口となる各地の社会福祉協議会や役場は繁忙を極めているため電話での問い合わせはせずにホームページでの発表を待ってほしいとしています。

一方、石川県と日本赤十字社石川県支部が義援金の受付を始めているほか、NPO、専門ボランティアの活動費にあてる支援金を送ることもできます。できることを考えたいと思います。

被災地では厳しい寒さや雨に加えて地震が相次いでいて、避難している人たちの疲れやストレスの大きさは察するに余りあります。被災地の市町も職員自身が被災をしながら被災者支援にあたっています。地震で助かった命を避難生活で落とすことがないよう被災者の救助と支援に全力をあげてほしいと思います。


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