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運転禁止命令解除 再稼働へと進むのか 東京電力柏崎刈羽原発

水野 倫之  解説委員

このまま再稼働へと進むことになるのか。
テロ対策で問題が相次ぎ事実上運転が禁止されていた東京電力・柏崎刈羽原発について、原子力規制委員会は、改善が進んだとして、きょう、運転禁止命令を解除。
これで、福島の事故を起こした当事者の東電による再稼働への動きが、進み始めることになる。
しかし柏崎刈羽ではこの1年も不祥事が相次ぎ、地元の不信感は根強く、東電が原発を動かすことへの不安の声も。

▽運転禁止命令解除 判断の根拠は
▽検査中も相次いだ不祥事
▽再稼働の行方は
以上3点から命令解除の意味ついて、水野倫之解説委員の解説。

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原子力規制委員会はきょうの委員会で、柏崎刈羽原発での検査の結果や、先週、東電の小早川社長との懇談で、社長が先頭に立ち継続して改善を進める姿勢を示した点などをあらためて確認。
東電が自律的に改善できる体制が整っているとして、全委員一致して事実上の運転禁止命令の解除を決定。

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今回の運転禁止命令の原因となったテロ対策の不備が発覚したのは、6号機と7号機が再稼働の審査に合格したあとの、おととしのこと。
ハード面では、テロリストなど悪意ある第三者の侵入を防ぐ防護設備16か所が故障したまま長期間放置されていた。
またソフト面でも、社員が他人のIDを無断で持ち出して原発の心臓部の中央制御室に進入していた不正も明らかに。
規制委員会は東電の安全管理体制が劣化しているとして、核燃料の移動を禁止する事実上の運転禁止命令を出した上で、東電の再発防止策について今月まで検査を行った。

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その検査結果によると、問題の背景には経営幹部によるテロ対策への関与の不足や、警備を担当する協力会社が社員に対してそんたくする構造があったとしている。
そして規制委員会は社員に密着し、その振る舞いややりとり、訓練をチェックする「行動観察」と呼ばれる手法などで、のべ4000時間を超える検査を行った。
当初、ハード面では侵入検知器に誤報が多く、悪天候での監視に問題があったほか、ソフト面でも管理する立場の社員がトラブル対応を議論する場に参加していないケースなどが目立ったという。

しかしその後改善が進み、ハード面では生体認証装置が導入され、侵入検知器の誤報も減って、警報が続いた時には担当者が現場に出向いて確認を行うようになったということ。
またソフト面でもこれまでテロ対策の情報に関与してこなかった社長ら経営幹部が報告を受けるようになったほか、社長直轄のテロ対策を監視する組織が設置され、担当者が社員の行動を観察することで、改善が進んできたということで、東電が自律的に改善できる体制ができつつあると結論づけ。

さらに規制委員会は、東電に再び原発を運転する適格性を認めた6年前の判断についても検証し、経済性よりも安全性を最優先にする基本姿勢が確認でき、問題ないと判断。
以上2点から、事実上の運転禁止命令を解除したわけ。

これで柏崎刈羽の安全管理体制は万全となったと言えるのか。
今回の命令解除は規制委員会によるお墨付きを得たというわけではなく、必要最低限の安全管理体制が整ったに過ぎず、あくまでスタートライン上にいるということを東電は自覚する必要あり。
というのも規制委員会の検査期間中も設備面での不備や、東電の不適切な管理・規則違反など不祥事が相次いでいるから。

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▽今年6月には監視対策のための照明の電源が入っておらず、半年以上にわたって点灯せず十分な監視体制ができていなかったことが発覚。
▽またソフト面でも社員や作業員による無許可のスマホ持ち込み事案が相次いでいるほか、
▽5月には社員が図面などの書類を無許可で持ち出し、自家用車の屋根に置いたまま走行して一部を紛失。
▽さらに10月にも、薬物検査で一旦陽性反応が出た社員を誤って防護区域に入れていた事が発覚。その後の警察の検査で陰性とわかったものの、東電のチェック体制に問題を残した。
ほかにも様々あるが、規制委員会はいずれもその後対策が取られているとして、軽微な事象だとしている。
しかし一件一件は軽微だとしても、こうしたことが続いたり同時に起きれば、事故へのきっかけとなるかもしれない。
東電はあくまで必要最低限の体制を整えたに過ぎないことを自覚し、改善活動を継続していかなければならない。
また規制委員会も、事故の当事者でテロ対策に不備があった東電を、ほかの大手電力と同一視するのではなく特別な会社としてみていかなければ。そしてきょうの命令解除で終わりとせず、今後も日常の検査を厳しく行って安全管理体制に問題が無いか監視を強化していく必要あり。

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次に再稼働の行方。
きょうの決定で、東電は再稼働への動きを強めていくとみられる。
1基再稼働できれば火力発電の燃料費を年間1200億円減らせる効果があるとして、柏崎刈羽の再稼働を経営再建の柱と位置づけ。福島第一の廃炉や賠償にあてる経費を確保する上で、不可欠だというわけ。
またエネルギー危機や脱炭素へ対応するため原発回帰へと舵を切った政府にとっても、事故を起こした東電が再稼働にこぎつけられれば、ほかの原発再稼働にも弾みがつくとして、期待を寄せる。

しかし現状、再稼働が見通せる状況にはない。
再稼働には協定により地元の了解が必要だが、不祥事が相次いだことで地元は東電への不信を深めているから。
柏崎市の桜井市長は、社員が自家用車で書類を紛失した際には、「東電が再稼働を担うことができる会社なのか、他の会社があるのではないか」と不信をあらわに。きょうも、命令解除は歓迎するとしながらも、「市民が不安を感じていることを忘れないでほしい」と話す。
また新潟県の花角知事も、不祥事を受けて東電の原発の運営能力への疑問を示し、「再稼働は県民の意見をきいて判断し、県民の意思も確認する」と。そしてその方法については「信を問う方法が明確で重い方法だ」として、知事選挙も選択肢という認識を示している。

加えて、住民からは事故時の避難に不安の声が。
特に懸念されているのが、大雪対策。
1年前、大雪で高速道路が通行止めになり、影響で柏崎市の国道8号などで大規模な車の立ち往生が発生、解消まで30時間以上かかった。国道は住民の主要な避難ルートで、事故と大雪が重なった場合、速やかに避難できるのかが大きな課題で、地元は避難路の整備を国の責任で行うよう要望。

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このように東電の信頼の回復、そして実効性ある避難計画にめどが立たない限り、再稼働とはならないことを東電政府ともに肝に命じておかなければならない。

きょう、運転禁止命令は解除されたが、再稼働に向けてはスタートラインにようやくたった状態にすぎない。東電そして規制委は、テロ対策が具体的にどう改善し、今後安全管理体制をどう強化していくのか地元にしっかり説明し、納得してもらうことから始めなければ。


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