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世界人口が80億人に

出石 直  解説委員

世界の人口が80億人に達しました。15年後の2037年には90億人、2058年には100億人に達する見通しです。食料や水、エネルギーなどに限りがある中で、果たしてこの地球は人口増加に耐え続けることができるのでしょうか?80億人が暮らす地球の将来と課題について考えます。

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【解説のポイント】
(1)増え続ける世界人口の推移をみたうえで、
(2)人口の変化によって生じる様々な問題と
(3)80億人が安心して暮していくためにはどうすれば良いのか考えていきたいと思います。

【増え続ける世界人口】

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19世紀の初頭には10億人程度だった世界の人口は、20世紀に入って急速に増えました。農業革命や産業革命によって生産性が向上し、医療技術や保健衛生が発達したためです。1960年には30億人、1987年には50億人、2010年には70億人を超え、国連は今月15日、世界の人口が80億人に達したと発表しました。

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特に多いのはアジアとアフリカの国々です。中国とインドの人口は14億人を超えていて、来年2023年にはインドの人口が中国を抜いて世界でもっとも多くなる見通しです。

世界の人口は、2037年には90億人、2058年には100億人を超え、2080年代にピークに達するとみられ、アフリカでは2050年までに人口が今の2倍以上に増えると予測されている国もあります。

【人口変化で生じる問題】
こうした急激な人口増加は何をもたらすのでしょうか?

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労働力人口が増加し個人消費が活発になることで経済が成長することが期待されます。その一方で、食料や水、エネルギー、住宅など生活に欠かせない資源の不足を招くおそれがあります。

ここからは国連の報告書に基づいてみていきます。

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世界では8億2800万人、10人に1人が飢餓に直面しています。
健康的な食事が得られない人は31億人に達していて、このうち9億人はもっとも貧しいアフリカのサハラ砂漠より南の地域に住んでいる人たちです。(The State of Food Security and Nutrition in the World 2022)。

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水不足も深刻です。安全な飲料水が入手できない人は22億人、毎日700人以上の子どもが不衛生な水が原因で死亡しています。
国連は「早急な対策をとらなければ、2030年には何十億もの人が安全な飲料水を得られなくなるおそれがある」と警告しています。(WHO, UNICEF)

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都市への集中も進んでいます。現在、世界の人口のおよそ半分(56.2%)が都市部に住んでいますが、2050年頃には3分の2(68.4%)まで増えるとみられています。(World Cities Report 2022)
交通渋滞、大気汚染、ゴミの増加などが深刻化し、公共サービスが受けられないスラムに住む人は2030年には20億人に達すると予測されています。(UN-HABITAT)

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人口が急激に増えているのは、まさにこうした多くの問題を抱えた貧しい国々です。
しかも人口増加による経済成長の恩恵を受けられない弱い立場の人達がもっとも深刻な影響を受けると予想されています。

貧しい国々で人口が急増している一方で、先進国を中心に人口が減少に転じている国もあります。

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ひとりの女性が産む子どもの数の指標となる合計特殊出生率は、1950年には全世界平均で5.0でしたが2021年には2.3にまで下がりました。日本は1.30、韓国は0.81と極端な少子化が進んでいます。世界の人口の3分の2は、2.1未満の国や地域に住んでいて、国連は「この傾向が続けば2050年までに61の国と地域で人口が1%以上減少する」と予測しています。

少子化に伴う高齢化も進んでいます。65歳以上の割合は2022年には10%でしたが、2050年には16%と6人に1人に増え、5歳未満の人口の2倍以上に達すると見られています。労働力人口が減って経済が停滞し、社会保障費の増大に直面することが心配されています。

途上国での人口の急増、先進国での人口減少、世界では今、まったく正反対の2つの変化が同時に起きているのです。

【80億人が安心して暮らしていくために】
では80億人が安心して暮らしていけるためにはどうすれば良いのでしょうか?
人口動態の調査や途上国への支援を行っている国連人口基金のナタリア・カネム事務局長に聞きました。

(国連人口基金ナタリア・カネム事務局長オン)
「子育てに苦労している貧困家庭、紛争によって避難を余儀なくされている何百万人もの人達。気候変動による災害の増加。私たちは今、社会的、経済的な不平等が蔓延する時代に直面しています。人口の変化の影響を受ける弱い立場の人達に手を差し伸べていかねばならないのです」

格差や不平等の解消を急ぐ必要があります。

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世界の平均寿命はこの30年ほどで7年延び、2021年には71.1歳になりました。
しかしサハラ砂漠以南のアフリカの平均は59.7歳、世界平均とは11歳、日本の84.8歳とは25歳もの開きがあります。
5歳未満で亡くなる子どもは、世界平均では1000人あたり37.1人なのに対し、サハラ以南のアフリカでは71.9人と2倍近くに達しています。(World Population Prospects 2021)

国連人口基金によりますと、人口が急増している途上国では、労働力を得るため本人の意思とは無関係に妊娠、出産する10代の母親が多く、2021年には1330万人の赤ちゃんが20歳未満の母親から生まれています。途上国で妊産婦が死亡する割合は先進国の175倍に上っています。(UNFPA)

国連は、保健医療制度の充実や、本人の意思によらない妊娠を減らすための教育、避妊具の普及などが必要だと訴えています。

このほか新型コロナウイルスのような感染症の世界的な流行、ウクライナで起きているような戦争の惨禍、そして気候変動による災害の増加にも備えていかねばなりません。

【まとめ】
46億年前に誕生した地球は今、80億人というかつて経験したことのない人口を抱えるまでになりました。しかしその資源には限りがあります。
果たしてこの地球はどこまで耐えることができるのでしょうか?
大切なのは80億という「数」ではありません。80億人にはそれぞれに顔があり、生活があります。そのひとりひとりの生活の「質」を向上させていくことが、より重要ではないでしょうか。格差や不平等を解消し、限りある資源を大切に分かち合っていく。80億人、ひとりひとりが人間らしく安心して暮らしていける社会にしていくことが、これからの世界には求められています。


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出石 直  解説委員

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