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新型コロナ第7波 医療ひっ迫~いま求められる対策は何か

牛田 正史  解説委員

未曾有の感染拡大を続ける新型コロナウイルス。
各地で病床がひっ迫し、今まさに正念場を迎えています。
感染者の命を守るために何が必要なのか。
医療ひっ迫の行方と求められる対策について考えます。

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コロナ病床の使用率は、7月に入って急速に上昇しています。

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内閣官房の発表によりますと、今からおよそ2週間前の7月14日に、使用率が50%を超えていたのは、沖縄、熊本、和歌山の3つの県でした。
しかし、その1週間後には8つの県に拡大。
さらに1週間たった28日には、19の府と県に広がりました。
この50%超えは、国が第7波で新たに導入する「都道府県の対策強化宣言」、これを出す目安の1つとされています。
そして、全国で最も高い沖縄では、使用率が90%を超えています。
また神奈川など4つの県で70%を超え、60%を超える県も5つあります。
大都市でも東京で49%、大阪で56%と、全国的に医療の負荷が高まっています。

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一方、重症者の病床に限ってみると、全体の平均を下回ります。
7月27日の時点では、全国の平均で24%と、全体の平均の半分ほどとなっています。
ただ、楽観はできません。感染者が増えれば重症者も増えていきます。
現在は6波のピークより少ないものの、人数はおよそ1か月の間に7倍あまりに増えています。
特に今後は高齢者への感染拡大も予想され、重症者が大きく増えるおそれもあります。
重症病床がひっ迫するかどうかは、今後の医療を考える上で極めて重要なポイントです。

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ここまで病床の使用率をお伝えしましたが、実はこの数字以上に厳しい現実が起きています。医師や看護師の感染、それに濃厚接触者になるケースが相次いでいるという点です。
沖縄では医師や看護師の休職者が、すでに第6波を大きく超えています。
ベッドは空いていても、医師や看護師がおらず患者を受け入れられない。
これは沖縄だけでなく全国でも相次いでいます。
このため、病床の使用率が100%になる前に、受け入れが困難になるおそれが十分にあります。
国や自治体、それに私たちは、表面上の使用率だけに捉われず、現状をより厳しく見て、対策を取っていかなければなりません。

では今後、どのような対策が求められるのでしょうか。
まず病床の拡大について見ていきます。

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27日の時点で確保できている病床は4万5000床あまりです。
実は、この確保病床、ことし初めの第6波から、さほど変わっていません。
通常医療との両立や感染対策に不安のある病院が、今も少なくないからだと見られます。
この病床数について岸田総理大臣は、近く5万床まで増やし、稼働させていく考えを示しました。
ただ、そこまでの病床、あるいは必要な医師や看護師を確保できるのかは不透明な上、仮にできたとしても、感染者が急増し続ければ、病床が不足するおそれはあります。

だからこそ、私は病床の拡大とともに、もう1つ重要なポイントがあると考えます。
それは治療を終えた患者が速やかに転院、または退院できる体制を整備すること、つまり病床の回転率を高めることです。

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これからは限りある病床を有効に使っていくことが求められます。
重症化を防ぐ早期治療にも繋がります。
国はこの回転を速めるため、入院から4日目以降で、酸素投与が必要な中等症Ⅱ以上の悪化が見られない人は、自宅や後方支援病院に移る、これを積極的に検討するよう病院に呼びかけています。
しかし、これには次の行き場が無くてはなりません。
とくに転院先となる後方支援病院です。
治療が終わっても一定の療養が必要で自宅に戻れない患者を受け入れ、リハビリや療養などを行いますが、整備が課題となっています。
国は第6波以降、こうした転院先となる医療機関への財政支援を強化し、病床の確保を進めてきましたが、4月下旬までに新たに増えたのは1200床。
集計できていない病床もありますが、十分に確保できているとは、まだ言えません。
この後方支援の不足は、第1波から常に指摘され続けている課題です。

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「通常の医療に影響が出る」、あるいは「十分な感染対策が取れない」という病院に少しでも協力してもらうにはどうすれば良いのか。
今は最新の知見から、病棟全体で「ゾーニング」を行う、つまり専用病棟を作るということをしなくても、病室ごとにゾーニングが出来るようになり、以前より一般診療への影響や病院の負担を低く抑えられるようになった面もあるとされています。
各地域の自治体や医師会、それに専門知識を持つ病院などがきめ細かい支援やアドバイスを行って、一刻も早く後方支援のすそ野を広げてもらいたいと思います。
また私たち病院を利用する側も、もし普段通っている病院がコロナの患者を受け入れ始めたとしても、その必要性を理解していくことが大切だと感じます。

ここまで病床のひっ迫を少しでも防ぐ対策についてお伝えしましたが、入院する段階、つまり医療の入り口でも大きな課題が生じています。

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まず救急医療です。救急車を呼んでも、受け入れ先がすぐに決まらない事例は、新型コロナの疑いでは、24日までの1週間に2600件あまりあり、第6波を超えて最多となっています。
これは救急搬送が必要なほかの疾患の患者も大きな影響を受けています。
病床のひっ迫が大きな要因ですが、それ以外に「軽症の人でも救急車を呼ぶケースがある」という指摘があります。
これは発熱外来や相談窓口などに電話をかけても、すぐにつながらず、不安から救急車を呼ぶ人も少なくないと見られています。
救急以外の相談窓口の体制を強化するともに、どんな症状であれば救急搬送を求めるべきなのか、国はその目安を示していく検討も進めていく必要があります。

また、第7波では、入院する人よりも自宅で療養する人が圧倒的に多くなっています。
そうした人たちの健康観察や往診は、いまのコロナ医療で極めて重要になっています。

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自宅療養者の健康観察や診療を担う医療機関は、第6波(1月)の1万6000か所から、4月下旬には2万3000か所に増え、体制が強化されています。
しかし、療養者の数は109万人を超え、第6波を大きく上回っています。
さらに、高齢者施設のクラスターも増加し続け、1週間で337件(~25日)と、第6波のピークに徐々に近づいてきています。
このため、自宅や施設での医療体制のさらなる拡大を、早めに検討する必要があります。
特に高齢者施設では、普段、利用者の診療を手掛けてくれている嘱託医、この中にはコロナの治療は出来ないという人もいましたが、そうした医師とも治療のノウハウを共有し、出来る限り医療の輪を広げてもらいたいと思います。
自宅や施設で療養する人の急変を、いち早く見つけ入院に繋げられる体制が整えば、それだけ早期治療が可能となり感染者の命を守ることに繋がります。

今後、病床のひっ迫を食い止め、重症者や死亡者の数を抑えることができれば、平時を取り戻していくきっかけになるかもしれませんが、ひっ迫がさらに悪化すれば、再び厳しい行動制限が必要になる可能性もあります。
いま日本全体が、極めて重要な時期に差し掛かっていると言えます。
だからこそ、国や自治体は医療の負荷を抑える対策を一層強化していくべきですし、私たち自身も、今一度、感染対策を徹底し、ウイルスの拡大を防いでいかなければならないと感じます。

(牛田 正史 解説委員)

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