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新型コロナ"第7波"重症者・死者を増やさないために

中村 幸司  解説委員

新型コロナウイルスの感染が全国的に拡大しています。専門家は、いわゆる「第7波」に入ったと話しています。広がっているウイルスは、感染力が高いだけでなく、免疫を逃れる性質があり、対策が難しくなっています。
感染者数が増えている今、大切なのは、重症になる人や亡くなる人を増やさないようにすることだと思います。夏休みで人の移動や接触が増えることが見込まれる中、必要な対策について考えます。

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まず、感染の現状です。

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上の図は、全国の新規感染者の推移です。2022年7月に入って、感染者が急増し、7月16日には1日の感染者が11万人あまりと、過去最多になりました。
現時点について、政府は医療提供体制の状況などから緊急事態宣言といった行動制限の必要はないとしています。

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この感染拡大には、ウイルスの変異が関わっているとみられています。
2022年初めの第6波は、それまでのデルタ株から感染力のより高いオミクロン株に置き換わる中で感染が広がりました。第6波の途中で、オミクロン株の「BA.1」から「BA.2」に置き換わり、いまは「BA.5」に置き換わりが進んでいます。

感染者増加の要因は何でしょうか。

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ひとつは、「BA.5」の高い感染力です。
そして、BA.5には免疫を逃れやすい性質があり、ワクチン接種によってできた免疫、つまりワクチンの効果が弱くなっているとされています。
さらに暑い日が続いて、十分な換気がしづらくなっているため、室内での感染が増えている点も上げられています。
増加のスピードがこれほど急なのは、なぜでしょうか。
BA.5の感染力が高いことがありますが、それと併せて、ある人が感染して周囲の人に感染させるまでの期間、いわば「感染のサイクル」が短いという、オミクロン株の特徴が関係していると指摘されています。

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今後は、夏休みの旅行や帰省などで多くの人が移動し、ふだん会わない人と会う機会が増えることが想定されます。専門家からは「感染者は、さらに増えるおそれがある」という声が聞かれます。

第7波では、第6波のときを教訓に、感染者を増やさない、さらに亡くなる人を増やさないようにする必要があります。

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上の図の上段は、先ほどの新規感染者の数、下段は、亡くなった人の数の推移です。
オミクロン株は「多くの場合、感染しても軽症で済む」と言われています。しかし、第6波では、感染者が過去にない規模で増えた結果、亡くなった人も増え、1日200人前後の人が亡くなる日が、およそ1か月続きました。
現在、感染者数の増加に対して、死者数は大きく変化していません。ただ、重症者は増え始めています。今後、遅れて死者数が増加するおそれがあります。
「亡くなる人を増やさない」、そして重症者や死亡する人を増やさないために、「感染者を増やさない」ことが、第7波の対策のポイントになります。

そのために、何が必要か。専門家が指摘しているのがワクチンの3回目接種と4回目接種です。

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こちらは、3回目接種を受けた人の割合である接種率を年代別で示したものです。60歳以上は80%以上、70代より上は90%を超えています。一方、若い人たちで接種率が低いことがわかります。これが大きな課題とされています。

3回目接種は、何が重要なのか。

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ワクチンの発症予防効果は時間とともに低くなりますが、特に、免疫を逃れやすいBA.5に対する効果は、デルタ株などより低下すると考えられます。3回目接種により、免疫を一定程度、回復させることができます。
このため、専門家は3回目接種をしていない特に若い世代に対して、接種を検討するよう呼びかけています。また、3回接種すると、より幅広い変異株に対応できる免疫が獲得できるとされています。
3回目接種を終えた60歳以上の人や基礎疾患のある人などには、3回目接種から5か月経過したら4回目接種をするよう求めています。これらの人は重症化リスクが高いとされていますが、4回目接種には、重症化を防ぐ効果があるということで、その効果に期待したものです。
3回目接種と4回目接種は、感染者の減少や重症化リスクの高い人を守るために大切と考えられています。
ワクチン接種への理解を進めるために、政府は、3回目接種や4回目接種の効果や必要性について、わかりやすく伝えることが求められていると思います。

そして、重症化しやすいお年寄りを守るために重要なのが、高齢者施設の感染対策です。

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これまで、各地の高齢者施設でクラスターが発生し、多くのお年寄りが新型コロナに感染しました。このため、国は自治体を通じて、全国の施設に対し、感染対策などを進める「支援チーム」の派遣や医師や看護師による往診をしてもらう体制を整えるように求めました。こうすることで、日常的に、感染対策についての専門的な指導を受けることができます。
また、施設内で感染者が見つかったときは、治療薬をすぐに投与するなど早期治療の実施、
さらには、施設の関係者全員の検査を行うなどの対応で、感染の拡大を最小限に抑えるという考えです。
国の調査によりますと、全国の多くの施設で、こうした体制が整っているとされています。
一方で、最近も高齢者施設でクラスターが発生しています。

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専門家は、施設の中には、感染が広がるのがはやい「BA.5」の特性を十分理解せずに、連絡や検査などの対応が遅れてしまうケースがあると話しています。
高齢者施設の感染対策について、日常の指導などを通じて支援の実効性を上げていくことが求められています。

つぎに、感染者を増やさないために、私たちひとり一人ができる日常的な対策について見ていきます。

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専門家は、基本的な感染対策を徹底してほしいと話しています。3密のうち、1つの密でも避ける、手洗い、マスクの着用、換気などです。
このうち、マスクについては、夏の時期、熱中症対策を優先して考えてほしいと思います。屋外で、近い距離で会話をする際は、一般にマスクをする必要があるとされていますが、夏はそうした場面を避けるというのも、ひとつの方法だと思います。

また、換気は、第7波の対策として専門家が、特に注意を求めています。冷房を使っているため、換気が不十分になりがちだからです。

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上の図は、部屋を上からみた図です。部屋の空気が効率的に入れ替えられるよう、2か所の窓を開けて、窓の代わりにドアを利用することもできます。

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机では、座る人の前と左右の3面を青で示したパーティションで囲むと、空気がよどんでしまいます。ひとつの改善例としては、パーティションは、空気の流れに沿った向きに立てて、
パーティションをはずした部分は、人と人の間隔を確保する。

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つまり、換気する際の空気の流れを邪魔しない配置を考えることが大切です。換気が十分かどうかは、二酸化炭素・濃度の測定器で、1000ppm以下になるようにするのが目安です。また、換気によって室温が上って、熱中症にならないよう、温度計で測ることも大切です。

政府は、7月15日に示した対策の方針の中で、「新型コロナウイルスと併存しつつ、平時への移行を慎重に進める」と記しました。平時へ移行するには、重症になる人、亡くなる人を増やさないことが重要です。
感染者が増えている、いま、ウイルスの特徴を理解した上での対策が求められています。

(中村 幸司 解説委員)

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