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参院選の争点 新型コロナ対策をどう進めるか

中村 幸司  解説委員

参議院選挙の争点、新型コロナ対策についてです。
新型コロナの感染者数は、選挙が公示されたころまで減少傾向が続いていましたが、状況が変わってきました。感染者数は増加していて、大きな感染拡大につながらないか、心配する声も聞かれます。
今後の感染症対策をどのように進めていくのか、政治には、多くの課題が突きつけられています。今回は新型コロナ対策について、各党の公約を見ながら、選挙戦の争点を考えます。

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下の図は、全国の新規感染者の推移です。

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いわゆる「第6波」から感染者数は、減少傾向にありましたが、6月下旬ころから増加傾向になり、1週間の感染者数は7月6日時点で、47都道府県すべてで前の週より増加しています。
オミクロン株は、重症化する人の割合が比較的小さいとされますが、第6波では感染者が増えたことで、亡くなった人も増え、第5波より多くなりました。感染者の治療だけでなく、一般の医療も含めて、医療現場がひっ迫し、大きな課題となりました。

その医療提供体制について、どうするのか。各党の公約を見てみます。

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▽自民党は、臨時の医療施設等も含めた保健医療体制の強化に取り組む。
▽立憲民主党は、確実に医療を受けられる「コロナかかりつけ医」制度を創設する。
▽公明党は、医療機関の役割分担、病床や医療従事者の確保などを迅速に行える体制をつくる。
▽日本維新の会は、医療機関・医療関係者に実行力のある要請・命令が行えるよう法整備を行う。
▽国民民主党は、国立病院などの患者受入れ拡大と民間病院の受入指示を法制化する。
▽共産党は、急性期病床削減計画を中止し、感染症病床、救急・救命体制の予算を2倍にする。
▽れいわ新選組は、医師・看護師、保健師など人材の増員を国が責任をもって行う。
▽社民党は、病床削減、公立・公的病院の統廃合に反対し、保健所、保健師の数を増やす。
▽NHK党は、看護師がより幅広い医療行為を可能とする資格制度の導入を提案する。
各党、このように訴えています。
施設や体制の強化などを打ち出す与党。野党は、新たな制度の導入や法律による強い措置、医療現場の増強などを政策に盛り込んでいます。

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医療提供体制の充実には、医師や看護師などを増やす必要がありますが、これまでの感染拡大では、看護師がなかなか集まらないといった経験をしました。それだけに、人材をどのようにして確保するのか。これがポイントの一つです。
また、体制の規模をどうするのか。難しいバランスも求められます。規模を、感染者が多い、いわゆる「有事」に合わせると、「平時」は体制が大きすぎて、効率が悪くなります。有事のために余裕をもたせた分を、平時にどう活用するのか。あるいは、国民に、なんらかの負担が必要になることも考えられます。
また、医療体制の構築には、規模の大きな病院だけでなく、開業医に至るまで地域の医療機関全体の協力も重要だと指摘されています。
こうしたポイントについて、いかに感染拡大の備えにつなげるのか、選挙戦を通じて、各党には丁寧な説明が求められます。

感染者を抑えながら、社会経済活動を以前のような日常に少しでも近い状態にしていくことも求められています。
日常をとり戻すことなど、今後の対策に関する各党の政策を見てみます。

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▽自民は、本格的な移動の回復などに向けた交通機関などの感染対策や水際対策に万全を期す。
▽立民は、必要な時に誰でもすぐに受けられるPCR検査体制を確立する。
▽公明は、後遺症の調査・研究を強化するとともに、後遺症を担当する外来や相談窓口の設置促進に取り組む。
▽維新は、感染症法上の取り扱いをインフルエンザなどと同じ「5類感染症」に変更することで、社会活動の正常化を目指す。
▽国民は、「無料自宅検査」などによるセルフケアで家庭内感染と社会的感染を抑制する。
▽共産は、高齢者施設、医療機関などへの頻回検査を国の責任で行う。
▽れいわは、感染拡大のおそれがある場合には、災害に指定、徹底した補償を行う。
▽社民は、飲食店などに休業や時短営業等を要請する場合には、国の補償をセットで行う。
▽NHK党は、感染拡大には注意を払った上で、外国からの観光客の受け入れ拡大を政府に求める。
各党はこのように訴えています。

では、例えば、いまの感染状況にどう対応するのか。

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今後、夏休みやお盆休みで、全国的な人の動きが多くなることが想定されます。1年前も、夏に感染が増え、この時期は感染拡大に注意が必要です。
さらに、オミクロン株の中でも比較的感染力が高いとされる「BA.5」というウイルスが日本国内でも広がっていることが報告されています。
そして、ワクチン接種で獲得した免疫が、弱まっていることも考慮しておく必要があります。
このように、感染者が増加する要因が重なっているだけに、「第7波」の大きな山にならないよう、時機をのがさない対策が必要になります。
2年半の経験を踏まえて、どういった考え方に基づいて感染対策を進め、社会経済活動との両立を図るのか、選挙期間中に感染が急拡大している今こそ、国民にわかりやすく示してほしいと思います。

そして、感染拡大への対応とあわせて、次の新型ウイルスによるパンデミックなど、将来への備えも必要です。

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政府は、先月、内閣官房に感染症対策の「司令塔機能」を持つ部署を設置すること、そして感染症研究の拠点、国立感染症研究所と患者の治療にあたる国立国際医療研究センターを統合した「日本版CDC」を創設すると発表しました。
次のパンデミックに向けては、このほかに、国産のワクチンや治療薬の開発が早期にできるようにすることも必要と指摘されています。
こういった、将来に向けた体制の構築については、与党だけでなく、野党も多くの党が公約にいずれかを盛り込んでいます。

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このうち、司令塔や日本版CDCについては、岸田総理大臣が国会閉会の記者会見で表明しました。このため国会では、本格的な議論はされていません。
▽公約で示した党には、司令塔や日本版CDCをつくることで、感染症対策をどう変えていくのか。
▽公約で示していない党は、将来への備えをどう進めていくのか。
今後の日本の感染症対策の方向性にも関わるだけに、選挙戦で具体的に示すことが求められていると思います。

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また、国産のワクチンや治療薬については、日本の製薬メーカーの開発力、そして日本の科学の対応力をどう引き上げていくのか。日本は、欧米に比べて開発に遅れをとっていることからしても、政治が重要な役割を担っていると思います。

新型コロナの対策を私たちは、2年半にわたって続けてきました。これまでの経験と教訓を、「第7波ではないか」ともいわれている、今の感染拡大と長期的な感染症対策に、どう生かしていくのか。
選挙戦は終盤ですが、各党、各候補には最後まで議論を深めてほしいと思います。

(中村 幸司 解説委員)

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