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オンラインカジノの違法性と対策を解説

三輪 誠司  解説委員

インターネットを通じてギャンブルをする「オンラインカジノ」をやっているうち、依存症になる人が後を絶たないとして、依存症の人を支援する団体が、国にオンラインカジノの規制強化を求めました。賭博は刑法で禁止されていますが、インターネット上では、オンラインカジノの遊び方を教える日本語のサイトが数多くあり、SNSでは広告も目にするようになりました。現金をかけて利用すれば賭博にあたるオンラインカジノの規制をどのように強化するべきか考えます。

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オンラインカジノとは、インターネットを通じて、カジノで遊ぶようにギャンブルをするネットサービスです。利用する場合は、スマートフォンなどでカジノサイトに接続します。すると、ルーレットやカードゲームのような画面が出てきてプレイします。賭博は刑法で禁止されています。オンラインカジノに客として参加しても同じで賭博罪にあたり違法です。

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しかし、オンラインカジノの利用者は、急激に増加しています。インターネットのアクセス分析をしている会社の調べによりますと、日本国内からオンラインカジノのサイトへのアクセス数は、2018年12月には月におよそ100万回でしたが、去年の9月にはおよそ1億2000万回に及んでいると見られます。3年間で120倍です。

どうして利用者が増えているのでしょうか。

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ギャンブル依存症の人などからの相談にあたっている「ギャンブル依存症問題を考える会」には、オンラインカジノをやっているうちに、日常生活が送れなくなったという相談が相次ぐようになったといいます。代表の田中紀子さんは、コロナ禍によって、社会不安が増加したことが背景にある。そして、手軽に嫌なことを忘れようとオンラインカジノを利用する人が増えていると指摘します。

オンラインカジノの危険性について田中代表は一回あたりの時間が短いことを指摘します。例えばオンラインカジノのルーレットをする場合、現金をかけてから結果が出るまで数秒です。ルーレットを回して止まるまでの時間は短縮されているためすぐに結果が出ます。このため、次々と現金をかけていくことになります。この結果、他のギャンブルよりも依存症になるスピードが早くなるのです。また、1回の掛け金が最高で1万ドル。日本円で130万円以上にのぼるものもあります。負けた時、借金も高額になりがちです。

オンラインカジノと聞いて、自分とは関係がないと感じる人は少なくないと思います。しかし、それは日本の普通の生活にかなり近づいています。

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まずは広告です。SNSの広告やテレビのコマーシャルで、オンラインカジノの無料版で遊ぼうという内容が出てきます。無料版ならば賭博にはなりませんが、ゲームのようなつもりで利用し始め、その後金をかけるようになる人も少なくありません。もう一つは、オンラインカジノが日本語化され、掛け金も、日本で利用できるクレジットカードを通じて引き落としできることです。日本人の客が参加しやすいようにしているのです。

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依存症になってしまった40代の男性のケースも、広告が発端となっていました。コロナ禍で外出自粛となり暇な時間が増え、SNSなどを見て暇つぶしをしていました。すると、一攫千金を狙えるというオンラインカジノの広告が目に止まりました。サイトにアクセスすると、海外の法律に基づいて登録された業者のため違法性はない。無料コースがあるため体験してみようと書かれていました。無料ならば、ゲーム感覚でできると思い、やってみたといいます。

しばらく続けると、勝ちが多くなります。すると、画面に「リアルマネーでプレイしませんか」つまり、現金をかけてみようというメッセージが出てきたといいます。現金をかけると違法ですが、勝っていたこともありやり始めてしまいました。日本のクレジットカードが利用できるため、手続きは簡単だったといいます。

しかし、その後はまってしまいました。24時間365日、いつでもどこでもできるため、トイレや布団の中でもやり、自宅でリモートワークをする時は、会議中でも続けました。その結果、2年間で1000万円の借金を抱えてしまったといいます。

冒頭でもお話したとおり、日本の刑法では賭博は違法です。しかし、利用者の増加が止まりません。日本からカジノサイトに接続できなくするブロッキングをすればいいという意見もありますが、ブロッキングを安易に始めると国による言論統制や知る権利の侵害につながる危険性があるため、慎重に考えた方がいいと思います。

その前にできる対策があります。

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まず、違法であることを周知していくことです。刑法では、賭博場を開いた人は賭博場開帳等図利罪。賭博をする人は賭博罪、常習的に行っている場合は常習賭博罪、という犯罪に該当します。しかしこれは、国内で行う場合に限られます。このため、オンラインカジノ業者については、国内に拠点がない場合、規制の対象外となります。

一方、客として日本から参加した場合、賭博罪に該当します。しかし、インターネット上では、間違った情報が拡散しています。海外にあるオンラインカジノは違法ではないため、客として参加した人も違法ではないというのです。そういう間違った書き込みは、オンラインカジノへのリンクや参加方法も案内しているサイトに見られます。

こうした情報が拡散するのは、何が禁止されているのかを伝える国のメッセージが不足しているからです。デマが野放しになっていることが、オンラインカジノの利用者を増やし、依存症となる人の増加につながっている。このことを国は強く認識し、発信をしていかなければなりません。

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それとともに進めていく必要があるのが、取り締まりです。ただ課題があります。海外にあるカジノ業者への捜査が難しいことです。客側が事実関係を認めない場合、いつ、どの程度の金額のギャンブルをしたかなどの記録が手に入らず、立証が困難になるおそれがあります。こうしたことに対応するため、決済代行会社に対する検挙や調査も進めるべきだと考えます。決済代行会社は、客とオンラインカジノとを、金銭面で仲介する役割をします。日本のクレジットカードが利用できるのも、国内の決済代行会社を通じているからです。

決済代行会社は国への登録によって事業を行っていることを考えても、賭博という違法行為に事実上関与していることを見過ごすことはできません。オンラインカジノ側と一体とみなした検挙が可能か、さらに、客に関する記録をそこから収集することを検討する必要があると思います。

さらに対策が必要なのは、オンラインカジノの広告です。無料版の広告は、違法なものを宣伝しているわけではないのですが、見た人を賭博に誘い込む役割を果たしていることには違いありません。日本の法律では現金をかけると違法になるということを明確に示さずに、SNS広告やテレビのコマーシャルを流し続けて構わないのでしょうか。利用者に情報を提供せず、違法行為をするのも依存症になるのも客の自己責任として放置することは許されないと思います。アルコールや競馬の広告には、20歳になってからと記されていることを考えても、オンラインカジノに現金をかけることの違法性を大きく明記するよう、国は指導するべきです。

カジノは古くから、マフィアなどの資金源になってきた歴史があり、犯罪で稼いだ金を掛け金にすることで、マネーロンダリングの手口としても利用されてきたと言われています。依存症を生み出しやすいオンラインカジノを野放しにすることのないよう、国には毅然とした対応を求めます。

(三輪 誠司 解説委員)


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