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東京電力管内と東北電力管内に初の電力需給ひっ迫警報 電力危機はなぜ起きたのか

水野 倫之  解説委員

きょう東日本の多くの地域が電力危機に陥った。
政府は、東京電力と東北電力管内に初めて「電力需給ひっ迫警報」を出した。
その結果、きょうは電力不足による大規模な停電は回避された。
政府は東北電力管内の警報をまもなく解除の方針。ただ東電管内の警報は需給がひっ迫しているとして継続の方針。
そしてきょう停電が回避されたからといって、今後安心できるわけではない。
今後こうした危機を避けるには何が必要なのか考える。

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きょうの東日本は、寒気の影響で気温が下がり、暖房などで電力需要が増えることが予想された。これに対し、電力の供給は、先週の福島県沖の地震の影響で、東電と東北電力管内に電気を送っていた6つの火力発電所が運転を停止している影響で、大幅に不足することが想定された。

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このため政府は、昨夜9時すぎにまず東電管内に電力需給ひっ迫警報を出し、企業や一般家庭に対し、支障のない範囲でのできる限りの節電への協力を呼びかけ。

この警報は、電力供給の余力、予備率が安定供給に最低限必要とされる3%を下回る可能性がある場合に出されるもので、今回が初めてのケース。
きょうになって東北電力管内にも出した。

特に東電管内は深刻で、政府と東電は、西日本の電力会社に電力の緊急融通を依頼したほか、企業などが持つ自家発電もフル稼働するよう要請し、電力の確保に努めた。

この節電要請を受けて、暖房温度を抑えたり、電気を消すなど、節電に協力したというご家庭も多かったのではないか。

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それにもかかわらず、
電力の供給力に対する需要の割合を示す東電管内の「使用率」は午前7時台は86%だったが、9時台には97%、その後も午後2時台までほぼ100%の水準が続いた。
また東北電力管内も99%とぎりぎりの状態に。

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なぜ政府は初の緊急の節電の呼びかけをしなければならなかったのか。
それは電気は貯めることができず、需給のバランスが崩れると大規模な停電になるおそれがあるから。
電力は普段は需要と供給のバランスを取り、周波数を一定に維持して送られている。
しかしそのバランスが崩れると周波数が変化し質の悪い電気が流れることになり、発電所のタービンなどの機器が壊れるおそれが。これを防ぐために各発電所には周波数の変化を検知した場合緊急に運転を止める装置がついている。

これが一斉に作動したのが3年あまり前の北海道胆振東部地震で起きた、ブラックアウト。
地震で主力の火力発電所が止まって電力供給の半分が瞬時に失われて周波数が変化、残りの発電所も緊急停止し、ほぼ全域の停電に。

また先週の福島県沖の地震でも、震源から離れた東電管内で一時209万戸が停電。これも需給バランスが大きく崩れ、送電線でつながっている関東でも発電所の損傷のおそれがあったため、自動的に一部の発電所が運転が停止し、大規模な停電となったわけ。

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きょうはこうした事態は回避されたわけだが、実際の電力需給は綱渡りのぎりぎりの状態。
まず、政府東電は東電管内のきょうの最大需要を4800万kWと見込み、それに対して供給が4400万kWしか見込めなかったことから、企業や一般に対して400万kW分、通常より10%の節電協力を要請。
しかし実際には150万kW分、目標の3割あまりしか節電が進まず、残る250万kw分の電力をまかなう必要に迫られた。

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そこで緊急稼働させたのが揚水発電。
揚水発電は電力需要が減る夜間に余った電力を、昼間に備えてためておくシステム。
上と下に巨大な池があって夜の余っている電力で水車を回転させて下の池にある水を上の池に運んでためておく。

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そして需要が高まる昼間に上の池から水を落として発電するもので、いわば巨大な電池。
その電池を使って持ちこたえようとしましたが、なかなか節電が進まなかった。
そこで萩生田経済産業大臣が午後緊急に会見し、午後3時から8時までの間さらに5%、200万kW分の節電の上積みを要請。その後節電が一定程度進んだため、なんとか揚水発電の電力でしのぐことができ、ぎりぎりのところで大規模停電という危機が回避できた。

ただこれで安心というわけにはいかない。
というのも地震の影響で発電所の設備が破損しているため停止はこの先数週間以上は続く見通し。3月も後半とはいえ寒気が戻れば、再び電力危機に陥ることも予想される。
日中の時間帯に停電すれば、交通障害や病院での治療などにも影響が出るおそれもあり、何としても避けなければ。

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ではこうした危機を防ぐにはどうしたらよいのか。
まずは、政府がもっと早く「電力需給ひっ迫警報」を出すことが必要。
というのも、過去の電力危機を受けて、政府は需給ひっ迫が予想される時には、前日の午後6時頃をめどに「需給ひっ迫警報」を出して、節電を呼び掛ける方針を決めていた。
企業が節電する場合、どの工場で節電するのかあらかじめ決めるなど準備の時間が必要だから。

しかし今回政府が「電力需給ひっ迫警報」を出したのはきのうの夜9時過ぎ。
事前の想定より3時間余り遅くなった。しかも祝日の夜だったこともあって、警報が企業や一般に十分伝わらなかった可能性がある。
このため企業の中には節電の準備が十分できなかったところもあるとみられるほか、危機感も共有されていなかったため、一般の節電も十分ではなく、目標通りに需要を下げることができなかった可能性。

また大規模停電を回避する方法として、東日本大震災直後のように、あらかじめ時間と地域を決めて停電させる計画停電を行う方法もある。しかし一般や企業活動に大きな影響を与えるため、かなり余裕をもって行う必要があり、今回は警報の発表自体が遅れたため、計画停電を準備する余裕もなかった。

政府は、きょうの天気の厳しさを見極めるのに時間を要したと説明するが、最悪の事態を避けるためにはこうした警報は前広に出していくのが鉄則。

いずれにしろ今回、警報を出すタイミングや節電のお願いの方法などの対応に問題はなかったのかどうか、政府と電力会社は様々なデータを分析し、検証して今後にいかしていかなければならない。

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さらには長期的な課題もある。
今回西日本では電力にある程度の余裕があった。
しかし東日本への電力融通は最大210万kW分しか行えない。
東日本と西日本では周波数が違い、その変換設備の容量に限りがあるから。
これを増やすというのが東日本大震災の教訓で、去年90万kW分増強され、2027年度までにさらに90万kW分増強することになってはいる。しかし今回のような危機を避けるためにもさらなる増強が必要になってくるのではないかと思う。もちろん巨額の費用負担をどうするのかといった問題はあるが、長期的な課題として今後検討していく必要があると思う。

最後に。大規模停電を防ぐには一般家庭の協力も不可欠。暖房の設定温度や照明の使い方などこの際どうしたら無理なく節電できるのか私たちも普段から考えておくようにしたいと思う。

(水野 倫之 解説委員)

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