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コロナ感染急拡大 受験生の不安・孤立の解消を

二宮 徹  解説委員

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本格的な入試シーズンを迎えました。オミクロン株の感染拡大に加え、先月の大学入学共通テストで受験生らが切り付けられる事件もあり、受験生の不安は例年以上に大きくなっています。
それに、学校内や友人どうしの交流を控える生活が続き、孤立を感じている子どもや、不合格となった受験生へのケアも心配されます。
そこで、コロナ禍の入試に求められる対応について考えます。

<共通テストで相次いだ混乱>
先月15日の大学入学共通テスト初日。今年の入試シーズンは、衝撃的な事件で始まりました。
会場となった東京大学の前で、受験生ら3人が切り付けられ、名古屋市の私立高校2年の少年が殺人未遂の疑いで逮捕されました。2日目にはトンガの噴火による津波が日本に押し寄せました。津波の警報や注意報が出され、岩手県の1会場で試験が中止されました。
文部科学省は、会場内外の警備や巡回を強化するよう通知し、入試の安全確保を図っています。

<感染急拡大 去年と桁違いの新規感染者>

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こうして始まった今年の入試シーズン。受験生の最大の不安はオミクロン株の感染急拡大です。
全国の新規感染者数の推移です。去年の入試シーズン、1月から3月は第3波の最中でした。
年明けに東京などに緊急事態宣言が出され、面接の中止など、入試を変更する学校が相次ぎました。
しかし、第3波は1月上旬のおよそ8000人をピークに減少し、入試が本格化した2月には1000人を下回る日もありました。

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これに今年、きのうまでの感染者数を重ねます。年明けこそ去年より少なかったものの急激に増え、きょう2日は過去最多の9万5000人近く、去年の同じ日、2300人余りのおよそ40倍にもなっています。

<受験機会と救済措置>

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感染が急激に広がる中、文部科学省や入試を行う学校側も対応に苦心しています。
文部科学省は、学校側に対して、追試や別日程への振替を設定して受験機会を増やすほか、追試も受けられない受験生には、別の形の試験や調査書などで判定する救済措置を設けるよう求めています。
すでに、大学や公立高校は、ほとんどが追試や振替の日程を設定しています。
一方、私立の中学や高校の中には、試験問題を準備できない、受験者が少ないなどで追試を行わない学校もあります。
志望校に追試がなければ、体調が悪くても無理をして受ける受験生が出てくることも考えられます。
試験会場で感染や不安を広げないためにも、追試や救済措置を増やす必要があります。
去年、沖縄県は、県立高校を追試も受けられない生徒が出た場合に備えて、特例の追試を4月の入学式後に追加しました。
このように、感染状況によっては、4月の追試も含め、受験機会を確保してほしいと思います。

<追試をめぐる課題と対応策>

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ただし、追試を行うには、さまざまな課題があります。
まずは、このあと、追試の対象者が、去年より大幅に増える可能性があります。
先月の共通テストで、感染や濃厚接触によって追試の対象となった受験生は464人。去年のおよそ2倍です。
その後、半月の間に、感染は全国でさらに広がりました。
このため文部科学省は、今後の個別試験では、別室で受けられる濃厚接触者の条件を緩和しました。
これまでは行政のPCR検査の陰性証明が必要でしたが、保健所業務のひっ迫で検査が受けられない受験生は、当日無症状で、公共交通機関を使用しないことで受けられるようにしました。
それでも、感染拡大が続くことしは、去年の何倍、何十倍もの受験生が追試を受けることになりかねません。
学校側は、会場や試験監督などが不足して混乱しないよう、十分な対応をしてほしいと思います。

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それに、追試はそれぞれの学校が各科目の試験問題を新たに作る必要があります。
過去の試験問題は受験対策で出回っているため使いまわすわけにはいきません。
また、学校が求める学力を適切に判定できる試験問題を作るには、多くの時間と労力がかかります。
こうした中、神奈川県の私立中学と高校でつくる協会は、今月21日に中学入試の「共通追試」を初めて行います。問題作成と採点は協会が行ない、加盟する中学校60校のうち、24校が利用する予定です。
これは、協力しあって多くの学校で追試を行う工夫として、他の都道府県や団体でも大いに参考になると思います。

<救済措置にも課題>

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また、追試も受けられなかった場合の救済措置にも課題があります。
文部科学省は、大学入試では、共通テストとその追試を受けられなかった場合は個別試験、個別試験とその追試を受けられなかった場合は1月に受けた共通テストの成績で判定するよう求めています。
また、大学で両方とも受験できなかった場合や、中学・高校の個別試験や追試を受けられなかった場合は、
面接での口頭試問や調査書で判定するなど、できるだけ柔軟な対応を求めています。
しかし、こうした救済措置は、受験生から「面接のみや受験科目が少ないなど、感染者が有利ではないか?」と公平性への疑問も出ています。
これに対して、文部科学省は、「医師の診断書や保健所名の申告が必要で、学校側にも慎重かつ厳格な判定を求める」としています。
また、「救済措置で合格者がいれば、通常受験の合格枠が減るのか」という疑問については、「募集定員の枠とは別に合否判定できる」と答えています。
学校側は、こうした追試や救済措置への不安や心配に対しても適切に対応してほしいと思います。

<コロナ禍で増す孤立感>

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そして、今、受験生は、感染への不安に加え、孤立感も増しています。
感染拡大に伴い、休校や学級閉鎖になる学校が増え、オンライン授業を中心にする学校も多くあります。コロナウイルスの感染が始まって、およそ2年。教師や友達と交流する機会が減るなど、窮屈な生活が続いていることは、子どもたちの心にも影響を及ぼしています。
共通テスト初日に、受験生らに切りつけた生徒が通う高校は、事件を謝罪するコメントの中で、「学校行事の大部分が中止となって、勉学だけが高校生活のすべてではないというメッセージが届かず、孤立感を深めている生徒がいるかもしれない」と述べました。
この時期、受験生は志望校の入試や合格発表を前に、いっそう気持ちが不安定になっています。
特に、志望校に合格できず、人生を悲観していないかなど、合格発表後の生徒へのケアは欠かせません。
学校や教育委員会には、教員やスクールカウンセラーによる相談、家庭と連携した観察や連絡など、あらゆる手段で子どもたちの様子を見守ってほしいと思います。

入試シーズンは3月末まで、あと2か月続きます。受験生や家族、学校関係者にとっては、気の休まらない、大変な日々でしょう。受験生は、体調管理に気を付けて過ごし、落ち着いて試験に臨んでください。

(二宮 徹 解説委員)

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