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阪神・淡路大震災27年~ボランティア 新たな課題

松本 浩司  解説委員

阪神・淡路大震災から27年になりましたが、この災害は「ボランティア元年」とも呼ばれ、災害ボランティアが広がる大きなきっかけになりました。今ではさまざまな専門性を持つボランティア団体が被災地で活躍し、復興に欠かせない存在になっていますが、新たな課題も浮かび上がっています。

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▼存在感を増すボランティア
▼コーディネート機能と運営の“要”となる人材の必要性
▼行政の支援は十分なのか、3点を考えていきます。

【存在感を増すボランティア】

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ボランティアはどのように歩み、いまどんな課題があるのでしょうか。
阪神・淡路大震災は137万人の市民がボランティアに参加し被災者支援の新しい境地を切り開きましたが統一的な窓口と調整する仕組みが課題になりました。そこで新潟県中越地震以降、社会福祉協議会が「災害ボランティアセンター」を開設し個人ボランティアの窓口となる形が定着しました。
その頃から専門性を持つNPOやNGOなどの災害ボランティ団体が次々と発足。
東日本大震災では大きな力を発揮しましたが、地域によって活動の偏りが生じ、支援の「もれ」や「むら」が指摘されました。そこで震災後、ボランティア団体が集まって全国ネットワーク「JVOAD」が作られました。全国の団体の活動のコーディネート機能を担うようになり、熊本地震ではボランティアと行政による情報共有会議が成果をあげました。

このようにボランティアは存在感を増してきましたが、西日本豪雨や台風19号など大きな災害が毎年発生し、巨大災害も想定されるなか、新たに、ふたつの課題が強く認識されるようになっています。

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▼地域ごとに、ボランティア団体を調整し行政と連携するコーディネート機能がとても重要だということ

▼大災害に対応するために活動の裾野を広げ、避難所運営などの要となる人材を増やさなければならない、ということ。

ひとつずつ見ていきます。

【地域ごとのコーディネート機能】

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3年前の台風19号のとき千曲川の氾濫で大きな被害が出た長野市では、経験豊富なボランティア団体が災害廃棄物を搬出するスキームを提案、運営しました。ボランティアと自衛隊、行政の役割分担でたいへん効率よく作業が進み、協力のモデルケースとなりました。

かつてはボランティア団体は行政からの認知度が低く避難所で支援活動を始めたところ役場職員から「何をしているのか」と咎められることもありました。その頃からすると隔世の感がありますが、このような連携が取れたのは災害前に地元にボランティア団体をコーディネートする組織が作られ、県の防災会議のメンバーになって協力態勢ができていたからです。

同じ年の台風15号では千葉県で暴風のため多くの家の屋根が壊れブルーシートによる応急措置が求められました。ブルーシートをしっかりと張るには技術が必要で、現場で経験を積んできたNPOが自衛隊や消防を指導し、分担をして5000件の住宅に敷設しました。ボランティア団体が培ってきた専門性への理解と信頼が高まったことを示しました。

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ただ地元のNPOの間では大きな反省点もありました。長野のケースと違って災害前にコーディネートする組織が作られていなかったため立ち上がりが遅れたという反省です。

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このように災害時、全国から集まる専門ボランティア団体に速やかに適材適所で活動してもらい、行政との協力態勢を整えるために平時から地域ごとに「中間支援組織」と呼ばれるコーディネート役がいて準備をしておく必要性が災害を経験した現場ほど強く認識されるようになったのです。

そこで全国ネットワークのJVOADは、都道府県ごとに「中間支援組織」を立ち上げてもらおうと先月、基金を発足させました。具体的には各県にあるNPO団体やそれを取りまとめるセンターなどが事務局になり、平時から団体同士や行政、企業とのネットワークづくりを進めておくもので、その運営資金を基金から拠出しようという狙いです。JVOADは市民や企業からの支援拡大に取り組んでいます。一方、自治体の積極的な関与も求められていると思います。

【運営の要となる人材の育成】
いまボランティアが直面しているもうひとつの課題は活動の裾野を広げ、現場での活動の「要」となる人材を増やすことです。

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特に問題になるのは避難所です。例えば南海トラフ巨大地震が起こると避難所に最大430万人に行くと考えられていて、行政や現在のNPOなどだけで運営するのは不可能で、地域で担ってもらう必要があります。運営のノウハウを身につけ要として活動できる人を増やさなければならないのです。

人材をどうやって確保するのか、内閣府が検討会を設けて議論しています。
この中では避難所運営についての研修制度や資格を設けることや、担い手として自治会組織のほか災害支援の実績のある団体などに協力を求めることが検討されています。

【行政の支援は十分なのか】

見てきたようにボランティアは活動の幅を広げ、行政からも頼られるようになって存在感を増してきました。ただ行政がボランティアを支える仕組みは大きくは変わっておらず、「ボランティアの善意に頼りすぎているのではないか」という指摘も出ています。

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ボランティアの先進地と言われる▼ドイツではボランティアに対して国が宿泊費や食費、手当を支給し、▼フランスでも手当を支給し、▼イタリアは交通費などの実費を支給していて、いずれもけがをした場合などの補償を国が負担する仕組みを持っています。
さらに日本では企業のボランティア休暇の導入や利用が低迷していますが、イタリアでは社員が有給休暇をとってボランティアに参加した場合、国が企業に給与分を補填しています。被災者の支援は国の責任で、行政の手の届かないところ、行政の対応がなじまないところを市民のボランティアに担ってもらう、という考え方がベースにあるからです。

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国内外のNPOを研究している独立行政法人労働政策研究・研修機構の小野晶子(あきこ)副統括研究員は「先進地と言われる国も災害での失敗を繰り返したうえで市民の自発性を尊重しつつ、NPOや企業を巻き込んだシステムを構築してきた。日本では市民のボランティアへの意欲は高いがその意思まとめるシステムが不十分で、国の関わり方の見直しが求められている」と話しています。

【まとめ】
阪神・淡路大震災から27年。ボランティアは自衛隊や消防など公的機関と同様、被災地の復興に欠かせない担い手になり、さらに期待が寄せられています。しかしボランティアの自主性を重んじながら活動を支援をする態勢は十分なのか、行政との役割分担は今のままでよいのか、という議論はほとんど行われていません。さまざまな意見があるからこそ災害時の支えあいのあり方をあらためて考える必要があると思います。

(松本浩司解説委員)

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