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新型コロナ オミクロン株拡大で第6波へ~いまこそ教訓を生かせ

牛田 正史  解説委員

新型コロナウイルスの感染者が急増しています。
「オミクロン株」の市中感染が各地に広がり、沖縄などに、まん延防止等重点措置が適用される見通しとなりました。
第6波が現実のものとなりつつある今、私たちは過去の教訓を生かし、対策を強める時に来ています。

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【オミクロン株の広がりは】

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全国の1日の新規感染者数は、12月のはじめは100人あまりでしたが、年末年始にかけて急激に増加し、1月6日は4000人を超えました。再び感染の大きな波が押し寄せてきています。
沖縄県では、1日で900人を超え、去年夏の第5波をすでに上回っています、
政府は沖縄に加え広島と山口のあわせて3県に、まん延防止等重点措置を適用する方針を打ち出し、事態は大きく動いています。
感染が急拡大する大きな要因はオミクロン株です。検疫で初めて感染者が見つかってから1か月あまりで、市中感染が各地に広がりました。
6日の午後7時までに40の都道府県でオミクロン株の感染者が確認されていて、このうち市中感染、あるいはその可能性があるところは、東京や大阪など22の都府県にのぼっています。

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また感染者の急増は、オミクロン株のほかに、別の要因も指摘されています。その1つは人出や人の移動の増加です。
東京の主要な繁華街の夜間滞留人口は、去年9月の緊急事態宣言の解除ごろから人出が大きく増加。特に12月下旬は去年1年を通して、最も多くなりました。
この状況の中でオミクロン株が広がると、今後、感染者が爆発的に増えると話す保健所の関係者もいます。
多人数で飲食をして感染が広がるケースも出ています。私たち1人1人がもう一度、感染対策を徹底していく時に来ています。

【「広さ」と「速さ」を想定した対策を】
この感染対策、それはオミクロン株の特徴を踏まえたものでなくてはなりません。それは「感染者の多さ」と「拡大スピードの速さ」です。

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感染者数では、アメリカで1日の人数が初めて100万人を超え、イギリスやフランスでも20万人を超えて過去最多となっています。
日本でも第5波のピークだった1日2万5千人を大きく上回る事態を想定して、対策を進めるべきです。
そして感染拡大のスピード。
イギリスや南アフリカの流行地域では、累計の感染者が2倍になるまでの期間、いわゆる「倍加時間」が、2日から3日ほどという報告もあり、これまでに類を見ないスピードとなっています。
さらに注意すべきなのは、ウイルスの潜伏期間がデルタ株より短いと指摘されている点です。つまり、感染してから、ウイルスを人に移すまでの時間が短い可能性もあるわけです。それだけ広がりも早く、国や自治体などは対策を迅速に行っていなかければなりません。

【検査の積極活用を】
そこで重要になるのは、まず検査です。
検査が遅れると感染の爆発的な拡大につながることを、私たちは過去の経験で学びました。特にオミクロン株は広がりが早いので、速やかな検査がより重要になってきます。

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現在、オミクロン株の感染が確認された地域などは、無症状の人も対象にした無料の検査を自治体などが始めています。不安がある人は、まず検査を受けることが大切です。
また今後、検査を希望する人が大幅に増えることも予想されます。すでに希望者が殺到し列をなしている地域も出てきています。国や自治体は、無料検査が受けられる場所を、必要に応じてさらに拡充していくべきだと思います。
そして、私たち自身が検査する手段としては、去年9月から薬局で販売されるようになった抗原検査キットもあります。こちらも陽性者を素早く見つけるために有効とされています。
ただ、この抗原検査キットは、薬事承認を受けていない製品が「研究用」と称して、ネットの通販やドラッグストアで多数売られています。
国は「性能が確認されておらず、薬局で対面販売されている薬事承認された検査キットを選んでほしい」と呼び掛けています。

一方、PCRや抗原検査は非常に重要な手段ですが、一方で、感染していても結果が「陰性」となることがあります。たとえ陰性であっても感染対策は決して緩めず、体調不良の場合は速やかに医療機関に相談・受診することが大切です。

【保健所の体制強化と外部連携を】
そして、保健所の体制も速やかな強化が必要となります。

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濃厚接触者の特定や入院調整、それに自宅療養者の健康観察などを担う保健所は、感染者数が急増すると、真っ先に業務がひっ迫します。
国は去年12月、第6波に備えて、保健所の人員体制を最大で平時の3倍にするという計画を発表しましたが、それでも現場からは、「職員が足りなくなるおそれはある」という声も聞かれます。
そこで体制の拡大とともに「外部機関との連携」が、これまで以上に重要になります。
特に自宅療養者の健康観察や相談業務です。
国は今週、オミクロン株の感染者でも一定の条件で、自宅での療養を可能にする通知を出しました。このため、今後、自宅療養者が大きく増えそうです。
そこで普段から地域に住む高齢者などを支援している「訪問看護ステーション」や「在宅診療医」、それに「薬局」などの協力がすぐにでも必要となります。
誰がどんな持病を持ち、重症化のリスクが高いのかを把握しているため、より迅速にフォローでき、自宅療養者の孤立を防ぐことにもつながります。
こうした連携はすでに多くの地域で始まっていますが、感染力の強いオミクロン株は自宅療養者の数が、第5波を超える恐れも十分あるため、さらなる連携の拡大も、早いうちから検討してもらいたいと思います。

【対策③医療体制の整備】

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次に医療体制です。オミクロン株の場合、イギリスの保健当局が、入院に至るリスクはデルタ株の3分の1と言うように、重症化リスクが低いという見方が強まっていますが、感染が拡大すれば、患者が増えるおそれは十分あります。
現にアメリカでは新たに入院する人が、1日およそ1万5000人にのぼっています。
入院患者の数が過去最多となって非常事態宣言を出した州も出てきています。
この医療体制、国内の第5波では多くの教訓を残しました。特に「人の問題」です。
ベッドが用意できても、医師や看護師がいないという事態が相次ぎました。
ピーク時のベッド稼働率は68%にとどまり、稼働していない病床は「幽霊病床」とも言われました。

これを受けて、国は去年12月、第6波に向けた医療体制の計画を公表しました。

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最大で夏の第5波のピーク時よりも3割多い、およそ3万7000人の患者を受け入れる体制を確保したとしています。
人手についても必要な医師や看護師を確保するメドは立っているとしていますが、あくまでも計画であり、肝心なのは実行性です。計画通り進むのか、定期的なチェックや見直しが不可欠です。
さらに、体制を拡大するには一定の期間を要します。
厚生労働省によりますと、一般診療の患者をほかに移してベッドを用意し、新型コロナの患者を受け入れるまでに、2週間から3週間ほどかかるケースもあるといいます。
このため、シミュレーションなどを基にした、体制拡大の早めの判断が欠かせません。

【最悪の事態を想定して準備を】
新型コロナウイルスは、これまでに何度も、私たちの想定を超える事態を引き起こしてきました。だからこそ、最悪のことを想定し、準備を進めておかなければなりません。
一方で私たちはワクチンや治療薬、それに過去の教訓という大きな武器も手に入れています。それらを最大限に活用して、今一度、総力戦でコロナに立ち向かう時が来ています。

(牛田 正史 解説委員)

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