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臨時国会開会 論戦の焦点は

権藤 敏範  解説委員

衆議院選挙後、初めての臨時国会が6日、召集されました。岸田政権が発足して2か月、本格的な国会論戦に臨むのは初めてでコロナ対応や経済政策でどう説明を尽くすのか。新体制となった立憲民主党や日本維新の会など野党側はどのように対峙していくのか。今国会の論戦の焦点を考えます。

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【新型コロナ対応】

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今国会の会期は今月21日までの16日間。その最大の焦点は新型コロナへの対応です。ことし夏の「第5派」が収束して以降、新たな感染者の数は低い水準が続いていますが、国会開会に先立つ先月末、新たな変異ウイルス「オミクロン株」の感染が日本でも初めて確認され状況は一変しました。オミクロン株は従来株より感染力が強い可能性が指摘されており、政府はすべての国や地域を対象に外国人の新規入国を原則、停止するなど厳しい水際対策に踏み切りました。これについて岸田総理は所信表明演説で、「慎重すぎるのではないかとの批判は私がすべて負う覚悟だ」と述べ、今後も「細心かつ慎重に」対応していく考えを示しました。最悪の事態を想定して予防的な対策を講じ「やりすぎ」という批判は甘んじて受ける。こうした姿勢を示す背景には、菅前政権が感染拡大の兆候を過小評価して対応が後手に回ったという批判をあびた教訓もあったのでしょう。

ただ、先手を打とうとして混乱を招いた事態もありました。国土交通省は、先月末、航空会社に日本に到着する国際線の新たな予約を停止するよう要請。予約を取っていない海外の日本人が帰国できなくなるとして、結局、わずか3日で要請を取り下げました。国土交通省航空局が独断で行ったということですが、野党は、「政府の入国規制が混乱している」と批判を強めており、今後、政府内で情報を一層共有していけるかということも問われます。

一方、感染対策の要となるワクチンは、今月1日から医療従事者を対象に3回目の接種が始まりました。政府は2回目との間隔を原則8か月以上としていますが、一部の自治体などからは6か月への短縮を求める要望も出ており、岸田総理は演説で、「できるかぎり前倒しする」と打ち出しました。ただ、間隔を8か月としたのは自治体の準備期間などを考慮したもので、前倒しで態勢が整うのか、3回目接種のワクチン確保の見通しを踏まえ優先順位を見直す必要はないのか、課題も残ります。

【今年度の補正予算案】

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さて、コロナで疲弊した経済の立て直しも喫緊の課題です。国会ではその対策の裏付けとなる今年度の補正予算案が審議されます。一般会計の総額は35兆円を超え補正予算としては過去最大で、▼医療機関の病床確保のための交付金や、▼飲食店の時短営業への協力金のほか、▼18歳以下への10万円相当の給付も盛り込まれました。
ただ、財源の6割を追加の国債発行で賄い、国の財政が一段と悪化する中、衆議院選挙で与党が掲げた看板政策が次々と盛り込まれた印象で、野党からは、「より影響を受けた人や企業への支援を充実させるべきだ」との指摘も聞かれます。対策の中身でも、例えば18歳以下への10万円相当の給付を現金とクーポンに分けることで、事務経費が現金で一括給付するより900億円も多くかかるとして批判も出ています。
また、来年夏には参議院選挙も控えていることから、来年度の当初予算でも与党の歳出圧力がさらに強まりそうです。野党側も当面の対策の財源を国債に頼る考え方に大きな違いはありません。将来世代に負担を先送りしないためにもどのように財政再建を果たしていくのか、与野党双方が国会論戦で示していくことも必要です。

【立憲民主党】

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一方、野党側は、数の上で優位な与党にどう対峙していくのでしょうか。
野党第1党の立憲民主党は泉新代表のもとで体制を一新。泉氏は幹事長に西村智奈美氏を起用するなど代表選挙で争った3人を党の要職に据え党内融和と挙党態勢をアピールしました。そして、執行役員の半数を女性にするとともに、「批判ばかり、抵抗ばかり」というイメージを払拭し、「政策立案型」政党への刷新を目指しています。
ただ、政権に誤りや疑惑があれば厳しく質すのは野党の重要な役割で行政監視が後退するようなことがあってはなりません。また、野党第1党には政権の受け皿になることも期待されます。そのために今国会で何を取り上げ、何を示すのかが問われます。

【日本維新の会】

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「第3極」として衆議院選挙で大きく議席を伸ばした日本維新の会の動向にも注目が集まります。新しい共同代表に馬場前幹事長を充て、後任の幹事長など党三役にはいずれも当選1回から2回で40代以下の若手を抜擢しました。
自ら身を切る改革を掲げ、国会議員に毎月100万円支払われる、いわゆる文書交通費について、10月31日の衆議院選挙で初当選した議員らに在任日数が1日にもかかわらず1か月分が全額支給されていることを、国民の理解が得られないといち早く指摘しました。ただ、文書交通費の見直しで、日割りでの支給に改める点では与野党の足並みがそろっていましたが、維新や立憲民主党が使いみちを公開するように求め、調整が難航。今国会での法改正は見通せていません。

【憲法改正】
ここまで見てきたように、今国会では、自民・公明の与党、野党のうち立憲民主党や共産党などと、そのどちらとも隔たりのある日本維新の会や国民民主党の3極構造になり、各党がどのような距離感を保つのかも焦点です。

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例えば、今後、憲法改正に向けた議論が進展するのか。憲法改正を党是とする自民党は、岸田総理が、「精力的に取り組む」と述べていますし、維新の松井代表は、参議院選挙で憲法改正を争点化する姿勢を打ち出しました。一方、立憲民主党の泉代表も必要な議論は行うとしていますが、憲法改正を目的とすることには否定的な立場で対応が分かれます。

【参議院選挙】

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また、与野党ともに意識しているのが来年夏の参議院選挙で、全国に32ある1人区が勝敗を左右するとされています。   
与党内では、野党連携が進展すれば「厳しい戦いになる」との見方が大勢で、自民党は幹部が全国の1人区を訪れるなどテコ入れを図っています。
一方、野党側は、候補が複数立てば与党を利するのは明らかで、立憲民主党と共産党の連携がどうなるのか、急速に距離を縮める日本維新の会と国民民主党は選挙でも連携するのか、野党各党がどこまで協力できて何ができないかが問われます。

【まとめ】
岸田総理は所信表明演説で、「信頼と共感を得られる丁寧で寛容な政治を進める」と強調しました。それには与党で相次いだ政治とカネの問題など政権に都合の悪いことでも包み隠さず説明し国民の理解と納得を得る努力が必要です。一方、野党側にも建設的な議論をしかけ政治に緊張感を取り戻すとりくみが求められます。
今国会は16日間とは言え、各党が新しい体制で臨む半年ぶりの本格的な論戦の舞台です。議論のあり方や内容に変化があるのか、かみ合った論戦になるのか、そして、それが国民の期待に応えるものなのか、与野党双方に国民の厳しい目が注がれていることも指摘しておきたいと思います。

(権藤 敏範 解説委員)

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