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新型コロナウイルス オミクロン株 今だからできる対策

中村 幸司  解説委員

新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」によって、世界中に不安が広がっています。日本でも、2021年12月1日の時点で空港の検疫でオミクロン株の感染者が2人確認されました。日本には、新規感染者が少なくなっている今だからこそ、できる対策があると考えられます。今回は、オミクロン株の対策をどう進めたらいいのか考えます。

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解説のポイントです。
▽オミクロン株は、どのような特徴を持つウイルスなのか、
▽日本の対策で求められること、
▽過去、日本で感染が拡大したときの教訓をどう生かすのか、
こういった点をみていきます。

日本ではこれまでに、アフリカ南部のナミビアと、南米ペルーから成田空港に到着した男性2人がオミクロン株に感染していることが確認されました。同じ航空機に乗っていた合わせておよそ200人については、いずれも検査結果は陰性です。厚生労働省は、14日間、宿泊施設などで待機するよう求め、健康状態を確認することにしています。

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オミクロン株は、12月1日午後10時半時点のNHKのまとめで、日本を含め、世界の25の国と地域で確認されています。
このうち、これま、ワクチンの効果で重症化が抑えられているとして規制を緩和してきたイギリスは、人口の大半を占めるイングランドで、公共交通機関などでのマスク着用を再び義務付けました。
世界各国が危機感をもって、感染対策の強化を進めています。

オミクロン株には、これまでになく、多くの変異があります。

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ウイルスの遺伝情報に変異が起こると、ウイルスの特定の部分の形、あるいは性質が変化することがあります。オミクロン株は、特にウイルスの特徴に大きく関係する突起の部分の変異がおよそ30か所と多くあります。

変異によって、感染力はどうなるのか。

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ウイルスは、ヒトの細胞にくっついて入り込み、増殖を繰り返します。

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オミクロン株は、変異によって突起の部分が変化しています。これにより、ヒトの細胞にくっつきやすくなり、さらにヒトの細胞の中に入り込みやすくなっている可能性があるとされています。このため、感染しやすくなる、つまり感染力が強くなっているのではないかと指摘されています。

ワクチンの効果はどうでしょうか。

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ワクチンを接種した人の体の中には、抗体ができます。抗体は、ウイルスの突起を認識して感染を邪魔しますが、突起が変化しているので、抗体が認識しづらくなり、ワクチンの効果が低下するのではないかと考えられています。

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オミクロン株は、感染力やワクチンの効果に関係するとみられる変異がいくつも重なっています。この点が、専門家や各国政府が危機感を抱く大きな理由とみられます。
もう一つ、懸念されていること。それは、より重症化しやすいウイルスに変わったのではないかという点です。ただ、ウイルスの遺伝情報のどの部分が変異すると重症化しやすくなるのか、その関係は良くわかっていません。オミクロン株が、これまでのウイルスより重症化しやすいのかどうかは、現在のところ不明です。

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感染力については、南アフリカの一部の地域で、感染者のウイルスがそれまでのデルタ株からオミクロン株に置き換わってきたとされています。これは、デルタ株よりオミクロン株の方が、感染力が強い可能性を示唆しています。ただ、このデータに関しては、「偏りがあるかもしれないので注意が必要だ」という指摘もあります。
一方、ワクチンについては、仮に変異によって効果が下がったとしても、「効果が全くなくなることはない」と専門家は話しています。
オミクロン株については、まだわかっていないことが多くあります。ただ、日本も各国も、ワクチン接種を軸に社会経済活動の再開を考えてきただけに、ワクチンの効果があまり変わらないのか、あるいは大きく低下するのか、これが今後の焦点の一つです。

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近く明らかになるとみられるワクチンがオミクロン株に反応するかどうかの分析などから、詳しい性質を解明することが急務となっています。

では、日本はどのような対策を進めていく必要があるのでしょうか。

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ひとつは、水際対策の強化です。政府は、11月30日から、世界のすべての国や地域を対象に、外国人の新規入国の原則停止に踏み切りました。在留資格を持つ外国人の再入国は、一部について、順次停止を決めました。また日本人の帰国も制限を強化しました。

もう一つは、オミクロン株のウイルスの「封じ込め」です。

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世界の一部の国に広がり始めている状況を見ると、症状がないまま、すでに日本に入っていることも考えられます。このため、新型コロナの検査で陽性になった人について、感染したウイルスがオミクロン株なのかどうか調べることが大切です。あわせて、その感染者の周辺の濃厚接触者についても、検査を行い、オミクロン株と確認された場合、それ以上広がらないように、速やかに封じ込めができるようにすることが必要です。

この対策を進める上で、過去に、感染が拡大したときの教訓を生かさなければなりません。

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国立感染症研究所の病原体ゲノム解析研究センターがウイルスのゲノム情報をもとに行った詳細な分析があります。1日の全国の新規感染者が数十人だった2020年6月、東京でヨーロッパ系統のウイルスに感染した1人あるいは1グループを起点に、そのウイルスが全国に広がったことが分かりました。これが、その後の第2波につながりました。

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もう一つ、デルタ株が国内に入ってきた、2021年の春、デルタ株の広がりは全国で数か所ありましたが、多くは間もなく感染が途絶えました。しかし、このうちの1か所の1人あるいは1グループのデルタ株が、5月中旬以降、首都圏を中心に一気に広がりました。これが、デルタ株の全国規模の感染拡大に発展したと分析されています。

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感染者が1人ないし1グループであっても、感染の継続を許すと、それが全国に広がってしまうのです。

この教訓を考えると、オミクロン株の感染者がみつかったとき、感染が小規模の段階で封じ込めができるかどうかが、カギになります。必要なのは、現在のように新規感染者の数が抑えられている状況を維持して、封じ込めをしやすくすることだと考えます。

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そうできれば、国内でオミクロン株の感染が広がる時期を遅らせ、時間的余裕が作れます。このあいだに、今後、明らかになるオミクロン株の特徴にあわせた対策づくりも可能になります。例えば、感染力が強いということであれば、人と人の距離を広くあける、収容人数の制限を見直すといったこと。重症化しやすいということなら、重症や中等症用のベッドの数など医療提供体制の再検討といったことがあげられます。

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そうした対策で、感染者数のピークを下げることができれば、医療のひっ迫のリスクを抑えることにもつながると考えます。

そのために私たちができること、それは手洗いやマスク、密になる状況を極力避けるといった感染対策の基本を続けることになります。
感染者の数が減少し、政府は、徐々に社会経済活動の再開を進めてきましたが、オミクロン株の感染力やワクチンの効果によっては、見直しが必要になります。
12月に入って、これから会合や人の移動が増える年末年始に向けて、感染のリスクが高まる時期とも重なります。比較的感染者数が少ない状況を維持していくことが、これまで以上に重要になっていることを認識して、行動することが求められています。

(中村 幸司 解説委員)


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