全国ほとんどの学校で2学期が始まる中、緊急事態宣言が19の都道府県で延長されました。学校現場は感染対策と学びを両立させるため、短縮授業やオンライン授業など、臨時の対応に苦心しています。
学校の現状とともに、子どもたちの学びを確保するにはどうすればよいかを考えます。
<休校や短縮授業など相次ぐ>
全国のほとんどの小中学校や高校では、先月下旬からきょうまでに2学期が始まりました。通常通りの授業という学校がある一方で、感染した子どもが複数いるなど、休校や学級閉鎖にしている学校もあります。
文部科学省は引き続き、全国一律の休校などは求めない方針で、今月1日時点での対応を都道府県や市区町村の教育委員会に聞いたところ、夏休みの延長や休校にした、または予定とした自治体は、小中学校で12~13%、高校で19%でした。また、短縮授業や分散登校にした自治体は、小中学校がともに23%、高校で34%でした。
今後も、感染状況によって、休校が増えたり、短縮授業が長引いたりすることが心配されます。
<オンライン対応は?>
こうした中、感染拡大を防ぎながら、学びを守るために広がっているのがオンライン授業です。
国の政策で、ほとんどの小中学校で1人1台支給されたタブレットなどの情報端末を持ち帰り、自宅と教室をつないで授業を受けます。しかし、休校や延長した夏休みに、オンラインでやり取りしながら指導をした自治体は、小中高いずれ3割前後にとどまったのに対し、これまでのようなプリントや教科書での学習が半数以上を占めました。こうしたことから、夏休み後半になって急速に広がった感染に、オンライン授業の準備が間に合わなかった地域や学校も多いと見られます。
オンライン授業は、学びを確保しながら、教員が子どもたちの様子を目で確認できる利点があります。
まだ対応できていない自治体や学校は、感染者が増えた場合に、すぐにでも行えるよう万全の準備をしておく必要があります。
また、オンライン授業は、不登校の子どもも参加しやすいとされていますので、十分な対応や支援をしてほしいと思います。
<ハイブリッド授業に注目>
オンラインを活用する中で、教室での対面授業と併用する「ハイブリッド授業」が注目されています。
授業を対面で受ける子どもとオンラインで受ける子どもに、同時に授業をする方法で、大学では、去年から多く行われています。
さいたま市など、保護者が選べるようにして、感染が不安な家庭の要望に応えている自治体のほか、あらかじめクラスを半分に分けて、対面とオンラインを交互に受けるようにしている自治体もあります。
3密を避けながら学習できるうえ、例えば、基礎疾患がある家族がいる家庭や、感染リスクを極力減らしたい医療・福祉関係者の家庭など、個々の事情にも応えられるので、積極的に活用してほしいと思います。
<オンライン授業の課題>
ただ、このハイブリッド型を含め、オンライン授業には多くの課題があります。
小学校低学年の子どもは、機器の操作や設定に保護者の協力が必要です。
それに、友達との交流が減ることは子どもの心や成長に影響します。
また、集中力に欠けたり、質問がしにくかったりするほか、オンライン回線がない家庭や、保護者がリモートワークをしていて、回線が不安定な場合もあります。
さらに、理科の実験や調理実習、体育など、オンラインに向かない学習もあり、長期間、オンラインで授業を続けるわけにはいきません。
自治体や学校は、できるだけ対面の授業を模索しながら、感染状況に応じて、すばやくオンラインに切り替える判断が求められます。
<子どもの「心」と「居場所」>
そして、学校には学習以外にも重要な役割があります。学校は子どもの居場所であり、やりがいや楽しみなど、
心の拠り所でもあります。
この2学期、部活動の中止や制限する学校や、修学旅行や文化祭、体育祭を中止や延期にする学校が相次いでいます。楽しみにしていた大会や行事がなくなったり、授業を詰め込んだりすることが、子どもの心に影響を及ぼすと指摘されています。
また、虐待や育児放棄などで家庭に居場所がない子どもにとって、学校に行けないことは大きな問題です。
今、子どもたちは、大人が考えている以上に窮屈な思い、つらい思いをしているのではないでしょうか。
安易に行事を中止せず、代わりになる行事を工夫するとともに、きめ細かい見守りや相談の体制を整え、子どもの心を支えてほしいと思います。
<共働き・ひとり親家庭などへの支援を>
保護者も、学校の急な予定変更などで、大変な日々が続いていると思います。家庭、特に共働き家庭やひとり親家庭への支援や配慮が必要です。
突然、休校や学級閉鎖、オンライン授業になっても仕事を休めない保護者は、場合によっては、退職せざるを得なくなったり、収入が大きく減ったりしてしまいます。
このため、厚生労働省は、8月1日以降の休校や休園で仕事を休まなければならなかった場合、保護者が支援金を受け取れるようにします。勤務先の同意があれば自分で申請できます。
相談先は、支援金コールセンター・0120-60-3999、または各地の労働局の特別相談窓口です。
国や自治体には、こうした家庭への支援や配慮をもっと広げてほしいと思います。
<家庭でも感染対策徹底を>
そして、家庭の感染対策です。
厚生労働省が今年4月から7月22日までの感染経路がわかっているデータを集計したところ、学校で感染した子どもは、6~12歳が15%、13~15歳が33%、16~18歳が46%でした。
一方、自宅での感染は、6~12歳が最も高い77%、13~15歳が60%、16~18歳は39%でした。
高校生は部活動など、校内のほか、放課後の友達との交遊などで感染するケースも目立つ一方で、小中学生は、自宅での感染が多く、家庭での対策がより重要です。
子どもは感染しても軽症か無症状が多いとされ、学校での感染が広がると、子どもが感染したことに気づかないまま、その家族に広がるケースが増えると懸念されます。
▼発熱や風邪の症状がある時は登校しない。▼手洗いや消毒、換気を欠かさない。▼家族でコップやタオルを共用しない。▼体調が悪い時や会話をする時は家の中でもマスクをするなど、感染対策を徹底してください。
すでに自治体によっては、12歳以上や教職員向けのワクチン接種を始めています。ただ、まだ十分ではなく、
教職員の優先接種がない自治体や、部活動のコーチなど外部の人材が対象外のところもあります。
学校は、油断せずに、感染対策と学びの工夫に取り組むことが求められますが、長引く対応に教職員も疲弊しているため、消毒やオンライン機器のトラブル対応など、要員や予算面での支援を強めてほしいと思います。
そして、私たち一人一人が、感染対策を徹底することが、感染者を減らし、子どもたちの学びを守ることにもつながります。
(二宮 徹 解説委員)
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