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「新型コロナウイルス 感染拡大を抑えるために」(時論公論)

中村 幸司  解説委員

感染拡大を抑えるために、何が必要なのでしょうか。
新型コロナウイルスの感染者数は、2000人を超える日が続くなど、急増しています。政府は、「Go Toトラベル」や「Go Toイート」の運用を見直し、札幌市と大阪市を目的地とする旅行が、2020年11月24日、Go Toトラベルの対象からはずされました。しかし、重症の患者が増え続けている、いまの状況を考えると、感染を抑える対策を様々に進める必要があります。

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今回は、
▽感染の現状を分析したうえで、
▽GO Toキャンペーンの見直しと課題。
▽さらに、いまの感染拡大を抑えるために、何が求められるのか考えます。

まず、感染の現状です。

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上の図は、全国の1日ごとに、新たに感染が確認された人の数です。10月中旬ころから、拡大傾向がみられ、11月21日には、1日の感染者が2500人を超え、過去最多になるなど、感染状況は警戒感を持て見ていく必要があります。

各地の感染者はどうなのでしょうか。

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各都道府県の、11月23日までの1週間の感染者の合計を、1か月前の1週間と比較してみたのが、上の図です。北海道のほか、愛知県、大阪府など大都市部では、1週間で1000人を超え、東京は3000人余りです。10月の1週間と比べると、都市部だけでなく全国的に感染者が増えていることが分かります。

なぜ、感染が拡大したのでしょうか。9月下旬、すでに専門家は「感染拡大に警戒が必要だ」としていました。拡大した要因は、はっきりしていませんが、
▽収束の兆しが見えないことによる、いわゆる「コロナ疲れ」で、ひとりひとりの対策が少しずつ緩んできたこと、
▽人の移動が増えたこと、
▽冬の寒さと乾燥で、室内の十分な換気がしにくくなったり、飛沫が飛びやすくなったりしたこと。
こうしたことが感染拡大の要因ではないかと専門家は指摘しています。

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そして、特徴的なのは、感染の集団=クラスターが多様化している点です。「第2波」とも呼ばれる、7月から8月にかけての感染拡大の時は、東京の接待を伴う飲食店を中心に感染が広がり、クラスターもそうした人たちの関係者の間で多く発生しました。
しかし、今回は、接待を伴う飲食店だけでなく、大学生などの若者、外国人、場所としては、高齢者施設、飲食店、職場など、様々なところでクラスターが発生し、家庭も感染拡大の場になっています。
これは、9月、10月は、5月から6月の頃のように、感染者を少なく抑え込むことができず、その感染者の多い時を、起点にして現在の感染拡大が始まっているためと指摘する専門家もいます。
年齢層が「第2波」に比べて高齢者が多くなっていることも特徴です。
現状の深刻さを示すデータの一つは、重症の患者の数です。11月24日は345人と、これまでで最も多くなっています。

こうした状況の中、政府は、経済政策として進めてきたGo Toキャンペーンの見直しを打ち出しました。

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Go Toトラベルについては、感染が拡大している地域を目的地とする旅行の新たな予約などを一時停止するとしています。北海道と大阪について、都道府県単位ではなく、感染が拡大している札幌市と大阪市を目的地とする旅行について、一時停止とすることを発表しました。期間は11月23日から3週間です。
Go Toイートについては、感染状況により、プレミアム付き食事券の販売の一時停止などを検討するよう都道府県に要請するとしています。これについては、埼玉県と兵庫県などが検討を進めています。
また、政府は併せて、都道府県が酒を出す飲食店などに営業時間の短縮を要請する際に、協力金などの支払いを国が支援するとしています。

Go Toキャンペーンの見直しが、どれだけ感染を抑えることになるのか。「効果がある」とする考えもあれば、「予防的な措置だ」とする見解もあります。
ただ、ここまで感染が広がった危機感を考えれば、タイミングが遅かったか、適切かという議論はあるものの、多くの人が見直しに納得できるものではあると思います。

さらに、現状では多くの地域で、Go Toキャンペーンは継続されます。感染リスクを抑えるよう工夫していく必要があると思います。

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Go Toトラベルは、観光地などに人が集まって感染リスクが高まらないかと懸念されています。きのうまでの3連休でも、京都などの観光地に大勢訪れて、観光客からは感染の拡大を心配する声も聞かれました。Go Toトラベルの利用にあたっては、移動の途中、電車内などで大声を出さないといったことだけでなく、密になりなりそうな場所を避ける、あるいは訪れる時期を変えるなどの工夫をして、分散化を図ることも、新しい生活様式の一つかもしれません。
Go Toイートも、飲食店での感染が後を絶たないことから、アクリル板などの設置の徹底や換気で空気が十分入れ替わっているかどうかをモニターする方法などが提案されています。

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Go Toキャンペーンのリスクを少しでも下げる、こうした対策を積み重ねていくことが引き続き重要になります。

いま、Go Toキャンペーンが注目されていますが、感染対策の強化も同時に進めることが必要です。

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ひとつは、「第2波」に比べて感染する割合が多くなっている高齢者の感染対策です。
高齢者は、重症化しやすいとされていますが、最近は高齢者の施設で感染が広がるケースが各地で報告されています。このため、国は、こうした施設で1人でも感染が確認された場合は、施設の入所者や従業員など全員に検査をするよう求めています。
高齢者施設は、医療機関に比べて、感染症対策の専門家が常駐していないケースの多いだけに、こうしたことの徹底を図るため、施設を支援する取り組みが求められます。

新型コロナウイルスの感染対策。その柱として、
▽われわれ国民の行動をより感染のリスク低いものに変えること、
▽「クラスター」の早期発見・早期対応、
▽医療提供態勢の確保の、3つがあげられています。

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しかし、国民がリスクの高い生活をすれば、クラスターがいくつもできて、対策が進まなくなります。その結果、医療が追いつかず、大勢の命を救えなくなる「医療崩壊」につながりかねません。

いま、この柱が揺らいでいます。

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「コロナ疲れ」ともいわれる一人一人の行動の緩み、クラスターの多様化で、対象を絞った効果的な対策が難しくなっています。そして、感染者の急増に伴って、地域によっては医療態勢がひっ迫し始めているという指摘もあります。

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いま必要なのは、私たち一人一人が、
▽三密の回避、▽大声を出さない、▽徹底した換気を行うなど、「新しい生活様式」ができているか確認すること。
専門家の間では、クラスターが多様化する中、いまの感染拡大にどういったクラスターが大きく影響しているのかなど分析を進め、感染拡大を抑えるため何が必要なのか、引きつづき、専門の立場から提言することが求められます。

新型コロナウイルスの対策では、経済と感染対策の両立が求められています。
しかし、どちらに、どれだけ重点を置くのがよいのか、一人一人の立場によって、意見が分かれると思います。ただ、感染がこのまま拡大することがないようにするために、今は、様々な場面で危機感をもって感染リスクを抑える取り組みが必要です。
国や都道府県知事などには、今後も対策の狙いをわかりやすく説明して、国民、市民の理解と協力が得られるようにし、感染を抑えなければなりません。

(中村 幸司 解説委員)

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