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「新型コロナウイルス~避難所の感染対策を急げ」(時論公論)

松本 浩司  解説委員

政府は「緊急事態宣言」の対象地域を全国に拡大することを決めましたが、これから大雨の時期に向かい、感染が続く中で豪雨災害が起こる、という最悪の事態にも備えなければなりません。災害が起きたり、その恐れが強まったりしたら迷わず避難をする必要があります。しかし避難所が混雑し、そこで感染が広がることも避けなければならず、とても難しい選択を迫られることになります。国や自治体はどう対応し、私たちはどう行動すべきなのかを考えます。

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解説のポイントは、
▼感染と災害の複合リスク
▼国や自治体の取り組みと課題
▼求められる「分散避難」

【感染と災害の複合リスク】
4年前の熊本地震では益城町などの避難所が被災者でいっぱいになり、多くの被災者が壊れた自宅やマイカーで避難生活を続けました。
去年の台風19号でも東京の一部の避難所が避難者であふれ、狛江市では市議会の議場も開放して受け入れました。
いずれの避難所も、今、新型コロナウイルス対策で最も避けなければならない「密閉・密集・密接」の3密状態になっていて、実際、熊本地震では一部の避難所でノロウイルスなどの患者が相次ぎました。

感染終息のメドが全く立たないなかで感染と豪雨災害が重なるリスクが高まっていて、避難所の感染対策が重要な課題として浮かび上がっています。

【国や自治体の取り組みと課題】
国や自治体はどう対応しているのでしょうか。
対応を考え始めたばかり、というのが実情です。

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国は今月、自治体あてに通知を出して
▼できるだけ多くの避難所を開設して避難者のスペースを確保することや
▼基本的な感染対策を徹底することなどを求めました。

これを受けて自治体は悩みながら対策を始めています。
▼まず従来から指定している小中学校などの避難所に加えて、公民館や県立高校など
ほかの公共施設も避難所にしようとしているところが多くなっています。

東京・練馬区は地震のとき98の小中学校の避難所に700人ずつ受け入れる計画ですが、それに加えて区立の集会所や都立学校も避難所として利用する準備をしています。静岡市も小中学校など242の施設で10万人あまりを受け入れる計画ですが、あらゆる公共施設で受け入れられるよう準備をしたいとしています。
また私立学校や体育館などがある民間企業に協力を求めようとしている自治体もあります。

▼静岡県は大きな災害が起きたときにホテル・旅館に高齢者などを受け入れてもらう協定を組合と今年1月に結びました。こうした協定を結ぶ自治体は少しずつ増えていて、まだないところもホテル・旅館側と話し合っておく必要があります。

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▼避難所が増えれば物資もより多く必要になります。自治体は食料や水、毛布などは備蓄していますが、マスク、消毒液などの衛生用品を用意しているところは少なく、品薄が続く中、確保が大きな課題になっています。

国は衛生用品や間仕切り用パーティションなど感染防止の物資を備蓄したり、調達できるようにして、速やかに被災地に送る態勢をとっておく必要があります。

▼感染対策の運営面はどうでしょうか。
避難所での感染対策を進めるために専門家による管理や指導が不可欠です。山口県宇部市は従来は必要に応じて保健師を派遣していましたが、避難所を開設したらすぐに派遣、巡回できるよう態勢をとりました。

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▼運営上の感染対策について、国は東日本大震災のあとに作られた、いくつかのマニュアルを参考にするよう通知しています。しかしこれらは新型インフルエンザなどを念頭に置いたもので、新型コロナウイルスには対応していません。
例えば、新型コロナウイルスでは感染が確認されたら原則入院するかホテルなどでの隔離が必要ですが、マニュアルでは「感染症患者の専用のスペースや個室を確保する」とか「部屋を確保する」という表記にとどまっています。国はあらためて「一般の避難所に滞在するのは適切でないことに留意する」と通知しましたが、自治体からは新型コロナウイルスに合わせた、わかりやすいマニュアルを求める声があがっています。

さらに今、医療現場がぎりぎりの状況にあるなかで、国は災害が起きたときの避難所などへの医療支援をどうするのか、きわめて難しい問題ですが想定をしておく必要があります。

【わたしたちはどう行動したらよいのか】
では、わたしたちはどう行動したらよいのでしょうか。

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豪雨災害について考えたとき、土砂災害や水害の危険地域に住む人は危険が迫ったら、ためらわずに避難をする必要があります。
▼そのとき避難所へ避難をするのが基本です。
▼ただ避難所が混雑すると感染する心配もあり、
いろいろな場所へ避難する「分散避難」も考えておく必要があります。

まず避難所に避難する場合の注意点を見ていきます。

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▼まずは持ち物、マスクやアルコール消毒液、体温計を持っていくこと。
3密対策は自治体の責任ですが、避難した人も協力が必要です。
▼換気をしたり、ほかの人に飛沫が飛ばないよう2メートルほど距離をとる
▼人と向い合せではなく背を向けて座るようにして、間仕切りを利用する
▼手洗いや消毒はもとより、
▼避難所に入るとき、その後も定期的に体温を測る。発熱やせき、強いだるさといった
症状が出ていないかチェックし、変化があったら避難所の運営者に知らせ対応を考えてもらうことも大切だと専門家は指摘しています。

そして避難所の3密を防ぐために、いま求められるのが「分散避難」です。
避難所の整備は進んでいて規模の大きくない災害であれば収容能力は十分にあります。しかし去年の台風19号やおととしの西日本豪雨のような大災害になれば避難所がいっぱいになる恐れがあります。そこで求められるのが、さまざまな避難先を検討しておくことです。

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▼親戚や知人などで安全な場所で頼れる人がいれば、そこへ早めに避難させてもえないでしょうか。特に高齢者や乳幼児のいるご家庭は考えておいてほしいと思います。
▼宿泊施設の利用。去年の台風では、息子さんがホテルを予約して高齢の父親を避難させ、家は土砂崩れで全壊したが助かったというケースもありました。
▼車で高台など安全な場所で待機することも考えられます。ただ去年の豪雨では、車で移動中に氾濫に巻き込まれて死亡するケースが相次いでいて、早めの移動が不可欠です。避難中は換気をすることやエコノミークラス症候群などの対策もとても重要になります。
▼マンションなど頑丈な建物の高い階など、浸水などがあっても安全が確保できる場合は、水や食料などの備えをしたうえで、いわば籠城を覚悟で自宅にとどまるという選択肢もあります。

ただ、こうした避難のために移動をすることで知らないうちに感染を拡大させてしまうリスクを下げるために、自らの体調のチェックや感染防止のエチケットなどまわりへの配慮は欠かせません。

【まとめ】
ここ6年連続で大きな豪雨災害が起きて大きな地震も相次いでいます。ウイルス感染の拡大が続くなかで、私たちは、例年よりも入念かつ冷静に、災害にどういう備えをしてどこへ避難するのか、家族で話し合っておく必要があります。また国や自治体はいま感染拡大防止で手一杯だと思いますが、想定外をなくし被害を小さくするため、できる限りの対策を急いでもらいたいと思います。

(松本 浩司 解説委員)

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