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「新型コロナウイルス パンデミックと特別措置法 今後の感染対策は」(時論公論)

中村 幸司  解説委員

感染拡大を国際社会で、どう抑えるたらいいのでしょうか。
WHO=世界保健機関は、2020年3月11日、新型コロナウイルスの感染の状況について「パンデミック」、つまり世界的な大流行になっているという認識を示しました。
一方、アメリカをはじめ世界各国で株価の暴落を招くなど、感染の拡大は経済にも大きな影響を与えています。こうした中、国内では3月13日、新型コロナウイルス対策の特別措置法が成立しました。

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今回は、
▽WHOの「パンデミック」発表の意味と、
▽成立した特別措置法で、どのような対策が運用されるのか、
▽今後、求められる対策について考えます。

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WHOのテドロス事務局長は、現状について、「パンデミック」世界的大流行にあたるとの認識を示しました。

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パンデミックの理由として、テドロス事務局長は、この2週間、中国以外での感染が急増している点をあげました。その上で、「今後、数日、数週間後には感染者数と死者数、感染が確認された国の数がさらに増えると予想する」との見通しを示しました。

では、世界の感染の状況は、どのようになっているのでしょうか。

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上図はWHOが発表した、3月12日現在の状況です。赤く塗られたところは、感染者が確認されているところです。
121の国と地域で、およそ12万5000人が感染し、死者は4600人余りになっています。
感染者が多い国は中国、中国と国交が盛んなイタリアとイラン、そして韓国です。この4つの国で、感染者の90%を占めています。
この他、フランス、スペイン、ドイツで感染者が1000人を超えています。アメリカもCDC=疾病対策センターによると感染者が1000人を超えていて、欧米の感染拡大が抑えられるかという点も注視する必要があります。

なぜ、いま、パンデミックとしたのか。

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新型コロナウイルスに対する強い危機感を改めて世界に示すというWHOの狙いがあったものと考えられます。ただ、そうであるなら、感染が、すでに世界に広がっていたことを考えると、もっと早く発表すべきだったという見方もあります。
発表の意味として考えられるのは、これまでも進めてきた
▽ウイルスや患者のデータを共有すること、
▽ワクチンや治療薬などの開発促進、
▽医療態勢の脆弱な国の支援、
こういった国際協調があると思います。
パンデミックには、国際協調を限られた国ではなく、すべての国で進めなければ、このウイルスを抑えることができないというメッセージとしての効果はあると思います。

こうした状況の中、日本では3月13日、新型コロナウイルスの対策強化をはかる法律が成立しました。これは、新型インフルエンザなどの対策として作られた特別措置法を改正したものです。

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この法律では、国民の生命や健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあり、全国的かつ急速なまん延で国民生活と経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあるときに、総理大臣は期間や地域を指定して緊急事態を宣言することが可能になります。

宣言が出された場合、対象となった地域では、自治体が
▽不要不急の外出自粛の要請、
▽学校の休校、百貨店や映画館など人が多く集まる施設の使用制限の要請や指示が行われます。

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これらを見ると、一部は、私たちがすでに実施していることと重なりますが、緊急事態が宣言されれば、法律に基づく、より強い要請になります。
ただ、この法律は、個人の権利を一部制限することにつながります。それだけに国には、十分な説明と、慎重な運用が求められます。また、外出自粛や施設の使用制限といった生活に大きく影響する対策をどのような時に、どの範囲で行うのか、できるだけ具体的に国民に示しておくことも、混乱を少なくするためには大切だと思います。

この法律を、効果的な対策に結びつけるには、何が求められるでしょうか。

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日本国内では、連日、新たな感染者が報告されています。この中では「クラスター」と呼ばれる、感染者の集団が見つかっています。国内の対策では、このクラスター(集団)が大きくなったり、クラスターが次のクラスターを生み出したりしないよう、感染者が見つかったときに周囲の濃厚接触者の調査を徹底して行っています。

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クラスターが見つかった北海道では、鈴木知事が、外出の自粛や大勢が集まる場所に行かないよう求めました。こうした対策がどこまで効果があったのか、専門家は3月19日にも評価をすることになっています。北海道の対策の何が効果をあげ、課題は何なのか、分析の結果が示されるものとみられます。
クラスターは、北海道以外でも大阪のライブハウスや名古屋市のスポーツクラブなどで相次いで見つかり、対策が進められています。感染の拡大は、人の動きを止めれば、抑えられるとされています。しかし、極端に動きを止めれば、経済的な影響は一層大きくなってしまいます。どこまで対策を強めるのが適切なのか、専門家による評価は、今後の対策のあり方を考えるうえで、重要なものになりそうです。

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現状について専門家は、総理大臣が緊急事態宣言をするものではないとしています。しかし、クラスターの対策が追いつかない状態が、各地で起これば、緊急事態宣言はより現実的になってきます。対策とあわせて、そうした事態の備えを徹底しておかなければなりません。

パンデミック=世界的大流行となった今、国内だけでは十分な対策はできません。国内の対策を徹底しても、海外から感染者が入ってきたのでは、対策が追いつかなくなるおそれがあるからです。
≪発表の狙い+上2段が赤+海外発信をまで≫
もういちど、パンデミックのところで述べた「国際協調」で必要なことを見てみます。上の2つは、すでに各国で行われています。日本についてみると、クルーズ船を含めれば1000人を超える数の感染が確認されているので、集中治療室で治療を行った症例など、重症患者にはどのような治療方法が有効なのか、その経験を海外に積極的に発信することが必要です。

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強調しておきたいのが、医療態勢の脆弱な国への支援です。
アフリカなどの国の中には、まだ感染者が報告されてない国が少なくありません。

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感染者がいないのか、見つかっていないだけなのか、詳しいことはわかりませんが、途上国では、重症患者を救命する医療態勢、感染を確認する検査態勢が十分できていない可能性があります。一方で、途上国でも今は急速に都市化が進んでいます。感染が拡大し、クラスターが作られやすいというリスクを先進国と同様に抱えているとみられます。

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先進国はいま、自分の国の対策に集中しています。ただ、そうしている間に、途上国の対策が遅れてしまっては、感染を収束させることはできないと思います。
途上国の感染者が少ないうちに、先進国は、医療物資の提供とともに感染対策をサポートする専門家を派遣するなどの支援を充実させることが、今後一層重要になると思います。

日本では新たな感染の報告が続いていて、依然として国内の対策の重要な時期にあるとみられます。新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの経済、そして生活に大きな影響を及ぼしています。そうした中、国内の感染を抑えるとともに、各国と協力して地球規模での対策のレベルを引き上げることが、いま求められていると思います。 
 
(中村 幸司 解説委員)

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