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「かんぽ問題 問われる経営責任と企業風土」(時論公論)   

竹田 忠  解説委員

郵便局を舞台にした、かんぽ生命保険の不適切な販売問題。
郵政グループのトップである日本郵政の長門正貢社長が(ながと・まさつぐ)
会見し、進退も含めて、責任の取り方を今後あらためて明らかにする意向を示しました。

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【 何が焦点か? 】

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① 判明した、さらに深刻な実態
② 問われるガバナンス
③「見て見ぬふり」の組織風土

この3点について考えます。

【 深刻な実態 】
この問題について会社側が外部の弁護士に依頼して作った
特別調査委員会による調査報告が発表されました。
この報告で事態の深刻さが改めて浮き彫りになりました。

最初に整理しますと、
今回の問題は、かんぽ生命が全国2万を超える郵便局で販売している
養老保険や終身保険などの販売をめぐって、主に起きているものです。

問題となっているケースで多いのは顧客に対し、
古い保険の契約がまだ残っているのに、
新しい保険を契約させて保険料を二重に払わせていたケース。

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また、古い保険から、新しい保険に乗り換えるときに、
わざと間をあげて、保険に入っていない期間をつくっていたケース。
通常は、こうして新しい保険に入る場合は、健康状態のチェックどを改めてクリアしないといけませんのでまず、新しい保険に加入できたことを確認して、それから古い保険を解約するんですが、そういうことを関係なしに、古い保険をさっさと解約して、わざと間をあけた。

なぜ、こんなことをするかというと、
そうすれば、単なる乗り換えではなく、全く新しい契約を獲得したとみなされて、
手数料がたくさんもらえる仕組みになっているためです。
でも、顧客の側からすると、自分は保険に継続して入っているつもりなのに、もし、この空白の期間に何かあっても保険金が受けられないという、大変な被害を被るおそれがあります。

また、中には古い保険を解約したものの、健康状態が悪化していて
新しい保険には入れてもらえず、結局、無保険のままになってしまった、というケースも明らかになっています。

こうした、法律に違反したり、社内ルールに違反した疑いのある契約が
これまでの公表では
およそ6000件だったんですが、
今回の調査報告では、
倍の1万2000件を上回る、ということが、
公表されたわけです。

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また、このうち、関係者に直接あたるなどして
実際に違反が確認された件数は
670件に及ぶとしています。

ただ、この直接確認する調査は、まだ20%程度しか進んでいないため、
今後、確認された違反は、さらに増えるとみられます。

【 悪質な具体例 】

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また、今回の問題は、こうした件数の多さだけでなく、手口の悪質さが批判を受けています。
たとえば、今回、保険の販売に携わっていた郵便局の元局長は、
NHKのインタビューに対して、
「顧客には保険であることを明確に告げないまま契約させたり、
ハンコを偽造して契約を成立させるということも聞いたことがある。
どういう手を使っていても、実績を上げる社員に対しては
上司であっても、モノが言いづらい状況だった」などと述べています。

【 後手にまわった対応 】
では、なぜ、こうしたことが、
何年にもわたって行われ、
止めることができなかったのか?

これについて特別調査委員会の報告はこう述べています。

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まず、今回の問題をめぐるかんぽ生命の対応については
「不適正な営業の疑いがあるという情報を知った以上、
 十分な事実調査をして、原因の特定や改善策の検討がされるべきだったのに、
 個別の対応に終始した」と対応の甘さを指摘しました。

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その上で、「根本原因の追究と、抜本解決を先延ばしにし、
問題を矮小化する組織風土であった。」と、厳しく指摘しまして、
経営の統治・ガバナンスが効いていなかった、という認識を示しました。

では、こうした指摘に対して、
この後、続いて会見した経営陣は、どうこたえたのか?

郵政グループトップの
日本郵政の長門正貢社長は
「社員一人一人にいたるまで、 コンプライアンスを徹底し、
 失った信頼の回復を図ってまいります」と述べてまず、改めて陳謝しました。

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その上で、経営陣の責任について長門社長は、
「しかるべき経営責任についてしかるべきタイミングで
あらためて発表したい」と述べて
進退も含めて、責任の取り方を明らかにする意向を示しました。

【 衝撃のアンケート 】
また、今回の報告書は
経営のガバナンスの問題だけでなく、
組織全体のありかた、組織風土についても言及しています。

たとえば、今回の調査では、
これまで保険の販売をしてきた職員に対して
アンケートを行っています。

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その中では、今回のような不適切な営業や販売を職場で見聞きしたことがあるか、
という質問をしています。

それに対して
高齢者をだますような契約や同じ顧客に何度も契約をさせる、というケースについて、
職場で見聞きしたことがある、と答えた人がどちらも40%を超えました。

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これについて報告書は、
「多くの従業員が、問題を知っていたと思われるにもかかわらず、
上層部にその声が届けられることはなかった。
“見て見ぬふりをしていた”という声も少なくない。と
厳しく、指摘しています。

こうした指摘にかんぽや郵便の職員、そして経営陣は
これから、真摯に向き合うことができるんでしょうか?

この点について
早くも不安を感じてしまったのが、きょうの経営陣の記者会見です。
会見の終わりは、非常に後味の悪いものでした。
というのも、会見が2時間に及んだことを理由に会社側が、会見を一方的に打ち切ったためです。

まだ質問をしようとした報道陣からは
それはおかしい、という強い抗議の声があがりました。
しかし、これで質疑は打ち切られました。

大きく傷ついた信用を回復しなければいけない
郵政グループにとってこの日の経営陣の会見はきわめて貴重な機会だったはずです。
ぞれが2時間で一方的に打ち切り、というのでは、
「信頼を取り戻すべく、全身全霊で取り組む」というこの日の社長の言葉が、むなしく響いてしまいます。

金融庁はすでに今回の問題について立ち入り検査を終え、今月中に、保険販売などの営業について
業務停止命令を出すことも検討しています。
全国40万人が働く巨大組織の経営が問われています。

(竹田 忠 解説委員)

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