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「動き出す GAFA規制」(時論公論)

竹田 忠  解説委員

席捲しているのが、このおなじみのブランド名の4社。
俗にGAFAと総称されます。
この巨大IT企業への規制が今、各国で強まっています。
今週末、ワシントンで始まるG20では、
どうやって各国が税金を課すことができるか、詰めの議論が行われます。
また日本では、政府が、専門の会議を発足させて、
新たな規制の具体策について、検討を始めました。

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【 何が焦点か? 】

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この問題のカギとなる、
▼プラットフォーマーとは何か?
▼なぜ規制するのか?
▼そして今後、日本での論議に必要なものは何か?
この3点について考えます。

【 プラットフォーマーとは? 】
まず、アメリカの企業や、事業の名前である
グーグル、アップル、フェイスブック、そしてアマゾン。
このそれぞれの頭文字をとって、「GAFA(ガーファ)」と呼ばれています。
展開している事業は、それぞれ違います。

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検索サービス、スマホのアプリストア、SNS、そして、ネット通販と別々です。
共通しているのは、インターネット上で、大勢の人がモノやサービス、
情報をやりとりするための基盤、英語でプラットフォームを提供し、
それによって、社会や経済に大きな影響力を持つ。
それでプラットフォーマーと呼ばれていることです。

プラットフォーマーには、特徴があります。
大勢が使えば、便利になる。便利になるから、また大勢が使う。
そうやってドンドン大きくなる。
その結果がこうです。
去年の時価総額の世界ランキングベスト10。
GAFAの4社がズラリと、名前を連ねています。

【 なぜ規制するのか? 】
今や市場を席捲するこのプラットフォーマーに対し、各国は、規制を強めています。
規制は、主に三つの方向から包囲網をしくように行われています。

まず、▼デジタル課税です。
企業にかかる法人税は、基本的に本社や支店、工場など、
物理的な拠点がある場合にかけられます。

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しかし、プラットフォーマーの場合は、
海外にそうした拠点を設けないまま
直接ネットを通してビジネスを展開する場合があります。
これでは適正な課税ができず、
税金逃れになっているという批判が強まっています。

このため、現在G20・主要20ヵ国を舞台に、
各国が協調して新たな課税ルールを作ろうという動きがヤマ場を迎えています。
今週末、ワシントンで開かれるG20の会合でも、この議論が焦点です。

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▼次は、競争政策、つまり独占禁止法の適用です。
実はこれまで、EUは、グーグルが圧倒的な市場の支配力をバックに
ライバル社による自由な競争を阻害したとして、
独禁法違反で、何度も摘発しています。
これまでに合わせて82億ユーロ、
日本円にしておよそ1兆円超という巨額の制裁金をかしています。

▼そして、個人情報の保護です。
危機感が強まったのは、なんと言っても去年、
フェイスブックで最大8700万人分と言われる
大量の個人データの流出が明らかになった問題です。
これでGAFAへの風向きは変わりました。
現在、アメリカでは、全米50の州と地域で
IT大手への調査が協調して進められています。

【 日本は何を規制するのか? 】
こうした中、日本でも、規制の具体策の検討が始まりました。
今月4日、関係閣僚や企業トップ、それに有識者などからなる
「デジタル市場競争会議」が、官邸で初会合を開きました。
議長を務める菅官房長官は、
「各国と連携して、国際的な議論をリードする必要がある」と述べて、
検討を急ぐ考えを示しました。

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会議では、国際的な三つの包囲網のうち、
デジタル課税については、G20で議論が進んでいるため、
残る二つ。
▼独占禁止法と、
▼個人情報の保護、
この二つについて議論を急ぎます。

【 独占禁止法 】
まず、独占禁止法の関連では
最近、日本で大きな注目を集めた問題があります。
今年2月、アマゾンの日本法人が、商品を出品している事業者に対し、
販売価格の1%を、消費者にポイント還元するよう求めました。

ただし、それに必要なお金は、出品者が自分で負担すること、というのです。
これに対し、公正取引委員会が、
独占禁止法違反の疑いがあるとして調査を始めました。
すると、アマゾンは、この話しを撤回しました。

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この話しのように、巨大IT企業がその強い立場を利用して
不利な条件を一方的に押し付けてくる、という取引業者からの訴えが後を絶ちません。

このため、この会議では、新たな法律
「デジタル・プラットフォーマー取引透明化法案」を作って
巨大IT企業に対し、取引条件を開示するよう義務づける方針です。

【 個人情報の保護 】
次は、個人情報の保護。これも重要な問題です。
私たちは、日々、様々な個人情報を、
検索や通販、SNS、メールなどでサイトに入力しています。
住所、氏名、年齢、職業、性別、学歴に趣味・嗜好、そして人間関係まで。
プラットフォーマーは、こうした膨大な情報を分析して、
その人に今、最適な商品や情報を選び、
まさにその人を狙った広告、ターゲティング広告を打って、
高い広告料を稼ぎ出しています。

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しかし、もし、こうした情報が勝手に売られたり、流されたりしたら
それは大変なことになります。
アメリカのフェイスブックで起きた大量の個人データ流出は
まさにこれが現実に起きたわけです。
このため、今後、この会議では、
個人情報の勝手な利用に歯止めをかけるため、
個人情報保護法を改正して、
個人がプラットフォーマーに対して、
自分のデータの利用停止を求める権利を明確にする方針です。

【 日本も対象 】
ここまで、主にGAFAを例にみてきましたが、
当然、日本の企業も規制の対象になるとみられます。
というのも、公正取引員会が、
大手ネット通販で商品を出している事業者に聞いたところ、
手数料のアップなど、契約を一方的に変更されたという苦情が
最も多かったのが楽天で93%、次いでアマゾンの73%、
ヤフーの50%、などとなっています。

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また、就職情報サイト、リクナビで起きた問題も極めて深刻でした。
学生から集めたデータを使って
その学生が特定の企業の内定を辞退するかどうか
内定辞退率を予測して、企業に販売していた、という問題です。
個人情報保護法に違反するとして
当局がリクナビに初の是正勧告を出しましたが、
こういったケースは、今回の規制強化によって
より厳しく規制される可能性があると思いますます。

【 課題は? 】
ただ、こうした議論の一方で別の課題も指摘されています。
経団連は、このほど、
「行き過ぎた規制強化は、技術革新の停滞につながる」
という提言をまとめました。
国境を越えたデータの流通は、
「デジタル経済の発展に不可欠」なのに、
規制強化が進めばデータを自国内で囲い込む動きが
広がることが懸念される、として危機感を表明しています。
確かに、企業がデータの扱いに躊躇して、
技術革新が遠のくなら、それは問題です。
しかし、まず、消費者が安心できるルールを整備してこそ、
企業のビジネスチャンスも広がるはずです。

政府は、この議論を年内にまとめ、
来年の通常国会に関係法案の提出を目指す考えです。

消費者の納得や信頼を得た上でデータを利用できる環境整備を急ぐ必要があります。

(竹田 忠 解説委員)

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