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「関電に原発運転の資格はあるか」(時論公論)

水野 倫之  解説委員

関西電力に今後も原発を運転する資格はあるのか。
関電の経営トップらが原発の立地自治体の元助役から3億円余りの金品を受け取っていた問題で、関電はきょう、金品には金貨や小判などが含まれ、一人で1億円以上受け取ったケースもあったことなど驚くべき事実を明らかに。
関電は返却済みで違法性はないと主張。
でも資金の出どころの建設会社への便宜供与がなかったかどうかなど、はっきりしない点も依然多く、原発マネーが電力トップらに事実上還流されたのではないかという疑いはぬぐえていない。
原発・電力会社への信頼が再び大きくゆらぐ事態となった今回の問題について、水野倫之解説委員の解説。

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舞台は関西電力高浜原発がある福井県高浜町。

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関電は先週、
岩根社長と八木会長ら社員20人が、高浜町の森山栄治元助役から3億2000万円の金品を受け取っていたと明らかに。

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その資金の出どころが町内の建設会社。関電から高浜原発関連の工事を請け負っていた。この会社から、森山元助役に受注の手数料3億円が渡り、元助役はこれを原資に関電の経営トップらに金品を渡していたことが税務調査で判明。
多額の原発マネーが回りまわって経営トップらに還流しているようにみえる、これが今回の問題の最大のポイント。

ただ関電は、肝心な点は個人情報に当たるとして説明を拒んだ。
ここから見えてくるのは公正性や透明性の低さ、そして説明責任を果たすのに消極的という公益企業としてありえない姿。
これには批判が集中、関電はきょう一転して社内調査の内容を公表。

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そして驚くべき実態が明らかに。
金品には現金や商品券などのほか、金貨や小判、金塊も。
金額は豊松元副社長と鈴木聡常務が1億円以上と飛びぬけて多かった。
関電は返却したとしていましたが、その時期は多くが国税調査がわかった去年の2月以降。

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ただ、依然として関電の説明には納得できない点が。
まず、なぜ金品をすぐに返さずに個人で保管したのか。
岩根社長は「返そうとすると無礼者と恫喝されたりした。森山案件は特別という意識があり、いつか返そうと一時的に各個人で保管していた」。
また八木会長も「森山氏を怒らせると高浜での原子力事業がうまくいかないと考えていた」と釈明。

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その森山氏。
1977年から10年間高浜町の助役。この期間は高浜原発の誘致・運転開始の時期と重なり、やがて原発の工事の受注に大きな影響力を持つように。
地元では元助役の仲介がなければ工事の受注は難しかったと言い、現職の町長よりも力があることから「裏の町長」とも。
元助役がなぜ金品を送ったのかは本人が亡くなっていることもありはっきりしないが、金貨や小判は一般常識ではありえない。

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岩根社長も就任祝いを受け取った際、ほかの役員から高額品の可能性を指摘された。実際菓子折りの底に金貨10枚が入っているという時代劇のような光景が。

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つまり一部の社員の間では元助役から高額品を渡されることは共通認識だった。これがまずいと思うのであれば、会社として返還するという対応を考えていくのが当然ではないか。
また金品を返した時期も多くが税務調査の発覚後だったということはあわてて返したのではないか。調査がなければ返さなかったのではという疑問も浮かんでくるわけで、なぜ会社として対応できなかったのか納得のいく説明が必要。

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もう一点、経営トップらが本当に建設会社に便宜を図っていないのか。
というのもこの建設会社への関電からの直接発注額だけをみても2013年は300万円が2018年には2億5000万円と80倍以上に伸ばしている。
関電は「発注プロセスや金額は社内のルールにのっとっており違法性はない」と説明。でも発注内容の具体的な説明はきょうもなく、原発マネーが電力のトップらに還流されていたのではないか。疑いはぬぐえない。

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このように依然として公正性、透明性が低く、説明責任も十分果たされてない。
関電側が受け取った金品の一部は、もとをただせば消費者が払った電気料金。ことの重大さに気づかないというのであれば、今後関電に原発を運転する資格があるのか。

関電は今後第三者による調査を始めると。
全部署で時期をさかのぼって徹底した調査を行い、納得できる説明をしていかなければ。
またこの問題が刑事責任を問われる可能性はないのか、筆頭株主の大阪市の松井市長は株主代表訴訟を起こすことも辞さない考え。今後こうした司法を通じた責任追及への動きも注目。

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さらに今回の問題は単に関電にとどまらず、原子力政策全体に影響が及ぶ。
政府は2030年までに全電力の20~22%を原発で賄うことを目指す。そのためには30基の稼働が必要、でも再稼働は9基にとどまる。
再稼働に必要な地元の了解が得られる見通しがなかなかたたないこともその理由の一つ。

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再稼働を進めたい関電はこれまでの4基に加えて、来年以降高浜1・2号機など福井県内の3基の再稼働を目指す。しかし今回、福井県の杉本知事は「信頼関係を損ない怒りに近いものを感じる」と述べるなど原発の地元で不信感はこれまでになく高い。今後地元の理解を得るのがより難しくなることが考えられ、再稼働は政府の思惑通り進むのは難しい。

福島の事故を受けて原発運営には公正性や透明性、そして信頼関係の重要さが再認識され、すべての大手電力が信頼回復に取り組むと表明していたさなかに今回の件は起きた。
となるとこうした問題、関電だけなのか。
政府は今回の問題の重要性を認識しているという。
であればほかの大手電力でも問題がなかったかどうか各社に調べさせて報告させ、その内容を政府としてしっかりチェックし、膿を出し切らなければならない。でなければ再稼働もあり得ないと肝に銘じなければ。

(水野 倫之 解説委員)

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