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「衆院2補選と統一地方選 今後の影響は」(時論公論)

権藤 敏範  解説委員

衆議院の2つの補欠選挙と統一地方選挙が、きのう(21日)終わりました。補欠選挙で敗れた与党と、一連の選挙で共闘が必ずしも機能しなかった野党双方に、不安が残る結果となりました。選挙結果を分析するとともに、後半国会や参議院選挙に向けて、見えてきた与野党の課題を考えます。

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【統一地方選】
先月21日に知事選挙が告示されたのをスタートに、およそ1か月にわたった平成最後の統一地方選挙は、きのう、後半戦として、無投票を除く、全国あわせて700余りの市区町村長や議員の選挙で投票が行われ、幕を閉じました。
今回の統一地方選挙を振り返りますと、最も注目を集めたのは、大阪府知事と大阪市長のダブル選挙でしょう。大阪都構想の実現を目指して、大阪維新の会が、知事と大阪市長を入れ替える形で仕掛けた異例の選挙戦は、いずれも維新が制しました。維新は、大阪府議会や大阪市議会の議員選挙でも躍進しました。ただ、関西以外では1議席も獲得できずに、全国的な広がりを欠きました。
一方、与党の自民党と公明党は、大阪ダブル選挙では敗れましたが、唯一の与野党対決となった北海道知事選挙では、野党の統一候補を破りました。

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さらに、全国41の道府県議会議員選挙では、自民党が、定員全体の過半数を占め、大阪など4府県を除く37の議会で第1党となったほか、公明党も、擁立した166人全員が当選し、底堅さを見せました。
分裂後、初めて、統一地方選挙に臨んだ、立憲民主党と国民民主党は、立憲民主党が選挙前から勢力を伸ばしたものの、国民民主党と合わせると201議席と、前回・4年前の選挙で、当時の民主党が獲得した議席の76%に留まり、地方組織の拡充が課題として残りました。

【衆院2補選】
さて、衆議院の2つの補欠選挙は、夏の参議院選挙の前哨戦として注目を集めました。
このうち、大阪12区の補欠選挙は、自民党議員の死去に伴うものでした。維新の藤田文武氏が、大阪ダブル選挙等で勝利した勢いを維持して、叔父の「弔い選挙」を掲げて戦った自民党の北川氏らを退けました。
また、名護市辺野古がある沖縄3区の補欠選挙は、アメリカ軍普天間基地の移設の是非が争点となり、野党が支援した、移設反対の屋良朝博氏が、自民党の島尻・元沖縄・北方担当大臣を破りました。

【与党の受け止め】

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自民党の候補が、衆参の補欠選挙で敗れるのは、第2次安倍政権発足後、初めてのことです。
大阪の都構想や沖縄の普天間基地移設問題など、「地域の特殊事情がある」などとして、国政や夏の参議院選挙に与える影響は限定的という見方も党内にはあります。しかし、安倍政権は、これまで選挙に勝つ事で求心力を維持してきただけに、痛い敗北です。
与党内からは、「政権に対する厳しい批判が底流にあった」という指摘も出ているように、今月、閣僚らの辞任が続いたことは、敗因の1つでしょう。今月5日には、塚田・前国土交通副大臣が、道路整備をめぐって、安倍総理らの意向を「そんたくした」と発言した責任を取って辞任。10日には、桜田・前オリンピック・パラリンピック担当大臣が、「復興以上に大事なのが議員だ」などと発言して、事実上、更迭されました。
党内では、今回の事態を、閣僚の不祥事や辞任が相次ぎ、惨敗した12年前の参議院選挙と重ねて、警戒する声も聞かれます。

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また、11の道府県知事選挙のうち、福岡や島根など4つの知事選挙で、保守勢力が分裂しました。このうち、福岡では、現職候補との関係が悪化したという理由で、麻生副総理らが擁立した新人候補を推薦して敗れました。4つの分裂選挙で、自民党本部が推薦した3人の候補は、1勝2敗。身内で戦ったしこりを解消できるのか、今後の結束に不安が残ります。
さらに、今回、浮き彫りになったのが、安倍政権の高い支持率も決して磐石ではないということです。2つの補欠選挙や大阪ダブル選挙のように、地域で激しく対立する争点や自民党の支持層を取り込むような勢力があれば、支持者が一気に流れてしまうもろさがあることも明らかになりました。

【野党の受け止め】
一方、野党側はどうでしょうか。

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沖縄3区の補欠選挙は、沖縄県の玉城知事の出身である自由党が中心となって擁立した、屋良氏を、立憲民主党や国民民主党などが足並みを揃えて応援し、議席を守りました。野党幹部らは、「参議院選挙に弾みになる。野党共闘を強力に進めていきたい」と歓迎しています。そして、参議院選挙に向けて、選挙結果を左右する、全国に32ある定員が1人の「1人区」で、候補者を一本化するための調整を急ぐとともに、衆参同日選挙の可能性もにらんで、衆議院の小選挙区の調整も進めたい考えです。

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しかし、野党の結集を掲げた大阪12区の補欠選挙では、共産出身の無所属候補を推薦したのは、共産、自由、社民の3党だけ。自主投票で臨んだ立憲民主党と国民民主党の支持者の対応は割れ、候補者4人の中で最下位という結果に終わりました。
さらに、野党の支持組織が強い北海道の知事選挙でも、野党の統一候補が敗れており、候補者の選定や連携のあり方に懸念を残しました。

【与野党の取り組み】
では、与野党は、今回の選挙結果を受けて、後半国会や参議院選挙に向けて、どう取り組もうとしているのでしょうか。
与党は、態勢の立て直しが急務でしょう。

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きのうの出口調査を見ますと、今回の補欠選挙で、自民党の候補に投票した公明党の支持者は、大阪では60%台半ば、沖縄では70%台半ばに留まりました。自民・公明の協力関係にほころびが見えてきたのではないかという懸念もあり、改めて関係強化に努めることにしています。

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また、国会では、児童虐待の防止策を強化する法案などを着実に成立させるとともに、皇位継承を滞りなく行い、6月に大阪で開かれるG20サミットを成功させることが至上命題です。その上で重要なのは、長期政権ゆえの緩みが出ているという指摘もあることから、緊張感を持って政権運営にあたることが求められています。

一方、野党側はどうでしょうか。

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野党側は、予算委員会での集中審議を求めており、閣僚らの辞任に対する安倍総理の任命責任や、安倍総理に近い自民党の萩生田幹事長代行が、消費税率引き上げの延期もありうるという認識を示したことを受けて、増税反対を強く訴え、政権を追い込みたい考えです。
ただ、野党の追及姿勢が政権の揚げ足取りと取られたり、野党間の主導権争いに終始していると見られてしまえば、安倍1強に対じするには迫力不足だとの指摘は免れないでしょう。後半国会では、政策の具体案を示すなどして、野党に対する国民の理解を得ていく必要があると思います。

【まとめ】
安倍総理は、きょうから、ヨーロッパやアメリカなど6カ国の歴訪に出発しました。ですから、国会論戦が本格化するのは来月の大型連休明けと見られ、参議院選挙をにらんだ与野党の攻防は激しさを増す見通しです。
ただ、忘れてならないのは、今回の統一地方選挙で、例えば、41の道府県議会議員選挙のうち、8割にあたる33の道府県で、投票率が過去最低となるなど、国民の政治離れが深刻なことです。
国民が求めている疑問に答えなかったり、目線に合わない議論を繰り返すなら、ますます国民の気持ちは政治から乖離してしまう。与野党には、改めて、政治に緊張感を取り戻す取り組みが求められているのではないでしょうか。

(権藤 敏範 解説委員)

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