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「レオパレス21の施工問題と再発防止」(時論公論)

中村 幸司  解説委員

建設業界で、また信頼を揺るがす問題が起きました。
賃貸不動産大手のレオパレス21が設計・施工したアパートなどの建物で、屋根裏の壁がないなどの法令違反や不備が相次いで見つかりました。問題が見つかった建物は、1万棟以上にのぼります。レオパレス21は、居住者に順次、引っ越しを求めるなどした上で、補修工事をするということです。
この問題で、どのような施工が行われ、再発を防ぐために何が必要なのか考えます。 

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解説のポイントです。

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▽レオパレス21が設計・施工した建物で、どのような法令違反や不備が見つかったのか。

▽どこに問題があり、なぜ防ぐことができなかったのか
▽再発防止と、最近、建設業界で毎年のように相次ぐ問題をどう見るか。
こうした点を、考えます。

レオパレス21は、土地の所有者と契約して、アパートなどの共同住宅を建てさせ、管理などを行う賃貸不動産業をしています。あわせて、その建物の設計・施工も行っています。
鉄骨や木造の2階建て・3階建ての建物で、問題が見つかりました。

どのような問題なのか、建物の図を使って、具体的に見てみます。

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▽「屋根裏」(=「小屋裏」ともいう)で部屋の境にあたる部分に壁がないもの、それと1階の天井と2階の床の間の「天井裏」の部屋の境界に壁がないもの、これらが合わせて1872棟、
▽2種類のボードを重ねることにしていた天井に、ボードが1枚しかないなど耐火性能が低いと見られるものが、641棟、
▽外壁に耐火性能が確認されていない壁を使っているものも、925棟、見つかりました。
いずれも、建築基準法違反にあたると見られています。

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他にも
▽屋根裏の壁に遮音性の低い建築材料を使ったもの、
▽天井裏の壁に隙間がある建物
なども見つかりました。

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レオパレス21が設計・施工した建物は、およそ3万9000棟あります。その3分の1まで調査した今の時点で問題のある建物は、軽微な不備も含めて、1万1000棟あまりにのぼっています。

これによって、どのような問題があるのでしょうか。
一つは、安全性です。

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屋根裏の壁や天井裏の壁、天井、外壁。これらは建物を部屋ごとに区切るもので、仮に火事が起きても他の部屋に火が広がらない、あるいは火の回りを遅らせて、逃げる時間を確保するという重要な役割をします。今回の問題では、その壁がなかったり、規定のものでなかったり していたということで、火が周囲の部屋に広がりやすくなっている恐れがあります。

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住んでいる人の命に関わる重大な問題なのです。

もう一つは、なぜこれだけ多くの建物で問題が見つかったのかという点です。一連の問題の原因について、レオパレス21は調査中だとしていますが、その経緯が一部わかってきています。

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例えば、屋根裏に壁がなかった建物については、「天井部分で延焼を食い止める構造にしているため、屋根裏の壁は必要ないと考えた」としています。
しかし、一般にこうしたことは認められません。

屋根裏に壁を作らないとするのであれば、そうした構造が妥当なのか行政に相談するなどの対応が必要です。

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しかし、相談どころか、建物を建てる前に行政に提出する「建築確認」では、こうしたことが問題にならない「壁がある図面」を提出していたということです。一方で、施工の際に使う図面では「壁がなかった」ということです。
これでは、建築確認で行政側のチェックが働きません。
レオパレス21は、建築確認の図面の担当者と、施工図面の担当者の間の連携に問題があったとしています。ただ、屋根裏の壁の重要性を考えれば、整合性のない図面をチェックできなかったとは、にわかには考えづらく、「建築確認の申請を通すためだったのではないか」と批判する声が出るのも仕方のないことだと思います。
異なる図面が作られた詳しい経緯を明らかにすることが求められます。

さらに疑問なのは、施工の段階でも気づかなかったとされる点です。一連の問題がわかったのも、会社側ではなく、建物のオーナーの指摘がきっかけでした。

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屋根裏や天井裏に壁がない建物だけでも、1872棟もあります。これだけの数の現場で、工事監理の責任者である建築士は、それぞれ、なぜ必要な壁がないことを問題としなかったのでしょうか。それとも見ていなかったのでしょうか。

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会社も、建物が適正かどうか確認する機会は数多くあったと考えられますが、なぜチェックできなかったのでしょうか。まさに、不可解といわざるを得ません。
国土交通省も、この点について詳しい調査を求めています。

では、再発防止に何が求められるのでしょうか。

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設計から施工、完成までの流れの中で、専門家からは「施工段階のチェックが重要だ」とする指摘が聞かれます。現場の工事監理が機能しなくても、もう一つ、行政側のチェックがあります。
行政側は完成したときに「完了検査」を行いますが、建物ができあがった後では天井裏や壁の内部などを調べるのは、簡単ではありません。

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そこで施工の途中に行う「中間検査」が再発防止につながると考えられます。しかし、この中間検査、「対象」や「検査を行うタイミング」は自治体によって異なります。
自治体の中には、2階建てのアパートを中間検査の対象にしていないところがあります。また中間検査は「耐震性」のチェックに重点が置かれ、壁を取り付ける前の柱や梁だけの時点で行うことにしている自治体もあります。
これでは、壁に問題があることをチェックできないことも考えられます。
今回のような問題を防ぐには、中間検査の対象を広げる、あるいは中間検査を複数回行うようにするなどの方法が考えられます。

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いずれにしても、「柱や梁の耐震性」だけでなく、「火事の危険を抑える壁」についても、施工段階で外部からのチェックが必ず入る、何らかの仕組みが必要ではないかと考えます。

レオパレス21は、耐火性能などに問題がある建物を補修するため、会社側が費用を負担して、入居者に順次引っ越してもらうとしています。

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レオパレス21には、住んでいる人たちや建物のオーナー(所有者)にどういったリスクがあるのか、随時十分な情報提供を行うとともに、今回の問題でオーナーが抱くアパート経営についての不安に、しっかり向き合うことが必要です。
建物の調査は今は途中段階で、まだ2万5000棟ほどの調査が残っています。これを速やかに進めることが求められます。

レオパレス21は、問題の見つかった建物は10年以上前に建設したもので、現在は、専門家によるチェックを取り入れるなどの対策をとっているため、「今後、同じようなことは起きないと考えている」としています。
しかし、法令違反や不備がある建物が漫然と建設され続けた、その根本的な原因や背景は何なのか。第三者による検証を行い、明らかにすることが必要です。

建設業界を巡っては、制振の建物などに使われるダンパーの不正をはじめ、マンションの杭の施工不良など、大勢の住民や所有者を巻き込む問題が、相次いでいます。
信頼は失われ、業者に任せていたのでは、「安心・安全な建物はできないのではないか」という不信も広がっています。新たに規制を設けるには、消費者・国民の理解を得ることが必要になりますが、いまの状況を見ると、もはや建設の各工程に外部のチェックを取り入れるといった仕組みづくりについて、本格的に議論しなければならなくなっていると思います。

(中村 幸司 解説委員)

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