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「平成最後の国会開会 論戦の焦点」(時論公論)

権藤 敏範  解説委員

平成最後となる通常国会がきょう(28日)召集されました。会期中の5月には、皇太子さまが即位され、新しい時代を迎えます。さらにことしは統一地方選挙と参議院選挙が重なる選挙の年でもあります。
こうした日程を踏まえて、政府・与党は、安全運転で国会を乗り切る考えでしたが、年明け早々に、厚生労働省の統計調査の問題が明らかになり、野党側が一斉に反発。早くも与野党の対決色が強まっています。安倍総理の施政方針演説を読み解きながら、内政、外交の順に、国会論戦の焦点について考えます。

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【安全運転の通常国会】
きょうから始まった通常国会。会期は、6月26日までの150日間です。
4月から5月にかけては、天皇陛下の退位と皇太子さまの即位が行われ、安倍総理は、冒頭の施政方針演説で、「国民がこぞって寿ぐことができるように、万全の準備を進める」と述べました。
今後の政治日程を眺めると、6月28日から、大阪市でG20サミット、その後には参議院選挙が行われる見通しで、会期の大幅な延長は難しいのが実情です。
このため、政府は、国会に提出する法案も、衆議院が解散された場合を除いて戦後2番目に少ない58本に絞り込み、対決法案も控えることにしています。
憲法改正をめぐっても、安倍総理は、去年秋の演説で、自民党の改憲原案提出や国民投票への意欲を隠しませんでしたが、今回は、「憲法審査会で、各党の議論が深められることを期待する」という表現に留めました。
政府・与党としては、静かな環境の中で、皇位継承を迎えたいというところでしょう。
しかし、こうした思惑を覆すかのような事態が、年明け早々に明らかになりました。
厚生労働省の統計調査の問題です。

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【統計問題】
賃金や労働時間の動向を把握するため、厚生労働省が毎月行っている「毎月勤労統計調査」の手法が不適切だったため、推計で、のべ2000万人の雇用保険や労災保険などが、本来より少なく支給されていました。
この問題を検証するために設置された、外部の弁護士などでつくる「特別監察委員会」の対応も批判を浴びました。
委員会は、今月22日に検証結果をまとめましたが、一部の職員への聞き取りを外部委員ではなく身内の職員が行っていた事が判明するなど、与野党から「お手盛り」だと批判が噴出、わずか3日後に再調査を行う事態となりました。
野党側は、「問題の解明なくして、予算の成立もない」などとけん制しており、国会では、▼組織ぐるみの隠蔽がなかったのか、▼去年から調査結果に手を加えたのは何故かなど、追求を強めることにしています。
さらには、根本厚生労働大臣の罷免を求める声も出ていて、早期の幕引きを図ろうとした政府の思惑は外れ、この問題は、今国会、当面の最大の焦点となりそうです。

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【アベノミクスと選挙】
きょうの安倍総理の演説で、特に印象的だったのは「経済が好調だ」とするアピールです。「この6年間、経済は10%以上成長」、「この冬のボーナスは過去最高」など、威勢のいい言葉が並びました。
背景には、ことしのイノシシ・亥年が、統一地方選挙と参議院選挙が重なる12年に1度の選挙の年だということがあるのでしょう。長期政権の求心力となってきた経済をアピールし、選挙の勝利につなげたいという思惑が見て取れます。というのも、自民党は、亥年の参議院選挙で苦戦してきた歴史があるからです。12年前、第1次安倍政権で行われた参議院選挙では37議席と大敗し、その後、安倍総理は退陣に追い込まれました。
ことしの参議院選挙も、自民党にとって楽な選挙ではありません。改選を迎える、6年前に自民党が獲得した議席は65議席と多く、3年前の56議席を獲得したとしても、議席を減らすことになります。

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日本は、景気回復の期間が戦後最長になった可能性が高まっているように、堅調な経済が、長期政権の求心力となってきました。しかし、一方で、実感が伴わないという根強い声があるのも事実です。政府・与党としては、経済の好循環を確かなものにするためにも、まずは、今年度の第2次補正予算案を早期に成立させる。そして、消費税率の引き上げに伴う景気対策の費用などを盛り込んだ、新年度・平成31年度予算案を、年度内に着実に成立させることができるのかが課題になると思います。

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【ゆれる野党共闘】
対する野党側の課題は、共闘体制を築けるのかどうかでしょう。
3年前の参議院選挙では、全国に32ある定員が1人の「1人区」で候補者を1本化したことが一定の成果を挙げただけに、今回もどこまで一本化できるのかがカギを握ります。
しかし、野党内では、参議院での主導権争いが先鋭化。野党第1党の立憲民主党が社民党と、第2党の国民民主党は自由党と、それぞれ統一会派を組んだほか、国会議員の引き抜きの動きもあり、今後の候補者調整への影響を懸念する声が出ています。
今月のNHKの世論調査で、各党の支持率は、自民党の35%に比べて、野党で最も高い立憲民主党でも6%と低調です。この国会では、結束して政権を追及し、存在感を示すことで、国民の野党への期待感を高める事ができるのかが、問われることになると思います。

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【“戦後外交”総決算…?】
一方、安倍総理の得意とする外交でも、決して楽観できる状況ではなさそうです。
きょうの演説で、安倍総理は、各国首脳と築き上げた信頼関係の下で、「戦後日本外交の総決算を行う」と強調しました。
▼安倍総理が、アメリカや中国とともに重視しているのが、ロシアとの領土交渉です。大阪でのG20にあわせたプーチン大統領の来日で、自身のレガシーとしても、領土問題の解決に道筋をつけたいのだと思います。しかし、25回目となる今月の首脳会談でも具体的な進展はなく、政府内にも長期化の見方が広がりつつあります。
また、▼北朝鮮による拉致問題では、解決のために、キム委員長との日朝首脳会談に意欲を示していますが、実現の見通しは立っていません。
さらに、▼隣国の韓国との関係悪化も懸念材料です。太平洋戦争中の「徴用」をめぐる判決以降、自衛隊機へのレーダー照射など、多くの問題が噴出し、収まる気配はありません。
こうした中、安倍総理は、きょうの演説で、韓国には、北朝鮮対応で連携する国の1つとして触れただけ。1年前に、「協力関係を深化させる」とした演説からは大きく後退しました。首脳レベルでの応酬は避けたいという狙いがあるのかもしれませんが、このままでは、関係改善への道は閉ざされたままです。

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【沖縄 基地問題は?】
さらに、国内に目を向けると、沖縄では、来月24日に、名護市辺野古沖の埋め立ての賛否を問う県民投票が行われます。安倍総理も、「辺野古移設を進め、普天間飛行場の1日も早い全面返還を実現する」と理解を求めていますが、県内では、環境破壊や軟弱地盤の問題で、反発は強まるばかりです。
県民投票のあと、4月には統一地方選挙にあわせて、衆議院沖縄3区の補欠選挙が行われます。参議院選挙の前哨戦と位置づけられるだけに、沖縄の問題は、この国会でも焦点となるでしょう。

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安倍総理は、きょうの演説で、「平成の、その先の時代に向かって、日本の明日を切り拓く責任を果たしていく」と決意を述べました。「その先の時代」には、自身の、憲政史上最長となる在任期間を見据えているでしょうし、レガシーを残したいという思いもちらつきます。
ただ、政権の長期化に伴い、強引な姿勢が強まっているという指摘は少なくありません。また、それを許している国会は機能不全だという批判にもつながります。
今国会は、早くも波乱含みで、参議院選挙をにらんだ動きも活発になるでしょう。だからこそ、国会が行政の監視機能という役割を果たして、政治に緊張感を取り戻すことが、何より求められていると思います。    

(権藤 敏範 解説委員) 

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