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「衆院選 原発をどうする」(時論公論)

水野 倫之  解説委員

福島第一原発の事故から6年半、これまで再稼働した5基に加えて、事故を起こした東京電力の柏崎刈羽原発も今月、審査に事実上合格するなど、再稼働の動き。
そうした中、今回の衆院選では野党の多くが原発ゼロを打ち出して自民党との対立軸が明確。
衆院選で問われるべき原子力政策の課題について、水野倫之解説委員の解説。

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福6第一原発では廃炉作業は進みつつあるが、溶け落ちた核燃料はようやくその一部が捉えられただけで、取り出しに向けた全容解明は遠い状況。

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また、福島県内では避難指示の解除も進んだが帰還をためらう人もいて、いまだ5万人以上が避難を強いられており、あらためて原発事故からの原状回復がいかに大変か。

福島がこうした状況にある一方で、原発再稼動の動きは加速。
事故後、火力発電が増えて電気代が上がりCO2も増えたことから、安倍政権は原発はコストが安いとして、2030年に全電源の20~22%をまかなう方針。

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これまでに12基が審査に合格し、5基が再稼動。
さらに今月、新潟県の柏崎刈羽原発も規制委の審査に事実上合格。

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原発をめぐるこうした状況に各党はどう対応しようとしているのか。

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与党自民党は、原発の依存度を可能な限り低減させるとしつつもベースロード電源と位置付け、規制委の審査に合格すれば再稼働を進めていくとして、原発維持の姿勢を明確に。
ただ連立を組む公明党は、原発ゼロを目指す。

これに対して野党は、原発に積極的なのは日本のこころだけ。
希望の党が、原発の運転を40年に制限するルールを徹底することで2030年までの原発ゼロを打ち出し、憲法にも明記すると。ただ当面の再稼動は認める。
維新の会は原発はフェードアウトに向かい、再稼動には避難計画への国の関与などが必要だと。
また立憲民主党は一日も早い原発ゼロを目指し、再稼働は現状では認めない。
さらに社民党は再稼働は一切認めず、早期のゼロ。
共産党は原発ゼロを決断し、すべて廃炉作業に入ると。

ただ各党とも、公約実現のための道筋についてはあいまい。
まずは原発への依存度。

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可能な限り低減させるという自民党ですが、今後どの原発を削減の対象とするのか、何基まで減らすのか明確にしてない。
原発の40年ルールを厳格に適用すれば老朽原発から自然に減っていくが、安倍政権は2030年に20%程度の原発割合を確保するために、40年経った原発についても運転期間を延長させて再稼働させる方針で、このままでは当面は減らない。

一方、年限に違いはあるものの原発ゼロを目指すとしている野党も、具体的にどのような方法でゼロに持っていくのかまでは説明してない。
希望の党は40年ルールの厳格運用をいうが、それだけでは2030年にゼロにならない。工程を示すとは言うもののいまだ示されていない。
また原発をゼロにした場合、代わりの電源をどうするのか。多くの党が再生可能エネルギーの活用を掲げてはいる。
現在15%しかないその割合を、希望の党は倍の30%まで、また共産党も30年代までに40%まで高めるなどと具体的な数値目標。
しかし、太陽光など出力の変動が大きい再エネが増えると電圧などが不安定になります。九州では電力会社が受け入れを断るケースもあり、送電網や蓄電池の整備が欠かせないが、コストがかかり進んでいない。

各党は、依存度低減に向けた具体的な道筋とともに、それを実現するための課題にどう取り組むのか、有権者に語ってもらいたい。

また再稼働を巡って、選挙後に焦点となってくるのが、東電にも再稼動を認めるのかという問題。

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柏崎刈羽の審査で規制委は、東電の原発事業者としての適格性を問題に。
ただ適格性に関する法的な基準がないため、結局規制委は東電が示した「福島の廃炉をやり遂げ、安全性より経済性を優先しない」という決意を原発の保安規定に盛り込むことで、適格性ありと判断し、事実上の合格。

しかし、こうした決意を東電が守っているかどうかをどう判断するのか、その基準は明確ではない。福島第一では、廃炉作業でミスが続いているほか、地元新潟県も不都合な情報を出すのに消極的な東電の体質に不信感。
規制委の審査合格はあくまで最低限の安全性をチェックするだけ。それに加えて今回東電の適格性も問題となっている。
しかし当面の再稼働を認めるとしている党の多くは、規制委の審査に合格した原発の再稼働を進めると、規制委任せで主体性がない。ここは国民に対する責任を持つ各政党として、適格性についてどう判断し東電にも再稼動を認めるのか、有権者に示してもらいたい。

そして原発を運転すれば必ず出る放射能レベルの高い、いわゆる核のごみの地下処分の問題。政府は夏、活断層などがなく、処分場の候補地となりうる可能性のある場所を示した地図を公表。

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公約の中には処分の前に暫定的に保管を進めるというものや国が責任を持つというものもあるが、地図提示をきっかけにどうやって地域の理解を得ていくのか、示してはいない。
簡単ではないが、原発を再稼働させようが原発ゼロにしようが待ったなしの問題。各党がどういう方針で取り組むのか、有権者としては知りたいところ。
選挙では有権者がしっかり選択が出来るよう、各党がこうした問題にどう取り組むのかはっきりと提示し、論戦が深まっていくことを期待したい。

(水野 倫之 解説委員)

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