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「福島第一原発 40年廃炉を実現するには」(時論公論)

水野 倫之  解説委員

政府と東京電力は、福島第一原発の廃炉工程表を改定。
使用済み燃料の取り出しは一部遅らせたものの、最難関となる溶け落ちた燃料の取り出しを2021年からはじめ、最長40年で廃炉を完了させるという計画の大枠は今回も堅持。
しかしこれまで捉えられた溶け落ちた燃料と見られる塊はごく一部にとどまり、全容解明には程遠く、廃炉の行く先は見通せないのが現状。
新たな工程表について水野倫之解説委員の解説。

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解説のポイントは
① 工程表の内容。
② 最難関となる溶け落ちた燃料の取り出し
③ 廃炉工程の課題

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新たな工程表は、政府を技術的に支援する原子力損害賠償・廃炉支援機構の検討をもとに政府と東電がまとめ、きょう開かれた関係閣僚会議で決定。

まず、使用済み核燃料の取り出しについて、3号機はこれまでの計画通り来年度から開始。しかし1号機と2号機についてはガレキの撤去や除染にさらに時間がかかることがわかり、これまでより3年遅らせ、2023年度から。

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そして今回最も注目されるのは、最難関となる溶け落ちた燃料の取り出しについて、格納容器を水で満たさず、空気中で取り出す「気中工法」を軸に行う方針を示した点。

溶け落ちた燃料はきわめて強い放射線を出していることから、当初は水を格納容器の上部まで満たして、上から取り出しを行う「冠水工法」が検討。
水には放射線を遮る効果があるから。
しかし事故でできた容器の穴をふさぐのが、技術的に非常に困難。

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そこで水で満たさず、格納容器の底に落ちた燃料については容器の横に穴を開けてロボットを投入して取り出す「気中工法」を軸に。

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ただ取り出し開始時期については遅らせず、1号機から3号機のいずれかで2021年を目指し、30年から40年で廃炉を完了させるという廃炉計画の大枠は堅持。

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溶け落ちた燃料の取り出しで、「気中工法」を軸にするのは、現実的な選択だが、放射性物質がより飛び散りやすくなり、作業員の被ばくや環境への影響を如何に抑えるかという点で、当初の「冠水工法」よりも難易度が高くなる。

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加えて格納容器内に状況の全容解明が程遠いの中、取り出し開始時期や廃炉完了時期を変えずに行けるというのは楽観的ではないか。

溶け落ちた燃料の状態がわかっているのはごく一部にとどまっている。
3号機には、水中遊泳型ロボットが投入され、初めて溶け落ちた燃料とみられる塊が捉えられた。
ただそれは大量の溶けた燃料のうちごく一部だけで、性状もわかっていない。

しかも1号機や2号機では格納容器の底の砂のような堆積物や原子炉の下の格子状の足場に穴が開いていることなどが確認されたが、いずれも溶け落ちた燃料そのものは捉えられず、全体像把握にはほど遠い状況。

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こうした状況は取り出し器具の開発作業にも影響。
大手メーカーがこのほど試作した、格納容器に送り込むロボットアームを取材。
全長は7m。人の腕のように動き、2tの力で溶け落ちた燃料を削り取る。
最大の特徴は電動ではなく油圧駆動。強い放射線で誤作動を起こしやすい電子部品を極力使わないことで耐久性を高めた。
計画では格納容器の側面に穴を開け、レール伝いにこのロボットアームを投入し、削り取ったデブリを容器に入れ運び出す。
ただ今後小回りがきく、より小型のも開発しなければならないだろうとのこと。格納容器の内部の状況がよくわからないため、仕様を確定させることができないから。
さらにこのアームが機能するためには、別に格納容器に穴を開ける器具や削り取る器具、さらには燃料を回収する専用の容器も必要。すべてが開発されないと取り出しには着手できない。

このように課題は山積、状況このままでは2021年からの取り出し開始はかなり困難ではないか。急がば回れ。
この先着実に進めるためにも、今やらなければならないのは3機ともさらに内部状況を詳細に把握すること。そしてその調査の工程こそ示していかなければならない。
前回2号機で行われた調査では、作業員がさおの先につけたカメラを突っ込んで見る単純な方式が最も成果を上げた。被ばく対策をした上で人の手作業による確実な調査も組み合わせて、容器内部の全容を明らかにできるような計画づくりを早急に進めなければ。

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そして30年から40年で廃炉を完了させるという計画も全体像が見えない。今後溶けた燃料の取り出しが始まれば、当面どこに保管して最終的にどこにどう処分するのかが課題となってくる。最長40年で完了させるというのであれば、保管や処分に至る道筋こそ示していかなければならない。

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(水野 倫之 解説委員)

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