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「東電に 原発再稼動の資格はあるか」(時論公論)

水野 倫之  解説委員

東京電力に、再び原発を運転する資格、適格性があると言えるのか。
柏崎刈羽原発の審査で、原子力規制委員会はきょうあらためて東電の社長を聴取した結果、近く審査書案を取りまとめることに。事実上の合格を意味。
審査では、東電の適格性が焦点となり、規制委は最終的にあると判断した。
しかしこれまで、都合の悪い情報を出すのに消極的な東電の体質が度々問題に。それでも適格性ありといえるのか、水野則之解説委員の解説。

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解説のポイントはまず今回、異例は審査。そして規制委の懸念に東電はどうこたえたか。さらに、適格性判断の問題点以上3点から今回の審査を考える。

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規制委はきょうの会合に東電の小早川社長をあらためて呼んだ。そして「経済性より安全性を優先する」などと、先に文書で示した東電の決意について、事業者が守るべき原発の管理ルールを定めた保安規定に盛り込むよう求めた。
これに対して小早川社長は規定に盛り込む方針を示した。
これを受けて、委員全員が東電に原発を運転する適格性があるとの判断を再確認、事実上の審査合格を決めることになった。

本来、規制委が行う審査は、技術面を確認。
それが今回適格性も問題にしたのは、東電が福島の事故を起こした当事者だから。

東電は福島で15mを超える津波を予想するも結局対策を取らず事故を招いた。国会の事故調は人災だと指摘。
また事故対応では、メルトダウンが明らかだったのに、当時の社長の指示で隠蔽。
さらに廃炉作業でも警報が鳴っても、計器の故障と決め付けて関係者への連絡が翌日になるなど、安全に対する姿勢がたびたび批判。

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にもかかわらず今回の審査でも、その体質がいまだ改善されていないと疑わざるを得ない事態が発覚。

防潮堤の地盤が地震で液状化するおそれがあることを規制委から指摘されたが、なかなか認めようとしなかった。
さらには、緊急時の対策所に使うはずだった免震重要棟の耐震性が不足していることを3年前に把握していたにもかかわらず、報告していなかった。
結局教訓が生かされていないのではないか。

こうした疑念を受けて規制委は今回、適格性を問うことにした。
ただ法律上、適格性に関する明確な基準はないため規制委は手探り状態、まずは7月に小早川社長ら新経営陣を呼んだ。
福島の廃炉と両立できるか懸念したから。放射性物質のトリチウムを含む大量の水処理をどうするのか、東電に具体策を問いただしたが、
小早川社長が政府を頼ろうとするような姿勢を見せたことから規制委は「東電の主体性が見えない」と厳しく批判。

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東電はあらためて文書で回答するも、その内容は、
「福島の廃炉をやり遂げる」
「廃炉と柏崎刈羽の安全性を両立させる」
「安全性より経済性を優先する考えはない」などと、決意こそ示されていましたが、汚染水対策などの具体策や廃炉の道筋は示されなかった。

私は、一連のやり取りを取材していて、東電が規制委の懸念にきっちりと答えていないことから東電の適格性を判断するにはまだしばらく時間がかかるだろうと見ていた。

ところが今月に入って厳しい態度が一転。
会合で「福島の事故はほかの電力会社でも防げなかった」などと東電を評価する意見。

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そしてきょう東電が、文書で示した決意について保安規定に書き込む意向を示したことから、東電の適格性を認め、来週にも事実上合格させることとなった。保安規定に違反した場合は、運転停止などを命令できることから、規制委は決意内容の実効性が担保できると説明。

規制委が、今回あえて東電の姿勢や適格性を問題にした点は評価。
しかし、東電が示した決意は、何も特別なことではない。

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東電に具体策を示すよう求めていた規制委が、なぜ決意表明をもって適格性があると判断したのか。田中委員長の任期が今週22日に迫る中、手続きを急いだようにも見えるわけで、規制委には納得のいく説明が求められる。
また原発を運転する資格・適格性については法律上はっきり規定されていない。まずは規制委として東電の適格性を判断するための根拠を明確に示した上で、それに合致しているかどうか、筋道立てて審査していかなければならない。

ただ今後合格となったとしてもすぐに再稼動できるわけではなく、地元の了解が必要となるが地元は東電の体質を懸念。

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新潟県の米山知事は、「県民の命と暮らしが守られない現状では再稼動は認められない」として、福島の事故を調査する専門家による会合を立ち上げ、独自に検証。
東電の体質が改善されたのかどうか、規制委がこの点をどう判断したのかについても、地元に対して説明を。

(水野 倫之 解説委員)

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