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「新代表に前原氏 民進党再生の課題は」(時論公論)

安達 宜正  解説委員

民進党の新しい代表に前原誠司氏が決まりました。旧民主党時代、いわゆる、「にせメール事件」で代表を退いて以来、およそ11年ぶりの代表復帰です。代表選挙の結果を分析し、民進党再生の課題を考えます。

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民進党の保守派とリベラル派。それぞれを代表する前原元外務大臣と枝野元官房長官の一騎打ちとなった今回の代表選挙。党を二分する戦いとなりましたが、前原氏が終始、優位に戦いを進めてきました。勝因は国会議員の支持です。民進党代表選挙は国会議員とその候補者、地方議員、それに党員・サポーターにそれぞれポイントが割り振られ、その合計で決まります。前原氏はポイントの3分の1を占める、国会議員の票で枝野氏に大差をつけました。

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なぜ、前原氏は国会議員の支持を広げることができたのでしょうか。
かなり早い段階から、前原氏は代表選挙に向けた準備を進めていたからです。前原氏は今からちょうど1年前、蓮舫代表を選んだ去年9月の代表選挙にも立候補しています。しかし、このときは蓮舫氏に惨敗しました。
その後、前原氏はみずからに近い国会議員に留まらず、これまで疎遠だった議員とも積極的に交流してきました。また連合などの支援団体の幹部とも頻繁に接触、関係を築いてきました。ある支援団体の幹部は私の取材に、「今度は前原支持だ。人の話をきちんと聞くようになった」と話していました。前原氏は保守系や中間的な議員に加え、旧民社系や旧維新など幅広い勢力から支持を受けることに成功しました。

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ただ、枝野氏も国会議員のおよそ4割の支持を集めたほか、地方議員では前原氏に迫る票を獲得しました。

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最大の争点となった、共産党も含む野党連携のあり方をめぐる党内の意見が二分されていることが浮き彫りとなりました。一方、民主党時代から要職を占めていた2人の戦いでは「どちらが当選しても、党の刷新にはつながらない」とさめた目で見ていた議員もいたことも事実です。今回ほど世論の関心の薄い、代表選挙は初めてと話す議員もいました。8人の議員が白票など無効票を投じたことはそれを象徴しているのかもしれません。

民進党は民主党時代から党勢の浮き沈みが激しく、何度もがけっぷちといわれてきましたが、今回はその危機感をより一層、強く感じる選挙となりました。理由は大きく2つあります。1つは代表選挙を前に国会議員の離党が相次いだこと、もう1つは支持率の低迷です。

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まず、1つ目です。民進党は7月の東京都議選で惨敗、それが蓮舫代表の辞任につながりました。しかし、影響はそれに留まらず、都議選をはさんで、4人の国会議員が離党しました。その1人。細野元代表代行。代表選挙への立候補経験もある、リーダーの1人でした。代表選挙で党改革を訴えるという選択肢を取らず、民進党を見限ったという見方もできます。もう1つ。支持率の低迷です。NHKの8月の世論調査。民進党の支持率は5.7%です。自民党は34.8%、大きく水をあけられているどころか、公明党や共産党にも迫られていると見ることもできます。
焦点は幹事長人事に移っています。枝野氏を主要ポストで起用し、挙党体制で臨むべきだという意見がある一方、枝野幹事長では前原氏を推した議員が納得せず、それこそ「変り映えしない」という声もあり、前原氏は来週はじめまでに人事を決める方針です。

当面の政治日程を見てみます。

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今月25日頃に臨時国会召集、来月22日には3つの選挙区で衆議院補欠選挙が行われます。来年12月には衆議院議員の任期が切れます。最初の関門は衆院補選です。いずれも自民党が議席を持っていた選挙区で、自民党は公明党の協力を得て、議席の維持を目指します。
一方の民進党。共産党、自由党、社民党の野党4党で「衆議院選挙でもできる限り協力する」ことで合意しており、共産党などはこの合意を踏まえ、補欠選挙での候補者一本化を急ぎたいとしています。しかし、前原氏は代表選で「衆院選は政権選択選挙。理念なき連携は野合」と、共産党との連携のあり方を見直す考えを示しました。また陣営には共産党よりも、小池東京都知事らとの連携を模索すべきだという声もあります。前原氏がこの言葉通りに動けば、一本化調整に支障をきたすという見方も出ています。

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ただもっとも、民進党と共産党が別々の候補を立てれば、厳しい戦いを強いられるという現実は十分に承知しているという指摘もあります。きょうの演説でも、前原氏。「連携や協力の可能性を排除しない」と述べています。前原氏の本音は自由党や社民党と新党にもつながるような大きな枠組みを作り、その上で共産党との関係を考えるという意味だと説明する議員もいます。いずれにしても前原氏が補欠選挙での野党連携をどう判断するのか、補選の選挙結果に留まらず、来年12月までには必ず行われる衆議院総選挙にも影響を与えることになります。

一方、憲法改正問題への対応も焦点です。自民党は2020年の改正憲法施行を目指し、来年、国会で憲法改正の発議を行う姿勢を変えていません。民進党はこの問題でも、共産党などと、「安倍政権の下での憲法改正には反対する」ことで合意しています。前原氏も「安倍総理の実績作りに組みしない」と述べています。

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しかし、与党には民進党と協議しながら、発議案のとりまとめを目指すべきだという意見が強く、前原氏ならば協議に応じるという期待もあります。実際、前原氏は「安倍政権の下で憲法改正論議を行わないという姿勢では国民の理解が得られない」とも述べています。これまでも憲法改正にたびたび言及し、周辺も憲法改正に積極的な議員が多数を占めている前原氏。結局は与党との協議に応じるという見方を示す議員も少なくありません。

以上、見てきましたとおり、野党連携や憲法改正など、党内に意見の違いを抱える問題にどう対処するか、前原氏の最大の課題となります。民進党を離党した議員はこうした問題をめぐる執行部の対応への不満を理由にあげています。細野氏は同じく民進党を離党した長島元防衛副大臣や小池知事側近の若狭衆議院議員らと協議を重ね、年内の新党結成を目指しています。前原氏が代表選挙の主張したとおり、共産党との連携や憲法問題への対応を見直さなければ、無効票を投じた議員を中心に細野氏らに合流する議員が出るという見方が出ています。一方で対応の見直しは枝野氏を支持した議員の反発を強めることにつながり、難しい対応を迫られることになりそうです。

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前原氏は今回の代表選挙。「オール・フォー・オール」を掲げました。「『みんながみんなのために』。助け合いの社会を築きたい」という訴えです。民進党の弱点は▼民主党時代の負の遺産が必ずしも払拭できていないことと、▼党のバラバラ感、一体性が保てないことと言われています。民主党政権で主要閣僚をつとめた前原氏。責任がある一方で、教訓を活かせる立場でもあります。民進党の政治文化を「オール・フォー・オール」。意見の違いはあっても、お互いが助け合える党に変えられるかどうか。前原新代表の仕事はまず、そこから始まるように思います。

(安達 宜正 解説委員)

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