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「日米2プラス2 対北朝鮮戦略は」(時論公論)

増田 剛  解説委員

日本とアメリカの外務・防衛の閣僚協議、2プラス2。
北朝鮮が、グアム島周辺に向けた弾道ミサイル発射計画を検討していると発表し、米朝の緊張が続く中で、行われました。
日米両国は、北朝鮮の脅威にどのような戦略で向き合い、どのような防衛態勢を構築するのか。この問題について考えます。

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今回の2プラス2は、ワシントンで、現地時間の17日、日本時間の昨夜遅くからきょう未明にかけて、行われました。

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トランプ政権が発足してから初めての開催で、日本からは、河野外務大臣と小野寺防衛大臣、アメリカからは、ティラーソン国務長官とマティス国防長官が出席しました。

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4人の閣僚は、共同発表を行い、「北朝鮮の核・ミサイル開発は、新たな段階に入り、増大する脅威となっている」と指摘しました。
そして、「各国と協力して、圧力をかけ続けることで一致した」とした上で、中国を名指し。「北朝鮮の一連の行動を改めさせるよう、断固とした措置をとることを強く促す」と強調しました。
これは、日米両国が、当面、外交面では、「圧力」路線を取る方針を明確にしたものです。同時に、「中国は十分な役割を果たしていない」という、日米のいらだちをうかがわせるものでもありました。

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また共同文書では、「アメリカの核戦力を含むあらゆる種類の能力を通じた、日本の安全に対する同盟のコミットメントを再確認した」と明記されました。これは、アメリカによる「核の傘」を含む「拡大抑止」という考え方で、要するに、北朝鮮が日本を攻撃した場合には、アメリカは、核兵器の使用も含めて北朝鮮に報復する意思を明確にしたということです。日米の強固な連携を誇示し、北朝鮮の日本に対する軍事行動を抑止する狙いです。
さらに、今回、注目を集めたのが、北朝鮮によるグアム島周辺に向けたミサイル発射計画への対応でした。
この問題の経過をみていきます。
先月、ICBM=大陸間弾道ミサイル級のミサイルの発射を2度にわたって強行した北朝鮮。

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国連安全保障理事会は、今月5日、北朝鮮の収入源になっている石炭、鉄鉱石、海産物の輸出について、一切、禁止するとした、新たな制裁決議を採択しました。
一方、アメリカの有力紙ワシントンポストは、8日、北朝鮮が、ICBMにも搭載できる、核弾頭の小型化に成功しているとする分析を、国防総省がまとめたと伝えました。
トランプ大統領は、北朝鮮を強い口調で非難します。
「北朝鮮はこれ以上、アメリカを脅すべきではない。世界が見たこともないような炎と激しい怒りに直面することになる」
非難の応酬の始まりでした。
朝鮮人民軍は、声明を発表。「アメリカに厳重な警告を送るため、中距離弾道ミサイル『火星12型』でグアム島周辺への包囲攻撃を断行するための作戦を慎重に検討している」
具体的な軍事行動を示唆して、アメリカを強く威嚇したのです。

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続いて、作戦計画の詳細を発表。
ミサイル4発の同時発射を検討しているとし、「日本の島根県、広島県、高知県の上空を通過し、3356点7キロの距離を1065秒間、飛行した後、グアム島の周辺30キロから40キロの海上に落ちるだろう」と、具体的な飛行ルートまで予告しました。

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トランプ大統領は、「軍事的に解決する手段は、完全に整っている」と、ツイッターに投稿。緊張は、かつてないほど高まりました。
ただ、今週に入り、キム・ジョンウン委員長は、「アメリカの行動をもう少し見守る」と述べたとされています。
情勢を見極めるための時間稼ぎでしょう。
トランプ大統領は、「賢い決断を行った」と反応し、当面の危機は回避されたという見方も出ています。
一方、ミサイルが上空を通過すると予告された日本。

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ミサイルが予定のコースを外れ、部品や破片が日本の領土に落ちてくるような事態に備えて、島根、広島、高知、愛媛の4つの県の自衛隊駐屯地に、地対空迎撃ミサイルPAC3を配備しました。

こうした北朝鮮の威嚇に対し、日米同盟は、どう対応するのか。

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マティス国防長官は、「日本、アメリカ、韓国の領土に向かう場合は、即座に迎撃態勢を取る。いかなる戦争行為の開始も、圧倒的な反撃に遭うだろう」と述べ、北朝鮮に強く警告しました。
その一方で、ティラーソン国務長官は、「軍事的な備えもしているが、我々の望む道ではない。我々は、北朝鮮に対話をさせるために、圧力をかけている」と述べています。温度差があるようにも見えますが、有力紙ウォールストリートジャーナルは、2人が「よい警察官と悪い警察官」として役割分担をしていると分析しています。

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「アメリカと同盟国を攻撃する敵には、容赦しない。多少、手荒い手段を使っても、叩きのめす」という、いわば悪役のマティス長官。
「北朝鮮が心を入れ替えるなら、手を差し伸べてもいい」という、
善玉のティラーソン長官。硬軟、織り交ぜた対応です。
トランプ政権としては、軍事的な選択肢も含め、最大限の圧力を加える一方で、対話も排除しない姿勢を示すことで、核・ミサイル開発を続けるのか、それとも、計画を中止して対話を模索するのか、北朝鮮に選択を迫ったということでしょう。
一方、共同文書には、日本の防衛能力強化の方針も盛り込まれました。
日本のミサイル防衛は、イージス艦に搭載した海上配備型の迎撃ミサイルSM3と、地上配備型のPAC3の二段構えです。

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ただ、北朝鮮のミサイル技術の進展は急速で、最近は、同時に4発のミサイルを発射することもありました。現在、自衛隊が保有するSM3搭載のイージス艦は4隻ですが、これだけでは、対応できない可能性があるため、防衛省は、さらに4隻を整備し、8隻体制の構築を急ぐことにしています。

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また、防衛省は、地上配備型で、イージス艦と同様の能力があるアメリカの新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を導入する方針を固め、設計費を来年度予算案の概算要求に盛り込むことになりました。これには、迎撃態勢を強化するとともに、イージス艦を運用する海上自衛隊の負担を軽減する狙いもあるとされています。
ただ、イージス・アショアは、1基あたりの費用が800億円とされ、日本全土をカバーするには、2基は必要だとされています。近年、増加が続いている日本の防衛費を、更に押し上げることは確実です。
北朝鮮の脅威を踏まえれば、防衛態勢の拡充は急務ですが、だからといって、やみくもに増やしていいわけではありません。今後、費用対効果も含めた、不断の検証が必要でしょう。

今回の2プラス2は、北朝鮮による危機のさなか、日米が強固な連携を誇示したこと、それ自体に意義があったと思います。ただ、これをもって、北朝鮮が、危険な挑発行為をやめるかどうかは不透明です。
むしろ、やめない公算が大きいと考えるのが賢明でしょう。
その前提で考えるならば、日米は、外交面では、国際的な包囲網を強化し、「対話」と「圧力」を組み合わせたアプローチで、粘り強く、北朝鮮の軟化を促していくしかありません。

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同時に、安全保障面では、北朝鮮の軍事力が極めて危険な域に達している現実を冷静に認識し、これ以上、危険な行動を起こすことを思いとどまらせるための「抑止」能力と、不測の事態に備えた「防衛」能力の向上に、力を注ぐ必要があります。「対話」と「圧力」。そして、「抑止」と「防衛」。こうした観点のもと、日米両政府には、北朝鮮の現実的な脅威認識を踏まえた、戦略的な対応が求められています。

(増田 剛 解説委員)

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