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「エネルギー計画 原子力政策の見直しを」(時論公論)

水野 倫之  解説委員

政府は国の中長期的なエネルギー戦略の方針を示すエネルギー基本計画の改定作業を始めた。大きな焦点となるのが原発。
前回計画で、依存度を可能な限り低減するとされたものの、あいまいな点が多く残されている上に、この間、再稼動は政府の思惑通りには進まず、もんじゅも廃炉となるなど状況が大きく変わったから。
しかし経済産業省は、議論の前から前回と骨格は変えないと説明。
これで民主的な改定作業となるのか。
焦点の原子力の課題について、依存度低減、2030年の原発比率、核燃料サイクル、以上3つのポイントから水野倫之解説委員の解説。

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エネルギー基本計画は法律で3年ごとに改定することになっていることから、経済産業省はエネルギーや環境分野の専門家を集めた検討会を立ち上げ、きのうから議論開始。
大きな焦点となるのは原子力。
専門家からは「今後も原発に頼るのであれば、建て替えについても議論しなければならない。」といった意見や「再稼動への反対は根強く、再生可能エネルギーをもっと重視すべきだ」などの意見。

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しかし世耕経済産業大臣が、会議が始まる前から「計画の骨格を変える段階ではない」と強調している点に違和感。前回から3年しかたっていないためとその理由を説明しているが、この3年間で原子力の状況は大きく変わっており、結論ありきではない。

まず、前回原子力はどう位置づけられたか。

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依存度については「可能な限り低減する」としつつも、「重要なベースロード電源」と位置づけ。
2030年の全電源に占める原発比率は20から22%を目指すことになり、再稼動を加速させる方針が明確に打ち出された。
さらに使用済み燃料を再利用する核燃料サイクルも維持。

しかしこの前回の計画、実現が非常に困難とみられている点あり。

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まず依存度の低減、可能な限りとは言うものの、具体的に何基まで減らすのか明確にされていない。2030年の原発比率20%あまりを実現するためにはおよそ30基の原発の再稼動が必要。これは30基まで減らすということを意味するのか、さらにそれ以上の削減を目指すのか?

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実際、再稼動の判断は電力会社にまかされていて、すでに26基が再稼動申請。さらに残る原発も多くが将来的に再稼動を目指している。

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たしかに事故後に、依存度の低減を目指して原発の運転期間を40年に制限するルールが導入された。
ただ2030年に30基を確保するには老朽原発も10基以上再稼動させなければばらない。
実際その後電力会社が申請した老朽原発は優先的に審査が行われすべて運転延長が認められた。40年ルールは形骸化し依存度低減にはつながらない。
今後どのような方法で何基まで減らすのか、今回の改定作業では具体策を示していかなければ。

次にそもそも2030年の原発比率20%あまり、30基の再稼動という目標自体の再検証も必要。

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NHKの世論調査でも原発の再稼動に賛成が13%なのに対して、反対が48%。

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さらに再稼動は政府の思惑通りには進まず、これまでに5基にとどまっている。今年さらに4基の再稼動が見込まれるが、その先再稼動を目指す原発の中には、審査が長期化しているものがあるほか、地元の理解が得られる見通しがたっていない原発もあり、30基以上の原発の再稼動はそもそも困難だと見る専門家も。
比率が達成できなければその分の電力供給をすでにある火力発電で補えばCO2の排出量が増え、パリ協定の約束が達成できなくなるおそれも。
では再生可能エネルギーをさらに増やしてその分を補うことができるのか。どうかも含めて各電源の比率を再検証しなければならない。

そしてもう一点が核燃料サイクル。

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前回は、使用済み燃料をすべて再処理してプルトニウムを取り出し、高速増殖炉で繰り返し使う核燃料サイクルを推進するとしていた。しかしその要に位置づけられていた高速増殖炉もんじゅが、トラブル続きで政府は去年、廃炉に。
しかし政府は見直すどころか、核燃料サイクルは堅持し、もんじゅの先の、より大型の実証炉を目指す方針を決め、現在工程表作りを進めている。

もんじゅが失敗したのになぜ見直さないのか。
背景には、一般の原発の再稼働を順調に進めたいという政府の思惑。

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再処理工場がある青森県としては使用済み燃料を置きっぱなしにされては困るため、核燃料サイクルを続けることを受け入れの条件と、やめるのであれば使用済み燃料を元の原発に返すと表明。
そうなるとプールが満杯になり原発が稼働できないわけで、政府としては、高速炉開発の旗を掲げておかなければならないわけ。
やはり今回の公開の場で、あらためて核燃サイクルの見直しを議論していかなければならない。

(水野 倫之 解説委員)

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