NHK 解説委員室

解説アーカイブス これまでの解説記事

「九州北部 集中豪雨の猛威」(時論公論)

松本 浩司  解説委員

九州北部の記録的豪雨は福岡県や大分県を中心に広い範囲に川の氾濫や土砂災害など大きな被害をもたらしました。災害から丸1日たちましたが、多くの人が孤立し被害の全体像はつかめていません。豪雨の原因やこれまでにわかった被害の状況、今後注意すべきことについてお伝えします。

j170706_mado.jpg

解説のポイントは3つ。

j170706_1.jpg

▼集中豪雨はなぜ起きたのか
▼被害の状況と行政の対応
▼豪雨災害にどう備えるのか

【集中豪雨はなぜ起きた】

j170706_2.jpg

今回の災害は台風3号が九州を通過したあと、停滞した前線による記録的豪雨によって発生しました。台風で大きな被害が出ずにほっとしたところを不意打ちされたような格好です。

福岡県朝倉市では24時間の雨の量が540ミリを超え、平年の7月1ヶ月分のおよそ1.5倍に達しました。なぜ大雨になったのでしょうか。

j170706_3.jpg

天気図です。九州北部付近に前線が停滞し、それに向かって太平洋の高気圧の淵をまわる暖かく湿った空気が流れ込みました。
気象庁によりますと、これが福岡県と佐賀県にまたがる脊振(せふり)山地にぶつかって北部九州上空に集まり、再び山にぶつかり上昇気流になって雨雲が次々に作られました。
発達した積乱雲が帯状に連なる「線状降水帯」となり、福岡から大分にかけての地域にかかり続けたと見られます。

午後から夜にかけての上空1500メートルの風の流れを見ますと、西よりの風が同じ角度で入り込み続け、被災地上空で集まっていることがわかります。風の流れ、角度が変わらなかったことから同じ場所で激しい雨が降り続く局地的豪雨につながりました。こうした局地的豪雨がどこで発生し、どれくらい続くのかなど、今の予報技術でも正確に予測するのは難しいの実情です。

【被害の状況と行政の対応】

j170706_05_1.jpg

被害の全体像はまだはっきりわかっていませんが、被害が集中したのは集まった風のいわば通り道になった筑後川の流域です。川が氾濫したのがみず色のところ、土砂災害が確認されたのが茶色のところです。いずれも筑後川に注ぐ支流、それも北側の山から流れ込む
支流に集中しています。南西よりの風が山にあたり北側に積乱雲がかかり続けたことをうかがわせます。

j170706_06_1.jpg

これまでに九州では6人が死亡し、8人がけがをしました。このほか東峰村(とうほうむら)では3人が行方不明になっています。さらに東峰村(とうほうむら)では420人が孤立した状態になっています。

総務省消防庁や自治体などは被害の把握を急いでいます。しかし、川の上流域の山間部で、地区全体が孤立したり、通信手段が途絶えたりしているため、今もなお被害の全体像を把握するのが困難な状態です。行方不明者の捜索や孤立した人たちの救出に全力をあげてもらいたいと思います。

一方、自治体の対応はどうだったのでしょうか。今回の災害はおととしの関東・東北豪雨を思い出せます。国が管理する長大河川の流域の広い範囲で被害が出た点が共通しています。
関東・東北豪雨を教訓に、大きな川の流域で地域が連携して被害を減らす取組みが全国で進められていて、筑後川でも始まっていました。

j170706_07.jpg

去年、流域の市町村と川を管理する国の河川事務所、気象台などが集まって協議会を作り、協力して避難などソフト対策で被害の軽減につなげようという取組みです。
具体的には、大雨のときに河川事務所や気象台が市町村長に直接、情報提供とアドバイスをして避難勧告の判断を助けたり、実践的なハザードマップづくりを進めたり、また大雨が予想されるときに状況に応じて段階的に防災対応をとっていくタイムライン防災を行うなどです。今年度から5年計画で進めるものですが、情報提供とアドバイスは今回も行われました。



河川事務所からは流域6つの市町村に19回連絡がありました。

j170706_08.jpg

例えば、福岡県うきは市の場合、昼過ぎに大雨警報が出た後、河川事務所の所長がホットラインで市長に猛烈な雨について注意を促したのが午後5時15分、これを受けて午後5時40分に避難勧告、特別警報が午後5時51分に出たのを受けて午後6時10分により強く避難を指示する避難指示に切り替え、さらに河川事務所から近くの川が氾濫危険水位を超えたという情報が午後7時に伝えられています。

市町村長が避難勧告などを判断するうえで川の管理者が直接アドバイスする仕組みは
役に立ったと言えそうです。ただ、うきは市で避難指示が出された3地区には5700人が住んでいますが、実際に避難所に避難をしたのは63世帯、92人にとどまりました。
災害対応を落ち着いたところで、避難情報の伝え方や住民の対応などを検証する必要がありそうです。

【豪雨災害にどう備えるのか】
最近は、かつてなかったような豪雨が全国各地で降るようになり、毎年、大きな災害が起きています。

j170706_09.jpg

▼74人が亡くなった3年前の広島土石流災害、
▼多くの住民が孤立し4300人が救助されたおととしの関東東北豪雨、
▼去年の台風10号は観測史上はじめて太平洋側から東北に上陸し、岩手や北海道に大きな被害を出しました。梅雨はこれから後半で、秋の台風シーズンまで大雨への警戒を怠れません。どう備えたらよいのでしょうか。

まず自分の住む地域にどういう危険があるのかを知る必要があります。多くの市町村がハザードマップを公表しています。土砂災害については警戒区域とより災害の危険性の高い特別警戒区域があります。河川の浸水ハザードマップも作成が進んでいて、家屋が流出するような激流が予測される地域と浸水する地域を分けて示すところもあります。

自分の住む場所がこうした危険箇所にあたる場合は、大雨警報や特別警報などの気象情報や市町村が発表する避難勧告や指示などを聞き逃さないようにして、早めの避難を判断する必要があります。

j170706_10_1.jpg

そのために日ごろからどこに避難したらよいのか、ハザードマップで避難場所とそこへのルートを確認しておく必要があります。夜間、避難が遅れてしまった場合、土砂災害の危険個所であればがけから離れた部屋に身を寄せたり、川の浸水であれば2階以上の高いところに避難をすることも命を守る可能性を高めます。これはあくまで逃げ遅れた、最悪の場合であって、そうならないよう、特にお年よりは明るいうちに早めに避難することを心がけてもらいたいと思います。

【まとめ】
福岡や大分の被災地ではまだ多くの人の行方がわからなかったり、孤立したりしています。
捜索活動や孤立した人の救出、避難を続けている人たちへの支援に全力をあげる必要があります。また福岡や大分に出されていた大雨の特別警報は解除されましたが、九州などは引き続き大気の状態が不安定で、大雨が降りやすい気象状況が続いています。備えを確認してもらいたいと思います。

(松本 浩司 解説委員)

キーワード

関連記事