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「東京都議会議員選挙 焦点は」(時論公論)

西川 龍一  解説委員
安達 宜正  解説委員

東京都議会議員選挙が、告示され、7月2日の投票日に向けて9日間の選挙戦が始まりました。これまで選挙結果が国政にも影響を与えることが多かった都議会議員選挙について、政治担当の安達解説委員とともに考えます。

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(西川)
東京都議会議員選挙は42の選挙区があり定員は127人。国内最大規模の地方議会です。

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今回の選挙では259人が立候補しました。このうち都議会や国会に議席を持つ政党や政治団体の公認候補は▽自民党が60人▽公明党が23人▽共産党が37人▽民進党が23人▽都民ファーストの会が50人▽東京・生活者ネットワークが4人▽日本維新の会が4人▽社民党が1人となっています。

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各党が国政選挙並みの態勢で臨む都議会議員選挙ですが、安達さんは今回の焦点をどう見ていますか?

(安達)
大きく3つです。1つは小池知事が率いる、都民ファーストの会が選挙協力を行う、公明党などとあわせて、都議会の過半数64議席を確保できるのか。もう1つは都議会第1党の座を自民党が維持できるのかどうかです。
当初、小池知事は「都民ファーストの会」として、都議会の過半数を超える候補を擁立するのではないかと見方もありましたが、結局、公認候補は50人に留まりました。公明党などとの選挙協力を優先させた結果です。一方、自民党はすべての選挙区に60人の候補を擁立。候補者全員が当選した前回よりも多い候補者数です。また、国政野党の共産党や民進党などの議席の行方も焦点です。

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(西川)
都議会議員選挙の特徴の1つが、選挙のたびに3分の1程度の議員が入れ替わると言われていることで、当選回数1、2回という議員が6割を占めています。
背景にあるのが、時代の空気を反映する無党派層の動きが大きいことで、国政の動きを先取りする形で、そのまま選挙戦に反映されることも多く見られました。1993年の都議選では、政治不信の高まりから日本新党が躍進。前々回2009年の都議選では、民主党が第1党となり、その後の政権交代につながりました。そして前回、4年前の選挙では自民・公明両党の候補者が全員当選して過半数を占め、直後の参議院選挙で自公が圧勝しました。

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(安達)
今回は東京都の問題が大きな争点になっていることも確かだと思います。1つはこの1年間の小池都政をどう評価するか。もう1つは、小池都政の評価に関わりますが、告示直前に小池さんが発表した「築地市場の移転問題」だと思います。
1つ目で言うと小池知事は去年の知事選挙ではすべての国政政党と戦う形で、当選しました。自民・公明の国政与党も、民進党や共産党など野党4党も対立候補をたてました。都議のうち、小池知事を支援したのは数人でした。そこから始まった都政運営ですが、「東京大改革」を掲げて、世論の追い風を受け、今では公明党や民進党なども小池知事と連携しています。西川さんは、小池知事のこれまでの都政運営をどう思いますか

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(西川)
問題提起型の都政運営によって世論を味方に付けてきたということだと思います。象徴的なのが、東京オリンピック・パラリンピック施設の見直しと築地市場の豊洲移転問題でした。オリンピック施設の見直しでは、外部の有識者によって予算の妥当性などを検証。コスト削減に向けて競技会場を別の施設に変更することなどを打ち出し、都民の負担増を許さない、税金の無駄遣いの削減につながるなどと賛同を得ることになりました。

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また、築地市場の豊洲移転問題では、都民の安心安全が確保できないことなどを理由に移転に待ったをかけました。各種の世論調査での高い支持率を背景に、都議会の中からも小池知事に賛同する動きが広がっていきました。

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ただ、オリンピック施設の見直しでは、結局別の施設への変更は振り出しに戻る形となりました。また、豊洲移転問題では、今週になってようやく「築地を守る、豊洲を生かす」という基本方針を示しましたが、具体的な方向性や方策、財源をどうするかについて説明はなく、困惑する関係者も多くいます。こうした小池知事の手法には、問題提起することは簡単だが、問題解決に向けての道筋を示すことができるのかという疑問の声もあります。

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(安達)
築地市場の移転問題に関連して言えば、都民ファーストの会は公明党に加えて、東京・生活者ネットワークとも選挙協力を行っています。公明党は豊洲移転に賛成、ネットは移転反対で正反対ですから、いわば「ねじれ」と言える状況を有権者がどう判断するか、注目されます。

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その一方で、都議選の行方が国政に影響することは間違いないと思います。そういう視点から見ると、私は3つの点に注目しています。
1つは国政与党の自民党と公明党が選挙協力せず、別々に戦うこと。もうひとつは民進党の行方です。自民党と公明党は自公一体とも言われ、民主党政権で野党になったときでも協力関係を維持してきました。国政選挙でも地方選挙でも基本的に同じです。しかし、今回は小池知事を挟んで、正反対の立場で戦うわけです。

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特に定員が1人の1人区と2人区。ここでは公明党と都民ファーストが連携して、自民党と戦う構図がかなりはっきりしていますね。

(西川)
都議選には、1人区が7つ、2人区が15あります。
このうち1人区では、いずれも自民党の候補と公明党と都民ファーストが連携する候補が立候補しています。その1つ、千代田区選挙区は、「都議会のドン」と言われた自民党の内田茂氏が引退したことに伴って擁立した若手の女性候補と、都民ファーストが公認し、公明党が推薦する男性の新人候補の事実上の一騎打ちです。

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一方、2人区のうち、府中市選挙区は、自民党は現職1人が立候補しましたが、都民ファーストの会は民進党を離党した現職と、新人の2人を公認し、公明党もこの2人を推薦しています。共産党の新人とあわせて4人が2議席を争う構図です。

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(安達)
自民・公明両党ともに都議選と言っても、一地方選挙。国政には影響しないとしていますが、言葉通りとなるのかどうか。加計学園をめぐる一連の問題でも、公明党には説明責任を求める声が出ており、選挙結果によっては安倍長期政権の政権運営にも影響するという見方もあります。もう1つは国政では野党側の動きです。民進党は選挙前に離党者が相次ぎ、その多くが都民ファーストの会の公認を得るか、支援を受けての立候補となりました。支援団体の連合東京も都民ファーストの会と選挙協力を決めています。衆議院選挙に向けて、民進党は共産党や社民党などとできる限り協力することで合意していますが、都議選では具体的な動きはありません。特に東京は蓮舫代表の地元ですから、選挙結果によっては今後の党運営に影響することも考えられます。さらに、小池知事と「都民ファーストの会」の国政進出があるのかどうか、それを占う選挙になるという見方もあります。

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(西川)
以上、見てきましたが、国政の先行指標とも言われる都議会議員選挙について、NHKの世論調査では、全国の56%が、関心があると答えました。ただ、その都議会議員を選ぶ都民にしてみれば、知事と同じく議員は自分たちの代表です。都議会が予算を承認し、条例案を可決しなければ都知事は何も実行することはできません。その都議会は、都民との距離が遠く、眠れる都議会とも揶揄されることがありました。多くの候補者が都議会本来の役割を自覚し、政策論争を通して有権者に訴える、中身の濃い選挙戦を望みたいと思います。

(西川 龍一 解説委員 / 安達 宜正 解説委員)

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