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「防げなかったのか?被ばく事故」(時論公論)

水野 倫之  解説委員

原子力機構で起きたプルトニウムの被ばく事故は、安全管理のずさんさが次々と明らかに。核兵器の原料ともなるプルトニウムは人体にとって極めて危険な物質で、厳格な安全管理が求められていたのに、なぜ事故を防ぐことができなかったのか。原子力規制委員会もきょう、現場に立ち入り検査を行って調査を開始。
これまで明らかになった数々のずさんさ。そして事故は防ぐことができなかったのか。さらに今後求められる対応。以上3つの視点から今回の被ばく事故を水野倫之解説委員が検証。

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5人の作業員、当初心配されたほどではないとはいえ、全員の内部被ばくが確定。今後も観察が必要であることに変わりない。
機構は当初、肺から最大で2万2,000ベクレルのプルトニウムが検出されたと発表。放射線医学総合研究所の測定では、検出限界値以下。
機構での除染が不十分で、からだの表面に残っていたプルトニウムを計測した可能性。

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ただ今週、全員の尿からごく微量のプルトニウムが検出され、内部被ばくしていることが確定。薬によって排出されたと見られ、5人は再入院。
放医研では「すぐに健康に影響が出るとは考えていない」と説明も、今後も健康状態を注意深く見ていく必要。

被ばくは当初ほど重くはないにしても、事故が重大なものであることは変わらない。原子力機構のプルトニウム管理のずさんさが次々と明らかに。

まず、被ばく事故に対する想定の甘さ。
事故ではかなりのプルトニウムが飛び散った。

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作業員が缶を開けたところ、中にあったプルトニウムなどを入れたビニール袋が破裂。作業台は密閉されてなく、全員が「もやもやしたもの」が漏洩するのを見たと証言。
床には飛散したプルトニウムとみられる塊も。

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立ち入り制限値の10倍以上の放射能が検出されるなど部屋中がかなり汚染。
しかし、作業員は部屋に、3時間以上とどまることを余儀なくされた。
もっと早く外に出られていれば、被ばくは抑えられた可能性も。

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機構がこうした規模のプルトニウムの被ばく事故が起きることを想定していなかった。
汚染された部屋から作業員を出すための小部屋を作らための資材を集めたり、作業員の確保に手間取り、設置に3時間あまりかかった。設置訓練もしてなかった。

またプルトニウム管理の甘さも。
プルトニウムを26年間点検していなかった上に、どんな状態で保管されているのかも把握していなかった。
缶の中にプルトニウムがあるのは確かだが、粉末なのか固形状態なのか、ほかにどんな物質が混じっているのかもわからない。

それは信じがたい話。
IAEAの査察もあるし、一定量集まっただけで、核分裂が連鎖的に起きて大事故につながるおそれもあり、どんな性状のものがどれだけあるのか厳重に管理するのは、原子力の基本。

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しかし機構が把握していたのは量だけ。
このプルトニウムは新燃料の実験に使われたもので、当時はほかの物質も添加されたと見られるが、その実験記録が保管されているかどうかもわからないと。実験記録の保管は大学の研究室でもあたりまえ。
いつもやっているという慣れから管理が甘くなっていたのではないか、そう指摘する専門家も。

破裂した原因はまだ不明もその強い放射線によって添加された物質が分解してガスが出て事故につながった可能性も。

というのも、機構の別の施設で、同じようにプルトニウムを保管する袋が膨らんでいたという、今回の前兆とも言える事態が過去にあったことがわかった。
この施設では点検で膨らみを見つけ。原因究明の結果、プルトニウムの放射線で添加物が分解されてガスが発生したことがわかり、袋を新品に交換。

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しかし問題はここからです。
機構はこの件を関係部署にメールで連絡はしたが、その危険性やどんな対策を採るべきかについては伝えていなかった。
この時のリスク情報が組織全体で共有されていれば、今回の事故を未然に防ぐことができたと思う。

このままの状態では、また大きな事故が起きかねない。
まずは早急に今回の事故を検証し、プルトニウムの安全管理体制を再構築しなければ。
規制委は立ち入り検査をして調査を始めまたが、専門家も交えた事故調査委員会を設けるなどして、第3者の目から徹底的に調べていかなければ。

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その上で、あらためて原子力機構の組織や職員の安全意識についても政府が責任をもって改革を進め、リスクに敏感な組織にしていかなければならない。
今回の事故では「またか」という思い。
原子力機構はこれまでも、もんじゅなどで多くのトラブルや問題を。そのたびに組織改革が叫ばれ、職員の意識改革も行われてきたはず。
これまでの改革が、組織全体に浸透していない可能性。
この際、すべての部署が自分たちの問題と言う意識を強く持って改革に取り組まなければ。

(水野 倫之 解説委員)

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